まるで異なる次元に迷い込んでしまったかのような凄惨なことが起こる数年ですが、同じころ自身の日常が豹変しました。それは希少な悪性腫瘍(肉腫)を含めたがんが発覚したからです。なぜこれが大変かというと、症例が少ない→研究が進まない→決定的な治療、術式、化学療法が分からない、という状況に陥るからです。患者が少ないということは薬も開発されにくいということ(これは『小さな命が呼ぶとき』という映画で認識していました)。
私、並行世界の異なる現実に入り込んじゃっただけで、明日起きたら元に戻っているんじゃない――というようなことは起こらず、この先の見えない「もうひとつの」現実を生きることになったのです。