過去、お客様との初回ミーティングで私は何度も同じ間違いをしてしまったことがあります。

それはお客様にしっかり質問しないで一生懸命自社や製品の優位性を話し続けてしまうことでした。

通常、初回ミーティングでは営業の私とセールスエンジニアがペアになってお客様に対して説明を行うのですが、準備してきた資料を一通り説明して、”何かご質問はございますでしょうか?”と聞くと、”いや、特に無いです。”と返されてしまうことがありました。

 

こうなるともうこちらとしてはどうしようもありません。

”お客様は自分たちの説明についていけなかっただろうか?”

”全くうちの製品に興味がないのだろうか?”

”この人はデシジョンメーカーではないのかな?”

”何か分からないけどこの人は怒っているのかな?”

 

あらゆることを考えてしまいます。

だいたいそういうミーティングの場合、次のアポに繋げることはできずに終わってしまいます。

 

自分は転職の際に最終面接でヨーロッパ/アジア地域トップのセールスチームヘッドとのウェブインタビューになったことがありました。

インタビューが始まって、自分が”今日は自分の経歴となぜ御社にとって自分を採用した方が良いかということについてお話ししたいと思います”と話しました。

そうしたら、彼は”ちょっと待て。そうではないだろう”と言い始めました。

自分は何のことやら全く理解できず、少し混乱してしまいました。

彼は”まず私は今日は何について話したら良いか?”、”何について知りたいですか?”と聞くべきだろう、と言ってきました。

 

確かに彼は自分のレジメを見て私の経歴を既に知っているかもしれません。彼は何か聞きたい質問をすでに準備しているかもしれません。

彼はインタビューの中で、”顧客とのセールスミーティングでも相手が何に興味があるのかについて聞いてから説明を始めるべきだ”と言いました。

最終的にその面接に合格して入社できることになったのですが、今考えると大切なことをまだ採用もされていない候補者に教えてくれたと思います。

 

日々の営業活動でも、役職がかなり高い人が相手の時や受注決定に関わる大切なミーティングとなると緊張してしまいます。そして、”この大事なミーティングでしっかり自社製品の優位性をアピールしておかないと”と気負ってしまい、ミーティング開始から突っ走って自分の伝えたいことを早口で話してしまいがちです。

 

質問というのは自社製品の説明やアピールと同じくらい重要だと私は経験上考えています。

そしてその質問で一番大事なポイントは”お客様の現在の課題”についてです。

 

お客様の課題は何なのか?何に困っているのか?その課題を解決しないと今後どうなってしまうのか?

もしも何も全く課題がないと答えたとしたら、目の前にいる人は案件上Right Personではないか、今はその会社は我々のソリューションにフィットしないのだと考えます。

 

また、お客様の課題についての情報の引き出し方にもいくつか方法があります。

それは次のブログで書きたいと思います。

 

前回は営業ミーティングにおける準備の必要性とその重要性について書きましたが、今回も引き続きどうして事前準備が大事なのかについて説明します。

 

元ラグビー日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は著書の中で以下のように述べています。

 

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長年、ラグビーという勝負の世界にかかわってきて言えるのは、勝利をもたらすのは、自信だということです。(中略)

自信をもって事に当たれば、あらゆることがうまく回り始めます。どれほど緻密な分析を行っても、自信がなければ、うまくいきません。(中略)

自信を持つ方法は、実に簡単です。準備と努力を重ねればいいのです*1。
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これは営業活動においても大いに当てはまることだと思います。

前回のブログでは、お客様との初回ミーティングの前にお客様の情報をできるだけ集めてお客様の課題を読み取り、仮説を立てると共に提案をまとめることについて述べました。

 

 

その入念な準備作業というのはもちろんお客様のためであるのですが、それと同時に自分のためでもあるのです。

営業の世界では自信を持つということは受注に繋げるために必要不可欠なことだと考えます。

その自信というのは周到な準備から来ます。

自信を持っている営業マンは相手(お客様)に安心感を与えます。それが最終的に成功、つまり受注に繋がります。

 

周到な準備→自信→相手への安心感→成功

 

そしてその"周到な準備から導かれる成功”を積み重ねることによって、自分はできる”という自信、ポジティブなマインドを持ち続けることができるようになります。

 

そしてそのポジティブなマインドというものはさらにビジネスを成功に導くということが幸福心理学の観点からも述べられています。

 

心理学者のショーン・エイカー氏は次のように述べています。

 

〝人間の脳は、普通の気分のときでもネガティブな気分のときでもなく、ポジティブな気分のときに最もよく働くようにできている、ということが証明されている*2〟
 

全ての成功は周到な準備から来ていて、それはお客様だけでなく、営業マンの自信を高めるためにもとても重要なことだということがお分かりいただけたでしょうか。

 


*1 エディー・ジョーンズ,持田昌典. ラグビー元日本代表ヘッドコーチとゴールドマン・サックス社長が教える 勝つための準備  

 

*2 ショーン・エイカー. 幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論 (Japanese Edition) 

ビジネスにおいてPDCAというのは有名な言葉で、どの会社でもPlan(準備)、Do(実行)、Check(確認)、Action(改善)を順番に回していくんだということを教わります。

それは正しいのですが、私は営業において一番大事なことはPlan(準備)だと考えます。

 

これがしっかりできている人とそうでない人では明らかに結果に差が出ます。

私は初回の見込み客とのミーティングの前は特に準備に時間を割きます。

 

見込み客とアポが取れているということは、例えばインサイドセールスがアポを取った、販売店が既にその見込み客と繋がりがあり案件情報を共有してきた、直接見込み客から自社ウェブサイトに問い合わせをしてきた等、なにかしらのきっかけがあります。

自分以外の他者がアポのきっかけを作ってきた場合には、それらの人達からできるだけ情報を確認します。

 

例えば私の会社は外資系ITソフトウェアをクラウドでサービス提供する会社で大規模企業を担当していますので、必ず以下を確認します。

 

 - お客様の現状、課題

 - お客様がどういうクラウドアプリを利用しているか

 - お客様のクラウド戦略、DX戦略はどのようになっているか

 - 自社のどの製品に興味を持っているか

 - お客様はどの程度我々の製品を知っているか

 - お客様のプロジェクトの時期

 - 競合他社はいるか

 

上記について確認した後、お客様との初回ミーティングの前には以下を確認します。

 - お客様のウェブページのチェック

 - 有価証券報告書のチェック 

 - 中期経営計画のチェック

 - お客様が競合他社や自社に関連する製品の導入事例を公開していないかをチェック

 - 事前に会う人が分かっていればその人に関する情報をチェック(Linked In, Facebook、過去に何かセミナーで講演していればその記事)

 

そして、お客様の会社としてのビジョンや戦略、自社製品に関連するIT戦略、お客様のリスク(こちらの想定する課題)、その対策をしないとどうなるか、そして我々がお客様に提供するバリューをまとめます。

 

こういった準備作業をすることによって、お客様に対する理解が深まり、課題の仮説を作り、それに対する対策を含めた効果的な提案をお客様との初回ミーティングで行うことが可能になります。

このような提案ができる営業マンと何も準備をしないで一般的な製品紹介しか行わない営業マンがいたら、お客様はどちらに自社の情報(課題やプロジェクト内容)を教えたいと思うでしょうか。どちらの方が頼りになる営業マン(会社)だと感じるでしょうか。

 

ただ、毎回準備をして自分の想定通りにお客様が反応するわけでもありません。想定外の回答をされることもあります。ただ、事前に時間をかけて準備をしておけば、ミーティングの場で想定外のことを答えられても反応できるようになります。事前準備というのはとても大事で、ここを疎かにしては決していけないと思います。