【速報中】神宮外苑再開発「見直して、大切な緑を守る」 蓮舫氏が公約発表 東京都知事選
2024年6月18日 14時58分

東京都知事選(20日告示、7月7日投開票)に出馬を表明している蓮舫参院議員(56)=立憲民主党に離党届=は18日、都内で記者会見し、「七つの約束」と題した有権者に示す公約を発表した。樹木伐採が批判を浴びる神宮外苑の再開発計画については「いったん立ち止まる」と明言。都が昨年9月に事業者に対して要請した樹木保全の計画を「早急に提出してもらう」と述べた。(東京都知事選取材班)


約束の一つ「東京全体をもっとよくする」では、神宮外苑の再開発計画について「見直して、大切な緑を守る」とし、住民参加の促進や計画の検証を明記した。再開発事業に関する環境アセスメントや再開発の前提となっている「公園まちづくり制度」の適用の是非については「もう一度検証する」と述べた。
これに関連して、記者から「事業者側から利益の逸失があったと訴えられた場合の対応」を問われると、「知事選の結果次第では、約束した通りの対応をしたい」と答えた。


(*)公園まちづくり制度 
東京都心で、都が将来的に公園とすることを決めた都市計画公園のうち、用地買収が進まないなどの理由で開園のメドが立たない区域が対象。公園指定を解除して事業者に再開発を認める一方、一定規模以上の緑地を確保させることでまちづくりと公園整備を両立させるのが狙い。


◆「実現不可能なことは約束しない」
公約では、少子化対策、保育・教育・介護・医療、行財政改革、政治改革、「東京全体をもっと良くする」、政策の発展-の7項目を掲げた。
都知事選の公約を巡っては、小池百合子知事(71)は2016年の初当選時に待機児童ゼロ、介護離職ゼロなど「七つのゼロ」を掲げており、蓮舫氏は「実現不可能なことは約束しない」と強調した
蓮舫氏は会見で、所得向上こそ「本物の少子化対策」と強調。都と契約する事業者に雇用者の所得改善を要請するほか、転職をしやすくするリスキリングの支援強化を進めると明らかにした。
2023年の都内の合計特殊出生率が0.99となったことを受けた少子化対策では、非正規職の格差解消や、子どもが多くいる住民税非課税世帯への家賃補助などを打ち出した。


◆小池都政の「リセット」から「一部継続」に修正
蓮舫氏は「行政は継続性が大事」とも指摘。「都民の安心安全を守ってきた政策は維持をして発展させる」とも述べ、防災や子育て支援といった小池都政の一部の施策については継続していく方針を明らかにした。
立候補を表明した5月27日の記者会見では「小池都政をリセットする」と語ってたが、小池知事は「(都民が)困るんじゃないですかね」と反論していた。
蓮舫氏は立候補の意向を表明後、都庁下で毎週末に行われる無料の食料配布や、神宮外苑の現場を視察し、公約に反映させた。


◆蓮舫氏は貸し会議室、小池氏はオンラインで40分
蓮舫氏と、3選を目指す小池氏は、いずれも告示2日前の18日に公約を発表した。蓮舫氏は午後2時から、140人ほどが座れる東京・赤坂の貸し会議室で記者会見を開いた。
一方、小池氏は午前10時からオンラインで会見し、25分間説明した後、質疑は15分間で終わった。質問をできた記者は5人だった。


◆約50人が立候補表明
都知事選には他に、小池知事と広島県安芸高田市の石丸伸二前市長(41)、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)ら約50人が立候補を表明。候補者は前回2020年の22人を上回り、過去最多となる見通し。

 

 


https://www.youtube.com/watch?v=F_2H25Rh-9U

裏目に出た小池百合子氏の都知事選「後出しジャンケン」出馬表明に区市町村長も巻き込む“自作自演”疑惑。蓮舫氏「電撃出馬」で狂い始めた歯車
国内2024.06.18

蓮舫氏の都知事選出馬表明から遅れること16日後の6月12日に、ようやく立候補を宣言した小池百合子知事。これまで「後出しジャンケン」が有利とされてきた都知事選ですが、今回の小池氏出馬表明までの間のさまざまな動きについて「ずれている感が否めなかった」とするのは、元毎日新聞記者で政治部副部長などを務めた経験を持つジャーナリストの尾中 香尚里さんです。先日掲載の記事で小池氏の「政局勘の衰え」に言及した尾中さんは今回、その「ずれ」の数々を詳しく解説しています。

ようやく出馬表明。小池知事の「狙い」は次々と外れた

東京都知事選の告示(20日)まで、いよいよあと2日。過去最多の50人以上が立候補の意向を示しているというが、3選を目指す小池百合子知事と、立憲民主党を離党して挑戦する蓮舫参院議員による、事実上の「与野党ガチンコ対決」を軸に選挙戦が展開するのは、ほぼ確実な情勢だ。

さて、筆者は5月29日に公開した記事(「小池百合子氏の大誤算。蓮舫議員の都知事選『電撃出馬』が炙り出した“自民党返りの変節”と“政治生命の危機”」)で、小池氏の「政局勘の衰え」に言及した。8年前、自民党に所属しながら党に「反旗」を翻す形で都知事の座を勝ち取ると、その後は自民党をうまく利用しながら、選挙では同党の批判票をも取り込み再選した小池氏。だが、自民党の裏金事件で政治の潮目が大きく変化したことを見誤り、今回の都知事選で苦境に立たされていることを指摘したのだ。

この時点で出馬の意向を明らかにしていなかった小池氏は、6月12日になってようやく3選出馬を表明したが、この間のさまざまな動きを見ても、やはり小池氏はどこか「ずれている」感が否めなかった。

あれほど「機を見るに敏」な政治家だった小池氏も、一度狂った歯車を元に戻すのは難しいのか。小池氏の3度目の選挙戦は、これまでとはかなり違う様相を示すことになりそうだ。

強烈な自己意識が「出馬表明」を遅らせた

まず「出馬表明を遅らせたこと」だ。

前述の記事が公開された5月29日は、都議会定例会の開会日だった。本来、小池氏はこの日午後の都議会本会議での所信表明演説で出馬表明を行うとみられていたが、この日の表明は見送られた。

小池氏は表明を見送ったことについて「まずは定例会にしっかりと取り組んでいくのが現職の務め」と述べたが、直前に蓮舫氏が出馬表明したことが影響したのは確かだろう。報道では「(蓮舫氏と)同じ土俵に乗ったとみられるのは得策ではない」「(出馬表明をめぐり、前日の11日と12日の)2日間はメディアジャックできる」などという小池氏周辺の声が紹介されていたが、要は陣営を含め「スポットライトが当たるのは自分だけ!」という強烈な自己意識があったのだと思う。


小池氏にとって裏目に出た「後出しジャンケン」戦術

小池氏が出馬表明を遅らせた理由は、おそらくもう一つある。自民党の支援を見定めることだ。

4月の衆院東京15区補選で、小池氏は自らが推した候補が自民党の支援を事実上拒み、惨敗した現実を目の当たりにした。野党第1党の立憲民主党が、7年前の「希望の党騒動」で小池氏自身が「排除」した人々を中心に結党した政党であることを考えれば、小池氏は今後「非自民」「野党系」の立場で振る舞うのは難しい。自民党が裏金問題でどれだけ国民の支持を失っていても、自民党の組織票に乗って選挙を戦うことは、死活的に重要だったのだろう。

小池氏は、自民党都連が10日の総務会で「小池氏が出馬表明したら支援する」との方針を決めたのを確認すると、「保守の方々の支援は大変心強い」と述べ、2日後に満を持して出馬表明した。

しかし、この戦術は結果として、小池氏にとって裏目に出たと思う。

出馬表明見送りは結果として、蓮舫氏の出馬で「(小池氏の)計画に狂いが生じた」(読売新聞)という印象を、有権者に与えた。突然現れた対抗馬に自らの戦略を「狂わされた」印象は、小池氏の「堂々たる現職」イメージを、一定程度崩すことにつながった。


区市町村長からの「3選出馬要請」に自作自演疑惑

小池氏が出馬表明を遅らせている間に、さらに「意外な」事態が生じた。都内区市町村長からの「3選出馬要請」の「自作自演」疑惑である。

小池氏は都議会開会前日の28日、都内の52区市町村の首長から、3選に向けた出馬要請を受けた。都内の自治体首長の約8割にあたる。同じ日に自らが特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」や都議会の公明党からも出馬要請されており、小池氏はこれらの要請を受ける形で、翌日の都議会で堂々の出馬表明をする段取りだった。

蓮舫氏の出馬表明でこのシナリオが崩れ、小池氏が29日の出馬表明を見送ると、同日に調布市の長友貴樹市長が記者会見で、出馬要請について「知事サイドから打診があった」と発言。日野市の大坪冬彦市長も「(知事サイドからの)応援要請だったはずが、なぜか『出馬要請』になってしまった」と続いた。「出馬要請は小池氏側からの圧力?」との声が上がり、小池氏は「私からの依頼はない」と釈明するはめになった。

小池氏が当初予定通りに出馬表明すれば、早い段階で「小池vs蓮舫対決」が大きく注目されただろう。そこで小池氏が「受けて立つ現職の包容力」をアピールできれば、小池氏自身にもプラスの展開があったかもしれないし、出馬要請問題もさほど注目されなかったかもしれない。みすみす出馬表明を遅らせたがゆえに、結果として「悪目立ち」してしまった格好だ。


さらなる印象悪化につながった都議会各会派回り

さて、小池氏の出馬表明は、結局都議会最終日の6月12日となった。5月29日の開会日を避けた段階でこの日程はほぼ読めたわけだから、出馬表明にはもはや、インパクトもサプライズ感もない。さらに「日程が読めた」からなのか、蓮舫氏はこの日、立憲民主党への離党届を提出。結局、小池氏と蓮舫氏が並び立つ構図のニュースになってしまい「メディアジャック」の思惑は外れた。

むしろこの日のニュースで取り上げられた「小池氏の都議会各会派回り」は、小池氏のさらなる印象悪化につながった可能性もある。立憲会派に足を踏み入れるなり、軽く笑いながら「……特に(話すことも)ないみたいね、はい」と言うと、約15秒で立ち去った。

自らが立ち上げた「希望の党」に反旗を翻し、惨敗に追い込んだ立憲に、小池氏が良い感情を持たないのも当然かもしれないが、公人の振るまいとしてはいかにも幼稚に映った。一部の支持者はああいう映像を喜ぶのかもしれないが、果たして一般の有権者の反応はどうだろうか。


「AIゆりこ」に透ける小池氏の逃げ腰の姿勢

そして現在、微妙な話題になっているのが、あの「AIゆりこ」である。出馬表明翌日の13日、小池氏の「X(旧Twitter)」で爆誕した「AIゆりこ」は、生成AIで作成された本人そっくりのキャラクターが、小池都政の実績をテレビのニュース番組仕立てで伝える動画である。小池氏によれば「1日で約700万アクセスあった」とのことで「面白い」という評価もあるようだが、一方で「いくら税金を使ったのか?」などいぶかしむ声も続出。小池氏は14日のXの投稿で「AIゆりこは、東京都の事業ではありません」「税金は一切使われていません」と、またも釈明するはめになった。

税金が使われたかどうか以前に、この程度の政策説明さえ自分の言葉で話したくないのだろうか、ということにあ然とする。

もちろん、これでもなお、現職である小池氏は現時点で、選挙戦を有利に戦っていると思われる。手応えがあってこそ、小池氏も出馬表明もしたのだろう。にもかかわらず小池氏は、ここまで「狙った策が次々と外れる」ことに焦り、正面から堂々と選挙戦を戦うことから逃げ腰になっているように思えるのだが、どうだろうか。

小池氏も蓮舫氏も、本日18日に選挙公約を発表するという。選挙の前哨戦もいよいよクライマックスを迎える。今後の選挙戦の展開に、引き続き注目していきたい。
 

小池都知事の学歴詐称問題の裏にある国際問題
4/18 6:02 配信

東洋経済

  東京都知事の小池百合子氏の学歴詐称疑惑が再燃している。2020年に一度収束していた問題が再浮上したわけだ。

 学歴によって社会の能力を測る学歴社会において、学歴詐称が悪いことは当然のことだが、学歴という問題にはつねに複雑な問題がついて回ることも確かである。

 筆者は2017年、スペインで開催されたEAIE(ヨーロッパ国際教育協会)に、当時勤務していた大学の国際センター所長として出席したが、そこでカイロ大学の関係者からもらったパンフレットの、いの一番に小池百合子氏の写真と名前があったことを記憶している。

 かつての旧制高校や大学予科の場合、戦後そうした学校が存在しないことで、履歴上は大学卒になってしまうこともしばしばある。また昭和18年(1943年)の学徒動員によって、国家の命令で本来の卒業年数に届かない形で繰り上げ卒業した場合もある。

 松本清張の『砂の器』の主人公のように、空襲で焼けてしまった市役所などの戸籍を偽装する場合のように、戦後のどさくさのなか勝手に大学を卒業した例も多くあった。

 『東大ニセ学部―虚像と虚栄の記録』(桑原宗一郎著、講談社、1969年)という本がある。そこには、東京大学生になりすまし卒業までしてしまった例が書かれている。これはすべて実際にあった話をまとめたものだという。

 気軽に女性にもてるために偽ったものから、受験失敗の苦労から勝手に学生になったものまで、そして助教授になりすました狂人までいろいろと出てくる。東大ブランドの借用だけでなく、それによって就職を得たものまでいるからおそろしい。

 日本は学歴偏重社会である、もっと正確にいうと大学のブランド偏重社会である。有名大学の名前さえ出せば一生楽に暮らせる社会ともいえる。有名大学に入学した18歳の学力で、一生食っていける社会など日本以外にはないと思われる。

■海外では大学歴ではなく学位重視

 海外で学歴の高さというのは、どの大学を出たかではなく、大学院の修士、博士といった高度な知識と学位を持っているかである。在学中に外交官試験にパスし、東京大学を中退した外交官が海外で落ち込むのは、赴任先で海外の外交官が博士号を持っていたりする場合だ。

 不思議なことに、日本では東大卒で外交官になるより、中退でなったほうが優秀だとされるのだが、世界では大学院までいったほうが能力が高いとされている。

 大学という世界に私も40年も暮らしてきたのだが、国によって大学がまちまちであることをずいぶん経験してきた。それは卒業ということにもいえる。

 日本は、入学すればよほどのことがない限り卒業できる。だからこそ入学試験がすべてだといってもいいかもしれない。

 大学入試の試験科目として全員に哲学の試験を課すフランスの入試問題は、4時間2問の論文形式である。日本人の高校生は哲学など無視するから、おそらくだれも解けまい。もっともバカロレアの合格率は80%を超えているので、答案の質のほうは疑問であるが。

 バカロレアに通ればどこでも一応行けるので、医学部などは低学年でバサバサと落とす。日本では医学部に入学したというだけで優秀だということになる、フランスでは何の意味もない。

 私は大学院の博士課程の頃、政府給費留学生としてユーゴスラビアのザグレブ大学の大学院に留学したのだが、卒業などしていない。だからそのことを示す何の証明もない。日本の文部省が派遣したという証明書があるだけだ。もっともユーゴスラビアという国でさえ今では存在していない。

 またその後、フランスのEHESS(国立社会科学高等研究院)にもいたが、勝手な聴講生なので証明書はない。もちろんこんなことは履歴に書かないほうがいい。博士課程に在学中であればそれだけで済むからだ。

 しかし、見栄を張ってつい書いてしまうと大変なことになる。最初の就職先の一橋大学社会科学古典資料センターに正直にこの経歴を提出してしまったのだ。

 国立大学のチェックは厳しく、この証明を得るため聴講していた教授に頼んで証明書を書いてもらった。自分で文面を書いて、教授にサインしてもらったのだ。

■小池氏個人にとどまらない問題

 教員になって外国人留学生の入試を担当すると、海外の高校や大学の卒業証明書を見ることが多くなる。中国などの留学生の高校卒業の証明書や、大学の卒業証明書が本当であるかどうかチェックするのだ。

 これもさまざまな点で怪しいなと思うものがあるが、チェックしようがない。チェックすれば、膨大な手間と時間がかかるからだ。

 さて、小池百合子氏の場合は問題が複雑である。それは彼女の卒業は、たんに個人的な問題にとどまらないからだ。日本とエジプトとの関係を考えれば、エジプト政府およびカイロ大学は卒業というだろう。

 日本とエジプト、そして当時のサダト政権と田中角栄政権の複雑な関係を考える場合、卒業を問題とするよりも、どうやって卒業という事実を獲得したのかということを問題にしたほうがいいだろう。

 しかし、これはとても勇気のいることかもしれない。卒業というものが国家権力と関係していた場合、真実を知ることは簡単ではないし、とても危険なことだからである。

 小池氏が在学していた1972年から1976年までは、彼女と同年齢の私の学生時代とかぶる時代である。

 なんといってもナセル大統領(1918~1970年)の後を継いだサダト大統領(1918~1981年)の時代であり、彼女がカイロ大学の2年に入学したとされるのは、1973年10月6日に勃発したイスラエルとの第4次中東戦争が始まった戦乱の時代だった。

 高齢者なら誰もが思い出すのは、東京・銀座からネオンが消え、主婦がトイレットペーパーを求めてさまよったことである。その理由は石油価格の高騰であり、日本は、OPEC(石油輸出国機構)の原油生産量削減にともなってアメリカの独占的メジャーの原油割り当てを下げられたからである。

 小池氏の父親である小池勇二郎氏(1922~2013年)は実業家として海外との取引関係の仕事をしていた人物であり、日本の多くの黒幕とのつながりがあった人物だとされている。作家の黒木亮氏が書いた短い文章がネットで公開されている。

■小池氏の父とエジプトの要人との関係

 それによると、彼女の面倒をエジプトで見たのは、勇二郎氏と懇意にしていたエジプトの要人アベル・カデル・ハテムという人物だという。1913年生まれの政治家でナセルの革命に参加し、その後エジプトの要職を得て、日本とエジプトの友好協会の理事長を務めていたという。

 1974年にサダト時代の副首相だったハテムは日本を訪問し、田中角栄や三木武夫にも会ったことがある。日本からの勲章旭日大綬章を授かったという。1974年といえば、石油ショックの翌年である。その勲功がこの受賞につながったのだろう。

 日本は、長い間エネルギー資源の独立を探ってきた。多くの石油会社は欧米のメジャー系から割り当てられる原油を買ってきたことで燃料資源を欧米に握られていた。この独占を覆そうとしたのが出光興産だが、日本政府は石油ショックの際、困窮に陥った。

 欧米の割り当てのみならず、中東諸国から敵国扱いを受けたからである。それがあの狂乱の石油ショックを生み出した。

 石油不足を懸念した政府は、アラブの友人を頼って奔走した。ナイジェリアやアルジェリア、イランなどと交渉したのはそのときである。田中角栄が送った三木武夫を団長とする代表団はカイロに向かう。エジプトとの関係改善のためだ。

 関西経済同友会の幹事だった小池勇二郎氏のところには当然話があったはずである。日本の中枢部と関係を持つ彼は、エジプトにも多くの知人がいたからである。その知人の一人がハテムであった。

 小池百合子氏がエジプトで大学に入学したのは、まさに日本政府が派遣団を送った時期である。やがてエジプト政府は日本を敵国からはずし、日本はアメリカが提案する決議に反対することになる。

 その決議は、中東諸国が提起したイスラエルの1967年の占領地域からの即時撤退という提案である。日本はなんとこれを暗に支持したのである。これはアメリカをいたく怒らせた。

 やがてアメリカの国務長官だったキッシンジャーがやってきて、日本政府に苦言を呈するが、それがやがてアメリカの報復、すなわちロッキード事件となるというのはかなり知られた話である。

 田中角栄の背後にいたのが、岸信介、小佐野賢治、児玉誉士夫、中曽根康弘といわれており、当然ながらハテムとサダトは、日本に対して恩を売り、日本も中東諸国の恩を返したということになる。

 サダトは1981年10月の閲兵式で暗殺される。それによって政権は崩壊するが、黒木亮氏によるとサダト政権は腐敗にまみれていたという。とりわけ国内の経済悪化の改善のための日本政府からの援助を望んだのである。

 こうした関係の中で、小池百合子氏の卒業は在学と無関係に認定されていったのかもしれない。サダトのナンバー2であったハテムにそれが不可能なはずはなく、政治的配慮の中でことは進んでいったのかもしれない。あくまで想像である。

■カイロ大学はなぜ無言なのか

 もしこれが事実だとすれば、現在のエジプト政府が日本政府に対して話を蒸し返し、卒業はなかったといえるかどうか、国立大学であるカイロ大学が学問の自由のために本当のことを言う勇気があるかどうかである。

 日本人にとっても話は複雑だ。小池氏の卒業だけに問題が絞られているが、当時の政治的流れの中でそうなったのだとすれば、日本政府の問題とも絡んでくる。とりわけそれは、アメリカからの石油資源の独立の問題であり、アメリカからの政治的自由の問題である。

 右翼といわれている面々が、日本を守るためにそれを行ったのだとすれば、そこにメスを入れる勇気があるかどうかということだ。もしそうだとすれば、小池氏がこれを暴露することは当然できないだろうし、日本政府もアメリカとの関係にまで発展させたくないであろう。

 だからこそマスコミは、小池氏の卒業詐称という個人的な問題に終始し、その当時の日本とエジプトとの関係、そして小池氏の父親にさかのぼる、日本のドンとの関係に触れたくないのである。

 もちろん、この学歴詐称問題が小池氏による自作自演の詐称行為ならば、この話と関係ないことになろう。その場合、この「わらしべ王女」の野心が打ち砕かれるだけのことである。

 本当にそれだけなのだろうか。話題のもう1つの中心であるカイロ大学が、正式な発表をしないのはなぜなのか。私にはそれが気になる。

東洋経済オンライン