年末恒例の物理実験講習会に向け,実験器具の製作に励んでいます。特に「LEDの電圧-電流特性の測定」については数年前からいくつかの開発をしてきましたが,量産していると 「もっと・・・」と欲が出てきます。 なんといっても物理教員でも工作が得意な人は意外と少なく,少しでも簡単に工作できるように,,,,ということを目指す必要があります。それでも電圧・電流計ユニットはもともと物理実験用に開発されたものではないため,どうしても改良が必要になってしまいます。

 前回のチャレンジでは9.999Aの電流計を 999.9 mA に改造したのですが,今回は 9.999mAとちょうど1/1000倍にしたいのです。

 

 シャント抵抗は太いマンガニン線を使用しているもので,その抵抗値など普通は測定のしようがありません。高校の物理では「ホイートストーンブリッジ」を学習しますが,教科書の執筆者自身がこの回路の優れた点を理解しているとは思えず,「未知の抵抗を測定できる」という適当なことが書かれています。単に抵抗値を測定するのであれば数十年前でもきちんとした測定のできる「テスター」が高校にもたくさんありました。しかし,1オーム以下の抵抗値を測定することは「不可能」であり (その意味さえ理解できない人も・・・ )、そのような場合にこそこの回路の真価が発揮されるのです。

 と言いつつ,マンガニン線の場合抵抗率がわかっているため,太さと長さが分かれは抵抗値が求まります。そして,今やネットではその抵抗値も簡単にわかってしまうのです。その例が,

これで,その抵抗値は 「R005」すなわち 0.005Ωなのです。まさに今回の電圧電流計ユニットにはこの抵抗が使われているため,今回の改造では抵抗値を1000倍にすれば良いだけなのです。

ということは,この太いシャンと抵抗器を取り外しの抵抗器を取り付け,後は微調整用の半固定抵抗器で「校正」するだけなのです。

出来上がったものを新しく設計した筐体に組み込み,,,

下が新しくできたものです。   

 上は多回転可変抵抗器で電流を変えて測定するものでそれなりの出来具合ですが,LEDに流れる電流をゼロ付近まで絞ることができないのです。しかし,下の物は 可変抵抗器を使わず,コンデンサーに充電する際の電圧変化を利用するため流れる電流もゼロまで絞れるのです。

 

 ただ,この方法は電池の消耗がとんでも無く早いのです。なぜか,,,それはコンデンサーが1Fの電気二重層コンデンサーだからです。3Vまで充電すると蓄えられる電荷はなんと3 C(クーロン)にもなるのです。

 

 また,電圧値と電流値を同時に読み取る必要があるため,回路を組み立てることなくできる電気実験なのに一人で行うことが難しくなります。でもちょっとした工夫で一人でもできることが分かりましよね。

 

  さて,こんな「簡単実験」器ですが,どれだけ関心を持ってもらえるでしょうね。関心を持たれた方はぜひご連絡ください。場合によょっては製作のお手伝いをすることもできると思います。