1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、17回目は、モンブランを取り上げます。

 

(以下原文訳、一部短縮名称等をブログ筆者で補足)

モンブラン:フランスとイタリアの間に位置し、標高4810m、アルプス山脈の最高峰。

 

1979年5月27日夏ダイヤから、ドイツ連邦鉄道(以下、DB)に2等車連結のインターシティが導入され、多数の既存列車がそれに統合された。そのひとつがハンブルク・アルトナ駅〜ジュネーブ・コルナヴァン駅で運行されていたイスパニア急行であり、このダイヤ改正で、IC 176/177の列車番号への変更に加え、列車名もイスパニア号という縮められた愛称に変わった。1982年5月23日のダイヤ改正で、ハンブルク・アルトナ駅〜セルベール/ポルト・ボウ間のクシェット車が非連結になったことで、列車名がイスパニア号モンブラン号と改称された。その後、1986年夏ダイヤでの列車番号変更(IC76/77)を経て、1987年5月31日からユーロシティ EC76/77に格上げされた。 EC76は、DBの基本編成 ジュネーブ〜ハンブルク間と、ジュネーブ〜バーゼルSBB駅間の2両の付属編成(SBB2等座席車1両、SNCF2等クシェット車1両)で構成された。北行EC76はSBB-Re 4/4 II型電気機関車牽引で、ジュネーブ・コルナヴァン駅発8:08、ローザンヌ(8:42着/8:49発)。機関車交換と方向転換を行った後、ヌーシャテル/ノイエンブルク、ビール、ドレモン(10:23着/10:29発)で再び方向転換、バーゼルSBB駅(11:02着/11:17発)ではポルト・ボウからの編成を切り離し、DB-103型電気機関車に機関車交換。引き続き北上を続け、バーゼル・バディッシャー駅、フライブルク、オッフェンブルク、カールスルーエ、マンハイム、フランクフルト中央駅(14:15着/14:23発、4回目の機関車交換・方向転換)。その後、フルダ、ゲッティンゲン、ハノーファー、ハンブルク中央駅、ハンブルク・ダムトール駅に停車し、終着駅ハンブルク・アルトナ駅着19:10。走行距離1,124kmに対して、EC76の所要時間は11時間02分、4回の方向転換を考慮すると、表定速度は102km/hと十分なものである。

 

対向の南行EC77はハンブルク・アルトナ駅発9:49、フランクフルト中央駅(14:36発/14:44発)、バーゼルSBB駅(17:43発/18:02発)、デレモン(18:34発/18:39発)、ローザンヌ(20:11発/20:20発)、ジュネーブ着20:53で所要時間は11時間04分とEC76と2分違いだった。翌年1988年ダイヤ改正では、所要時間は若干延び(ハンブルグ・アルトナ駅の到着を5分延び、発車を5分繰り上がった)、1989年夏ダイヤからはジュネーブ着20:55となり、表定速度は100km/hを辛うじてに上回っている。

 

1991年6月2日ダイヤ改正では、モンブラン号に大幅な変更が生じた。ドイツの旧インターシティ3号線を走行した他のユーロシティと同様、EC106/107の終着駅がハンブルク・アルトナ駅からブラウンシュヴァイク駅、始発駅がベルリンに変更された。加えて、共通運用の相手がEC102/103 レーティア号となった。

1日目:EC 107 モンブラン号 ベルリン→ジュネーブ

2日目:EC 106 モンブラン号 ジュネーブ→ブラウンシュヴァイク

3日目:EC 103 レーティア号 ブラウンシュヴァイク→クール

4日目:EC 102 レーティア号 クール→ベルリン

 

引き続きDBが編成を提供する南行EC107は、ベルリン中央駅(当時)発5:36で、他のベルリン3駅(フリードリヒ通り駅、ツォー駅、ヴァンゼー駅)に途中停車し後、ポツダム、マグデブルグを経てヘルムシュテットでDR(旧東ドイツ国鉄)-132型ディーゼル機関車からDB-103型電気機関車に機関車交換。引き続きハノーファー、ビーレフェルト、ハム、ドルトムント、ボーフム、エッセン、デュイスブルク、デュッセルドルフ、ケルン、ボン、コブレンツ、マインツ、マンハイム、カールスルーエ、オッフェンブルク、フライブルク、バーゼル・バディッシャー駅、バーゼルSBB駅(17:45着、17:59発)、ドレモン、ビール、ヌーシャテル、ローザンヌを経て、ジュネーブ・コルナヴァン駅着20:55で終着。走行距離1,382km、所要時間15時間19分、表定速度90km/hで走破。28回の途中停車、4回の方向転換、5回の機関車交換を考慮しても、驚くべきスピードである。

 

一方、北行EC106は従来のダイヤから1時間繰り下げた時刻、ジュネーブ発9:07で、EC107と同じ途中停車駅を経て、終着駅のブラウンシュヴァイク着20:35(総走行距離1,150km、表定速度100km/h)、ここで翌日のEC103 レーティア号に編成をバトンタッチすることになった。1992年夏ダイヤ開始以降、EC107は所要時間が8分増(ベルリン発5:44)、EC106は5分増(ブラウンシュヴァイク20:40発)となり、EC 107はヘルムシュテット駅が通過となったことで機関車交換はブラウンシュヴァイクに変更された。1993年5月23日、運行区間がジュネーブ〜ドルトムント中央駅間に短縮、時刻変更された。EC106はジュネーブ発13:08→ドルトムント着22:20、EC107はドルトムント発5:38→ジュネーブ着14:55と設定された。1995年9月24日からは、ついにセルベール/ポルト・ボウ〜バーゼルSBB間編成の併結が廃止。その1年後(=1996年9月?)、EC106の終着駅がハノーファー中央駅に変更され、ハム、ビーレフェルトを経由でハノーファー中央駅着0:01、再び表定速度100km/h、総所要時間は10時間53分となった。一方のEC107は変更なし。ただし、モンブラン号の共通運用には、EC102/103 レーティア号に加えて、他の国内インターシティもローテーションに含まれるようになった。1998年5月24日から、EC106の終着駅が再びドルトムント中央駅となり(ジュネーブ発12:58→ドルトムント着22:21)、所要時間は9時間23分に延びた(EC107 ドルトムント発5:38→ジュネーブ着14:59)。

 

最後のダイヤ(2000年5月28日から2001年6月9日)では、モンブラン号はブレーメン中央駅まで曜日限定で延長運転された。北行EC106は日曜日のみ(ジュネーブ発12:57→ブレーメン着0:14)、南行EC107は月曜日のみ(ブレーメン発3:33→ジュネーブ着14:57)、つまりケルン〜ブレーメン間の両方向で事実上「夜行ユーロシティ列車」となった。2001年6月9日をもって、ジュネーブ、ローザンヌ、ビール、ヌーシャテル、ドレモンの各都市とドイツ国内を結ぶモンブラン号の歴史に幕を下ろし、2001年6月10日からはドイツ部分については、IC608/609 ラインラント号に引き継がれた。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1987夏ダイヤ 

コンパートメント車(1等・2等)、オープン座席車(1等・2等)、

食堂車連結、ジュネーブ発のみセルベール(ポルト・ボウ)からの編成(フランス、スイス両国鉄)をバーゼルまで連結。基本編成はドイツの車両のみ。

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)