上品な出で立ちの老夫婦が


すいた地下鉄の優先席にゆっくりとたどり着いた


と、そのとたんに、


旦那さんの方が大きな声で、怒りはじめた。


向かいには、携帯電話を片手に、口をあけたまま凍りつく、初老の男性二人。


「あっち(一般席)に座りなさいっ!!


すると、その初老の一人が


「ここはあくまで優先席であって、絶対席じゃないんだからどこに座ろうが私の勝手でしょう?」


老人の言葉がちょいと足りなくて、誤解して口答えをした初老の男に


早くもぶちギレ頂点に達してしまったご老人が


「あっちでやれ(携帯)と言ってるんだ!ここではやるなと書いてあるだろうむかっ


すると、もう一人の初老が、携帯を閉じつつも、


「今はこんなにすいてるんだから大丈夫ですよ」


と、気の毒な人でも見るような目をして、憐れむように老人を諭す。


「ここではやるな、あっちにいってやれ!!


「あのねぇ、すいてる時は大丈夫なんですよ」


………しばし、このやりとりの繰り返し………


こどもが側にいなくてよかった。


この初老の二人は、他人同士であったんだが、やがて目配せなどして


"まぁまぁ、あんまり取り合わないで、穏便にやりすごしましょう"


というテレパシーを送り合い、すっかり結託しながら、うすら笑いをして老人をいなしている。


あぁ。本当にこどもが乗っていなくてよかった。


ひととし取った大人にもこーゆー輩がいたりするから、


駅や公共のポスターの種類と字数が増える一方なのだ。


『心臓ペースメーカーをつけていらっしゃる方がいつ乗っていらっしゃるかわからないのですから、


たとえ、すいていたとしても、このエリアでは携帯携帯の電源はお切りくださいニコニコ


いちいち、こう書かなくちゃいけない。


『降車するかたがお降りになってから、ご乗車ください』


のアナウンスにも、初めて聞いたときには驚いたものだったけど、


いちいち言葉で指図しないと、秩序が保てなくなってきているんである。


あぁ、


それにしても、あのご老人の注意に耳を貸さない初老のおじさん二人に


よっぽど口を挟もうかと思ったけど


挟まなくてよかったガーン


マーシャも、よく電車内でメールを打っている。


なるべく優先席には近寄らないようにしているけど、


混雑時にたまたまそのエリアに押し流されて、


メールを打っていたことがあったかもしれない。


無意識の反則だって、反則は反則なんである。


あのご老人の一喝で、じつにいろいろなことを見たし考えた。


けど、もうひとつ、


ちゃんと叱ってくれる大人に出会えたことに


なんだか、ホッとしたんである。


下手に注意でもしようもんなら、それこそ、命にかかわる惨事となるかもしれない


狂気の時代に、こんなお爺さんが存在することが、なんだか嬉しい。


あのご老人は、いつもこの調子で、分け隔てなく注意しているのだろう。


どうか、どうか、末長く、ご無事でニコニコラブラブ




◆マーシャ(文学座・金沢映子)出演最新情報はプロフィールルームに更新中です◆