【登場人物】
- 神崎(かんざき):アングラ演出家。芸術をこじらせたタイプ
- 斉藤(さいとう):新人役者。髪型にこだわりあり
- 磯部(いそべ):ベテラン役者。すでに諦めている
- 観客(声のみ)
【場面:公園の池のほとり・リハーサル会場】
神崎(指揮棒を振りながら):「もっと感情を!もっと泥臭く!もっと水を感じてッ!」
斉藤(足元を見て):「いや、演出家、そもそも舞台…池の真ん中なんですよね」
神崎:「そうだ。我々の魂はこの水面にこそ映るのだ!」
磯部:「去年、この舞台沈みましたよね?」
神崎:「それが伝説になったのだ!!」
【場面:楽屋=池のほとりに置かれたブルーシート】
斉藤(鏡を見ながら):「あの…今日ってこの髪、結構気合入れてセットしてきたんですけど」
神崎:「斉藤、お前……坊主にしてこなかったのか?」
斉藤:「はい!?何の役でしたっけ僕…?」
神崎:「“水神の使い”だ。スキンヘッドの反射が月明かりを象徴するんだよ!!」
斉藤:「物理的な光源ですか僕は!?」
磯部(頭を見せながら):「俺、去年“蛍の精”で剃った。いまだに生えが悪い」
【場面:本番直前・池に浮かぶ仮設舞台】
神崎(拡声器で):「よし!照明OK!衣装もOK!そして……“丸刈り度”チェック入ります!!」
斉藤:「待ってください!!帽子じゃダメですか!?演技力で勝負しますから!!」
神崎:「坊主こそが演技力の証明だッ!!」
観客の声:「がんばれー!演技より頭見に来たぞー!」
斉藤:「違う方向で注目されてるぅーー!!」
【ラスト:舞台の上】
(斉藤が丸刈りで震えながら立っている)
斉藤(小声):「もう……髪がない分、風を感じる……演技が……自由だ……」
神崎(目を輝かせて):「その苦悩がいい!今年も伝説になるぞ……沈まなければな!」
(舞台、ミシミシッ……)
斉藤:「え、沈ま――」
(バシャーン!)
