孤独死(2/3)

              ―合法的な詐欺―

 

 

「見せらんないです」と言いながら、担当は本籍判明報告書という書類を、私の顔から1mぐらい離して、私が顔を近づけて覗こうとすると、離したり近づけたりしながら、ヒラヒラさせていた。上司がそばにいて「見せられないんです」と言っているので、書類はある、けど見せらんないということをまるでジェスチャーで示そうとするかのように、私の顔の前でヒラヒラさせていた。

「あのさ、お骨をもらって、案内されて、言われたとおりに書類を書いて出して、え? 何それ? 書いて出したら、見せらんない? 当の本人だよ、その当の本人に見せらんない?

詐欺みたいなもんじゃない? それ? こっちは市役所を信用して言われたとおりに書いて出してるのに、書いて出したら見せらんない? 詐欺だって契約書の写しのコピーぐらい出すんじゃんないの?」、声が甲高くなった。

「本当に見せらんないの? どんな手続きを使ってもダメなの? 見る方法ってホントにないの?」声はかなり甲高くなった。

上司が戸籍法というものを開いて説明した。税務署に電話して、税務署にその上司と直接に話してもらって、とりあえず税務署には公的な書類添付ナシだが自分のメモを添付することになった。

 税務署はメモ添付で落ち着いたが、死亡日(推定)が書いてあった「こっちのここ」はいったい何の書類なのか? 本人特定日の情報、本籍判明報告書の情報はいったい誰のものなのか? 何故、当の本人・1番の肉親が見られないのか?

その上司は「特別な理由」以外はだめですと言う。そして、「知りたい」「見たい」はダメだという。税務署に対して「法定ですか?」と言っていた。どうやら税務署の添付要請は「法定」ではなかったらしい。

だが、当の本人が、届け出た本人が、1番の肉親が、遺体が誰なのか特定された日付が知りたいということ以上に、それ以上に特別な理由って何だろう。それが1番の特別な理由じゃないのか?

というか、こちらの市役所に対する漠然とした信用を利用して、本人特定の日付も、医師名も、死因も、死亡に関する何の情報も知らせないままに死亡届を書かせるって、そんなことがアリなのか? 契約書のコピーを渡す詐欺よりもよっぽど悪質じゃないのか?

上司は、「情報公開は条例です。戸籍法は法律です。条例よりも法律が上です。だから、情報公開でも見せらません」という。

 

10)死亡届の書類

市役所では、埋火葬許可証とか、謄本とか、本籍判明報告書とか、除票とか、それから死亡届とか、死亡診断書・死体検案書とかいろいろな、初めて聞くのでよく聞き返さないと分からないし、聞き返してもよく分からない書類の名前がいっぱい出てきて、何の説明もないので、手続きは市役所を信用して、言われるままにするしかないという感じだ。

が、そもそも、カウンターでは、書類の名前さえ分からないままに、「ここに、これを」とか「こっちのこれをこの通りに」とか言われるので、いったい、自分が今、何という書類を書いているのかさえ分からない。

それは、それでもいい。そのまますんなりいけば。

 

11)除票

 謄本ができたので、取りに行った。

仕事納めで、一層か相変わらずか、待つ人、急ぎ足の人、流れるアナウンスで、ざわついていた。

 先日の担当に謄本を取りに来たことを告げて、謄本の申請カウンターに行って、続柄とか使用目的とか、いろいろ書いて申請して、けっこう待たされて、受取った。

 謄本の死亡日は、私が書いた届書の死亡日のとおりではなかった。法務局は、謄本の通りにして下さいとのことだった。書類を直さなきゃいけない。間に合うかな?どうだろう?

そして、その時に、除票も必要だったことを思い出して、先の担当に言ったところ、上司が来て、除票の申請手続きをした。

 上司に除票の話をしながら、担当に、謄本が届書の死亡日のとおりじゃなかったこと、法務局は謄本の通りじゃなきゃダメだってことを言った。それを聞いていた上司は、書くのは法務局の記載例の通りに書くのでと言った。

 除票を申請するときに、上司が私に、同居かどうか省略可能かどうかたずねたが、私は同居じゃないが、私には省略可能かどうかは分からないけど、これから法務局の相続手続きのために使うのでその除票をお願いしますと言って、除票を受取った。

その足で、法務局へ向かって、除票に本籍地が省略されていて、受付できないこと、「最近市役所もよく分からないアルバイトがけっこういるようだし」とか言われて、市役所へとりあえず「本籍が書いてなきゃダメだって」と電話を入れて、「窓口でなくカウンターに来てください」と言われて、師走の仕事納めの日に市役所までの往復マラソンを覚悟した。ちょっと前に、心臓のカテーテルアブレーションをしたのに。

市民課のカウンターに行くと、上司が、本籍地の載っている除票が用意していて、受け取って、取って返して、とりあえず法務局の仕事納めに間に合った。

 

2)情報公開・個人情報

 税務署の添付要請はただのきっかけに過ぎない。なんで、知らせないんだ? 死亡診断書・死体検案書も見てない。手元にない。遺体の氏名さえ見てない、手元にない。身元特定の日付・根拠も見てない。手元にない。医師名も死因も見てない。手元にない。こんなことってあるのか? 冗談じゃないだろう。

 仕方なく、情報公開を請求した。帰ってきた返事は、こんな具合だ;

 

「個人情報非開示決定通知書

個人情報の保護に関する条例第10条第1項に該当

 (理由)開示の請求に係る情報の内容は戸籍法第48条第2項に規定される書類であり、同法第128条及び129条の定めるところにより法令秘情報に該当するため」

 

木で鼻をくくった返事の見本だね。

法律は知らない。けど、個人情報っていったい何だろうね? 当の本人・届出本人に非開示の個人情報っていったい何なんだ?

 

本人に知らせない役所だけの個人情報っていったい何なんだ?

それは個人情報でなく、個人情報に名を借りた、役所だけの役所情報だ。

そんな役所情報は、どこかの市長じゃないけど、「火をつけちまえ」。

 

13)詐欺か?

ちょっと以前に、渋谷か秋葉原あたりで、若い人たちをビルの地下か2階の部屋に招き入れて、一種の閉鎖空間でセールストークをして、法外な化粧品や絵画を購入させるという詐欺の手口が出回った。それとよく似ている。大きな違いは、堂々と法律に基づいて合法的に行っているということだ。そして、売買契約書のコピーさえも渡さない。

金銭的な被害・得失? どれだけ大きくとも、市役所は弁償するなんてことは頭に浮かびさえもしないだろう。

 

死亡診断書・死体検案書、身元特定された遺体の氏名、身元特定の日付・根拠、死因・医師名等をここで仮に死亡情報と呼んでおこう。この死亡情報は誰のものか? 一切知らされないまま、書類を見ることもなく、コピーを受取ることもなく、きちんと告知されることもなく、市役所を信用して、「ここに、これを書いて、これをこの通りに・・」と言われるままに書いて、死亡届を提出させられた。

そして、「受理した後は、見せられません。非開示です」