群馬県にお住いのO様からエンジンのオーバーホールのご依頼をいただきました
ありがとうございます
個人売買で購入された車両についていたエンジンですが異音が気になり始めてきたということですので
エンジン単体で持ち込んでいただきました
ばらす前にまず外観の確認ですがクランプの向きが違う、クランプするものが違う
(ここのクランプはACGのハーネスをクランプする場所ではなくクランクケースのブリーザーホースをクランプする場所)
と、このブログのファンの方にはお馴染みの組み方がされていますし、残念ながら赤い液体ガスケットが見えています
点火時期もビミョーに合っていないですね
お客様は外観も綺麗にしたいとのご希望ですので
ブラストを掛けてウレタンで再塗装します
塗装は数か所剥がれがあります
過去にもう何回も書いてきましたがこうゆう人が作業したエンジンはシリンダーが
耐熱塗料で塗装されています
お客様と一緒に確認したときに塗膜の状態や色が耐熱塗料だと目で見てわかるレベルでしたので
パーツクリーナーを吹き付けてウエスで拭いたところ塗装が溶けました(笑)
ピストン径はスタンダードサイズですがクリアランスを測定すると0.15㎜くらいありました
5万キロ走ってもそこまでクリアランスが広がることはありません
原因はスリーブがホーニングされているのでその分削られてしまってます
ちゃんとした内燃機屋さんが行った場合はクロスハッチが斜めに網目状になるのですが
素人がストレートやアストロで買ったような安いハンドホーニングアダプターで研磨すると
ドリルで行うのでこのように水平な傷がついてしまいます
ホーニングというのはボーリング作業の仕上げとして行うもので
ホーニング単体の作業は錆を落とすとか軽い傷を一時的に落とすとかで応急処置的に行う作業です
ホーニング(磨き作業)と言ってもスリーブの表面を研磨するので綺麗にクロスハッチをつけるためには
0.05~0.1mmは表面を削ります
ピストンサイズを変えないならその分クリアランスが広くなるので圧縮は落ちますし
ピストントラブルも起きやすくなります
もちろんこのままではダメなので1サイズオーバーサイズでボーリングを行います
クランクシャフトはオーバーホールされていなくてそのまま組まれているだけなので
大端部のサイドクリアランスは0.9mmのシックネスゲージが軽く入るくらい広がっていますし
小端部のガタも使用限界を超えています
またクランクシャフトのベアリングも交換されていないので普通に分解して組みなします
クラッチ周りは交換されていてハウジングとドリブンギアのガタは無いのですが
クラッチのフリクションディスクが社外品で組まれています
写真ではわかりにくいと思いますが
ディスクの柱の部分の寸法がビミューに合ってないのでガタが有って
手でプレッシャープレートを動かすと簡単にハウジングの中で前後に動いてしまいます
これも駆動系の異音の原因の一つです
写真を見てわかるようにこのエンジンを作業した方はガスケットセットも社外品を使用して組んでいるので
出来るだけ安く済まそうと思って社外品の部品を使って作業してあると思われます
当店の作業では基本的にエンジンの作業を行う場合には純正で入手できる部品は全て純正部品を使用して
行います
理由は社外品のほとんどの部品が品質、精度が悪すぎて結局組み直すことになってしまうからです
フリクションディスクは純正の新品に交換します
クラッチハブのロックナットにはどんなバイクでもロックワッシャーがついていますが
ただ付いているだけでゆるみ止めがされていませんでした
リップ部を直角に折り曲げてロックナットに密着させてナットが動かないようにしないといけませんが
ただナットで挟んでいるだけです(笑)
クラッチハウジングを外してトランスミッションのメインシャフトを手で動かしてみると
少し偏芯運動をするのでベアリングも劣化しています
エンジンオーバーホールしたといってもミッションのベアリングまで替えている素人の方は
少ないので、このベアリングの劣化も駆動系の異音の原因の一つです
当店のオーバーホール作業ではクランクシャフト ミッション ウオーターポンプのベアリングは
全て交換しています
まあ人の手が入ってる部分は全てやり直しですがエンジン自体の状態は悪くないので
通常のオーバーホールメニューで作業を行います