【登場人物】


  • タクヤ(17):純情・思春期男子。髪型はポマードでテカテカ。
  • ユリ(16):放送部のマドンナ。家庭ではちょっと口うるさい父に見張られている。
  • ユリの父(通称・親父):昭和の厳格タイプ。受話器の番人。
  • タクヤの母:息子の恋にニヤニヤしてる。



【場面:タクヤの自宅、夜の8時ちょうど。玄関の黒電話の前】


タクヤ:「……よし、いくぞ」

(胸ポケットの台本を広げる。「好きです。ずっと前から。よかったら…」)


母(台所から小声で):「あんた、緊張で受話器に汗垂らすんじゃないよ〜」

タクヤ:「頼むから見てないでくれ!」


(ダイヤルをゆっくり回す。カチカチカチ…ジリリリリリ…)


\ガチャッ/

ユリの家:「はい、◯◯でございます」


タクヤ(ドキドキMAX):「あ、あの、ユリさん…いらっしゃいますかっ…!?(敬語)」


ユリの父:「ユリだと?……お前、誰だ?」

タクヤ(絶望):「…お、おとなりの…た…た…」


ユリの父:「た?」

タクヤ:「た…たなか…屋さんです!!」

母(小声で爆笑):「屋号かい!」


ユリの父:「で?なんの用だ」

タクヤ(覚悟を決めて):「…ゆ、ユリさんに……“キミの声はラジオより綺麗”って…伝えて…ください……」


(電話の向こう、静寂)


ユリの父:「…………」

(ガチャッ。切れた。)


タクヤ:「………え、これ、告白、成立?」

母:「どっちかというと一方通行のラジオ放送だね…」


(次の日。学校の下駄箱)


ユリからのメモ:「昨日の“放送”、受け取りました。PS:うちの親父、昔放送局勤務」


タクヤ:「そっちがプロかーーーい!!」

いかがでしたか?笑っていただけましたか?

黒電話は、昭和の恋のダンジョン。

親が出るか、妹が出るか、本人が出るか――

“着信ガチャ”は、常に命がけ。

しかも親父が出たら、秒で「アウト・オブ・サービス」。

それでも少年たちはダイヤルを回し、

言葉を選び、手汗を拭いて挑んでいたのです。

あのドキドキ、今の若者にも教えたいですね(笑)