1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、61回目は、モーリス・ラヴェル号を取り上げます。

EC Maurice Ravel

 

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

モーリス・ラヴェル(1875~1939)フランスの作曲家

 

1988年ダイヤで運行されたD 266/267(ザルツブルク〜パリ)の後継として、EC 66/67 モーリス・ラヴェル号1989年夏ダイヤから運行開始。ミュンヘン発7:16→パリ東駅着16:10。対向列車は、パリ東駅発13:57→ミュンヘン着22:44。SNCF車両の2編成で運行。

 

その2年後(=1991年夏)、シュトゥットガルトとファイインゲン・アン・デア・エンツ間を走るシュトゥットガルト/マンハイム高速新線の完成に伴い、高速新線(以下、NBS)向けに非常ブレーキ・オーバーライド装備(NBÜ)、電気空気圧ブレーキ装置、真空トイレシステムを備えた客車が必要となったため、DBが車両の供給を引き継いだ。NBS経由と、ミュンヘン〜アウクスブルク間の最高速度200km/hの利用により、モーリス・ラヴェル号は走行ルートでの所要時間を約30分早めることができた(パリ出発を遅らせたり、パリ到着を早めたりすることができる)。パリ〜ミュンヘン間の所要時間は8時間21分(東行)、8時間22分(西行)で、これは表定速度111km/hに相当する。しかし、これらの所要時間は次の年には徐々に延びてしまう。

 

モーリス・ラヴェル号はまた、多種多様な機関車を使用していた。パリ〜ストラスブール間では、BB-15000型交流電気機関車が予定通り使用されていたが、この機関車は4つの異なる構造の機関車65両があり、技術的な違いだけでなく、外観も4つの異なるバリエーション(「TEE色」、「コンクリート・グレー」、「マルチサービス」、「アン・ボヤージュ」)含め、そのほかにもいくつかのサブバリエーションが存在した。ストラスブール〜シュトゥットガルト間担当のDB-181.2型複式交流電気機関車については4種類の塗装(スチールブルー、ベージュ/ブルー、オリエントレッド、トラフィックレッド)が使用されており、1995/1996年ダイヤでは、一部列車は同機の重連で牽引運転された。シュトゥットガルト〜ミュンヘン間は、DB-103型、-120型、-101型が牽引担当し、1990年代には、ミュンヘンからシュトゥットガルトに向かう朝のモーリス・ラヴェル号の前に、試験機関車DB-127型電気機関車001号機(ユーロスプリンター)とDB-120型電気機関車004号機を見ることができる。

 

2003年ダイヤ改正の一環として、この列車は新しい時刻表位置となる。パリ発10:45→シュトゥットガルト着15:53→ミュンヘン着19:14。逆方向では、ミュンヘンを以前より少し遅く(8:44)出発し、パリ東駅着17:11。シュトゥットガルト中央駅での機関車交換を避けるため、南ドイツ~ケール/ストラスブール経由パリ間のユーロシティ列車には制御客車が導入され、カールスルーエ以東はDB-101型電気機関車によるプッシュプル運転となったため、2002年12月からはDB-181.2型電気機関車はストラスブール~カールスルーエ間のみの牽引担当となった。2年後、制御客車が撤去され、カールスルーエ〜シュトゥットガルト/ミュンヘン間はDB-101型と120型両機関車によるサンドイッチ運転に変更された。

 

最後に、EC 66/67 モーリス・ラヴェル号は、2004年ダイヤ開始(2003年12月14日)以降、ドイツ区間ではその名前を失ったが(SNCFネットワークではさらに1年間使用され続けた)、2007年6月9日のLGV東ヨーロッパ線の "Alléo "が運行するTGV列車に置き換えによるラストランまで、編成(DB基本編成・ミュンヘン〜パリ+SNCF編成・ストラスブール〜パリ)と時刻表位置は維持された。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1991〜92年夏ダイヤ 

1等コンパートメント車、1・2等合造コンパートメント車、1等・2等オープン座席車、1等バー合造車、ストラスブールでフランス車両の増解結。ドイツとフランスの車両(コラーユ)。

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)