I  ❤️  SAPPORO

 

 北大のキャンパスに憧れて、北海道に来てから30年。札幌には学生の時6年、社会人としても2年ほど暮らしていた。つい先日も札幌を訪れて、やっぱりいい街だな~と実感した。

 

 今回、次男 泉のサッカー、インターハイ札幌予選のため、来札。

私一人、釧路から夜行バスに乗り札幌へ。午後11時30分にバスに乗り、午前3時すぎにパーキング休憩。もう東の空が明るくなっていた。午前5時40分頃に札幌に到着。まだ早いので、狸小路にある24時間営業の銭湯へ。女性専用の施設「ほのか」で、ゆっくりお湯に浸かる。夜行バスはあまり眠れなくて、若い時は平気だったけど、やはりもう若くないので頭はぼんやり、体の節々の痛みは取れず。帰り際、受付の女性が声をかけてくれて、「今日はお天気が良くていいですね。」と笑顔で見送ってくれた。ちょっとした会話で心が和む。大通りまで歩くと、ちょうどライラックがきれいに咲いている。花壇もお花がたくさん、噴水の周りは朝早い時間にも関わらず、観光や散歩している人もいて穏やかだ。ベンチもたくさんあって、お日様があったかかった。余所者の私だけど、ベンチに腰掛けてると札幌っ子のような気分になれる。そこから少し歩いて、札幌駅前からサッカー会場の東雁来までバスに乗る。ちょうど北海高校のサッカー部の子達も同じバスで、バス停からも後について会場までぞろぞろと歩く。

 

 今回は札幌地区のベスト8による準々決勝である。ベスト8になった時点で全道大会への切符は手にした。今回の順位決定戦で、全道トーナメントのどの枠に位置できるかが決まるので、できるだけ上位に行きたい。今日の試合に勝つと、翌日は準決勝と決勝の2試合がある。

 対戦相手は、同じ北海道プリンスリーグ2部で競い合っている高校。リーグ戦では勝てているので、今回も勝つといいな。インターハイ予選なので、サッカー部全員が応援に来てくれている。泉の高校、札幌光星高校サッカー部は、今年は3年生27名・2年生37名・1年生35名・計99名もの部員がいる。その中でインターハイの選手には25名が登録されており、2年生の泉も背番号16を背負うディフェンスだ。主に左サイドバックで出場。今、数名怪我で欠場しているメンバーがいることもあり、泉は今回スターティングメンバーで出場。最初は相手のリズム、途中から光星が攻める時間が増え、何度かシュートを蹴るも決まらず。前半0-0で折り返す。応援する仲間の声援も大きく、後半もボールを光星が保持する時間が長く、ゴール前にも何度もボールを運び、シュートを繰り出すも、相手の守備も固く、キーパーもしっかりとゴールを守り続ける。終始光星が優勢であったが、後半も0-0で終わる。延長戦なく、PK。選手達、リラックスした雰囲気の中ゴールを決めるも、相手も同じく決めてくる。相手キーパーに1本止められ、でもその次、我らがキーパーW君のナイスセーブ。W君、更にもう1本セーブし、次入れば光星の勝ちが決まるという大事なシーン。8人目のキッカーは、キーパーのW君が指名される。これを決めれば、ヒーロー。だったけど、、、外してしまう。次の回相手シュートを許し、次のI君が止められたことで、相手チームの勝ちが決まる。ずっと追い風が吹いていたけれど、勝利の女神は微笑んでくれませんでした。残念ながら、ベスト4には進めず。

 がっかりした気持ちで、とりあえず、会場近くのコメダ珈琲へ。カフェオレを飲みながら、録画した動画を釧路にいるハッシーへ送る。ハッシーはまだ結果を知らないので、この残念な気持ちを共有できない。泉は後半からは交代。泉は前回の試合ではコーナーキックを直接決めて、先制点を獲得し、結果勝利に導かれたので、今回も期待していたのだけれど、毎回うまくいく訳ではない。バックパスが度々あったので、もっと積極的にボール運ぶこともできたのでは?とか、選手達、もっと必死さが必要だったのでは?とか。悔やむ気持ちも湧いてしまう、、、。泉だってがんばった。上手な子ばかりのサッカー部の中で、選手に選ばれて、しかもベンチで出場していない子もいる中でスタメンに選んでもらえているのだから、きっと泉の強みはたくさんあるのだろう。選手達の様子だって、私が感じていることと実際の選手の気持ちには隔たりがあり、察し得ないことの方がたくさんある。私はただの傍観者だから、あれこれ口出しはできない。でも、サッカーは団体戦であり、応援する人も影響を与えうる競技だと最近読んだ本「競争闘争理論」(河内一馬 著)に書いてあった。なので、今回現場に立ち会ったことで、ちょっとは参加している。できるのは、勝利を祈ることだけだけど。祈りはきっと力になるはず。

 それに最近は、起こる出来事は未来からやってきていると捉えるようになった。全てのことは起こるべく起こっていて、今の出来事が最善って思える。悔やむことはない。いいことも悪いことも同じだけ価値があるのだ。そして、いつも今は未来へと続いている。あの時、W君が止めて、次蹴れば決まるって瞬間、みんなW君に期待していた。それは外れちゃったけれど、外したことよりもあの時みんなが絶対W君入るって信じてた気持ちこそ尊い気がする。W君に任せた監督もあっぱれだ。W君のお母さんは「なんで蹴らせたんだっ」って嘆いていたけれど、みんなW君を責める気持ちは微塵もなく、Wよくやった!と思っているはず。

 「全道でリベンジですね!」という同じチームのお母さんの言葉に励まされ、気持ちが立ち直る。そうだ、去年は全道も逃してしまったので、今年はチャンスがまだある。恵まれている。次がある。今を楽しもう。全道大会は6月、稚内市で開催される。

 

 この日は、ねおすで働いていた時の同期で、いっとき共同生活もしていたOさんのお家に泊めてもらう予定。Oさんが帰宅するのは午後6時頃って言ってので、それまで暇だ。バスで札幌駅へ戻る。途中、サッポロファクトリーを通りかかったのでそこで降りる。街にいても緑のある所が恋しい。ファクトリーのすぐ横に、旧永山邸のある永山記念公園があった。明治期の建物と巨木にの佇む庭、藤の花もきれいに咲いている。ベンチが置いてあったので、しばし休息。樹齢が100年を超える木々に囲まれていると落ち着く。その周りは空気が新鮮で整っており、ゆっくりとした時間が流れている。きっと木や土や建物は古い時間も内包していて、自由に時空を行き来しているのではないかと思われる。旧永山邸はカフェになっているようだ。いつか行ってみよう。それから、ファクトリーへ。吹き抜けのアトリウムの中は明るく暖かい。mont-bellやsnowpeakなどのアウトドアショップもあるし、おいしいレストランもたくさんある。私もよつばのソフトクリームを食べながら、ぼーっと過ごす。アトリウムの花壇にはチューリップやパンジーなど可愛いお花が植えられていた。ゴールデンカムイにも登場した開拓使麦酒醸造所時代の煙突や煉瓦造りの建物もファクトリー内にある。煉瓦舘は今耐震工事中だが、まだ健在だ。重みがあって、このような古い時代の建物が残り、手入れされながら現役で使われているのはうれしい。夜ごはん用にお惣菜を買って、ファクトリーを後にする。Oさんのうちのある豊平公園まで地下鉄で移動。まだちょっと時間があったので、豊平公園をぶらぶらする。豊平公園も緑豊かだ。元は農林水産省の林業試験場だったとのことで、いろんな木が生えている。北海道に元々ある木も植えられた珍しい木も。今も札幌市公園緑化協会が手入れしていて、四季折々花が咲き誇っている。エゾリスもいたり、野鳥もたくさんやってくる。街中にあるので、いろんな人が散歩、特に犬の散歩に来ている。犬も大型犬から小型犬まで様々な犬がやってくる。寝不足でくたくただけど、やっぱり緑に囲まれていると回復する。植物は何かエネルギーを放出してくれていると思う。公園に入った瞬間に空気がスッと変わるし、気分が爽快になる。植物ってすごいな~。公園内もライラック、つつじ、藤、石楠花が咲いていて、きれいだね~、ありがとう~と話しかけながら(心の中で)遊歩道を歩く。ハンカチの木という木の白いひらひらした大きな花も初めて見た。

 

 そして、Oさんちに「ただいま~」とお邪魔する。以前お邪魔した時は、近所の焼き鳥屋さんに行って、美味しい串とビールを堪能したのだけれど、今日はもう眠くて起きていられない。お惣菜を一緒に食べて、近況を語り合って、早々に寝た。Oさんとはかつて共同生活していたこともあって、姉妹みたいに素のままで居られる関係が心地よい。朝までぐっすり熟睡、翌朝はすっきりと目覚めた。

 

 ほんとは準決勝も観る気満々だったけれど、今日はぽっかり試合がなくなってしまった。釧路への帰りのバスは午後6時30分札幌駅発を予約しているので、今日は1日フリーだ。昨日のうちに泉と病院に行く予定を組んだ。先日、学校の心電図検査で要精密検査と言われていたのだ。

 心電図検査では、「洞性徐脈・左室高電位」と診断されていた。心拍が、普通の人は1分間に60回くらいなのだが、泉は45~49回/分であった。ネットでちょっと調べたところによると、洞性徐脈はスポーツ心臓とも呼ばれ、スポーツをしている人は心拍がゆっくりになるらしい。他の病気が潜んでいなければ、特に問題はないとのこと。精密検査では他に不調が出ていないかを検査しにゆく。昨日のうちに札幌の循環器科内科を検索した。近くて、予約ができるとこを探して、時計台記念病院に行くこととした。泉も多分スポーツ心臓だとは思うけれど、他の要因があったらどうしよう。場合によっては心筋梗塞とか突然死に至ることもあるらしい。激しい運動はできないって言われたら、サッカーももうできなくなってしまうな、とか心配な気持ちも湧いてきた。そんな時は神頼み。Oさんちに御礼を言って出かけると、近所の豊平神社へお参りに。泉や筑波にいる明や釧路で待っている和やハッシーと自分の健康と安全を祈願した。豊平神社の狛犬の持っている丸い玉が赤と白に塗られていておしゃれだった。まだ何もわかっていないのだし今から心配する必要はないって、おかげさまで安心することができた。病院では、レントゲン、心電図、エコーの検査をした。最後の診察での先生とのやりとり、「何か運動している?」「サッカーやってます。」「いつからやってるの?」「小学3年生から」「今も?」「はい」「そのせいです。運動していると、普段は心臓ががんばる必要がないからゆっくりになる。スポーツ心臓。昔、有名なテニス選手で心拍数32という人もいたから。心臓の動きもいいし、血液の流れも正常だから、問題ないですよ。」とのこと。あーよかった、とほっとする。泉、スタミナあると思ってたけど、強靭な心臓を持っていたんだね。安心してサッカーに打ち込めるね。朝9時頃に病院に行って、診察が終わったのが午後1時30分。検査や診察は正味1時間ほどで、ほとんどは待ち時間。待ちくたびれたけれど、病院の先生をはじめ、看護師の皆様、お世話になりました。ありがとうございました。

 病院を出て、すっきりした気持ちで、お昼ご飯を食べに。すぐ近くにスープカレーやさんがあったので、そこでおいしいスープカレーを食べる。札幌はスープカレー発祥の地で、たくさんお店がある。たいていハズレなくおいしい。スパイスたっぷりのスープ、そして素揚げした野菜がどっさり。お好みで骨つきチキンや色々(ハンバーグとか納豆とか)トッピングも豊富だ。体もぽかぽかとあったまる。北海道あるあるだけれど、大盛りは結構な大盛りにしてくれる。泉は大盛り。病院も済んだし、ご飯も食べたら、特にもう用はないので、泉に「元気でね!」と告げて別れる。大丈夫、泉は守られて生かされて愛されている。世界はいつもやさしいのだ。

 

 午後3時、まだバスまで時間がある。そんな時は、北大へ。北大は公園のようで、カフェもあり、人混みもなく、ちょうど良いのだ。北大の構内へ入ると、緑濃く、木陰はひんやりしている。銀杏並木の葉っぱももうすっかり茂り、ポプラの木は相変わらず巨木で、楡も元気だ。5月のまだ新入生が入って間もない時期。1年生の学ぶ教養棟付近には、サークル勧誘の看板がたくさん並んでいた。懐かしいな~。校内を自転車で通り過ぎていく学生達が眩しい。自分が北大に入学した30年前の若い気持ちも蘇る。初夏の爽やかな陽気と緑に気持ちが華やいだことを思い出す。北海道の6月頃は、大好きな季節だ。今年入学した長男 明も筑波大学のキャンパスを新鮮な気持ちで楽しんでいるかなと思いを馳せる。キャンパスを南北に伸びるメインストリートを30分くらい歩く。ベンチを探していたら、工学部横の池の縁にあったので、そこに座る。私が在籍していた頃に比べ、いろいろ新しい建物もできている。理学部は博物館になったし、その向かいにセイコーマートもできた。博物館の中のカフェでソフトクリームでも食べようかなと思ったけれど、まだセイコーマートに行ったことがなかったので行ってみた。北大オリジナルグッズも売っていた。札幌農学校クッキーと北大オリジナルどら焼きをお土産に買う。店内のひきたてコーヒーは「札幌珈琲茶館」の焙煎豆を使っているのに150円とお得。どうやら2階がイートインスペースになっているようなので階段を登る。と、明るくテーブルがたくさんん並ぶ広いスペースだった。テラスもある。コーヒーとアイスクリーム(北海道豊富産牛乳使用)を持ってテラスへ。2階から木々の枝葉が間近に見える気持ちの良い場所だ。そして空いている。幸せな気持ちで味わい、しみじみと母校っていいなと思った。知らない大学のキャンパスだったら、どこかよそよそしく、部外者感があるけれど、北大はいつでも誰でも受け入れてくれる。懐が深い。実際、観光客もたくさん歩いている。前回来た時は冬だったので、なんとなく木が切られて少なくなり、建物ばかり増えちゃった印象を持ったが、初夏の北大は変わらず緑あふれ、新しい建物もキャンパスに馴染み居心地が良かった。テラスから見下ろしていた時にすぐそばに木道があるのを見つけたので、歩いてみる。サクシュコトニ川という小さな流れに沿った道だ。ここは生態保全域に指定されていて、動植物が保護、調査されていると看板に記されていた。サクシュコトニ川は元々札幌の大地に流れている豊平川の支流で、札幌農学校ができた当時はここまで鮭が上ってきていたと聞いたこともある。今の水はどこから流れてきているんだろう?そんな流れを見ながら進むと、弓道場が現れる。こんなとこに!知らなかった。弓道部の子が弓を放っていた。森に囲まれて素敵だな。ここは異次元への入り口かもしれない。実は時代を遡っていたのかも。北大キャンパス、まだまだ未知のゾーンが隠れていて、おもしろい。

 昔ながらの建物も残っていて、大好きな農学部とその周りのローンを通り過ぎる。6月の1週目は北大祭だ。例年、クマ研ではジンギスカンのお店をやっていたな。七輪に炭を起こして、ジンギスカン鍋をのせて、丸い羊肉を焼いて食べる。タレは玉ねぎやリンゴをすって手作りした。串刺しにしてシシカバブーも作ったな。山菜や山菜の炊き込みご飯を販売したりした。蕗は当日の朝小樽に採りに行ったし、ササノコは前もって札幌から400キロ離れた天塩まで行って根曲がり竹(チシマザサ)を採集し、16線小屋という調査ベースで皮を剥き茹でて塩漬けにした。当時は全然手間だと思わず、山菜採りなんて生まれて初めてだったし、買いに来てくれる地元のおばさん達との会話も楽しかった。今もやっているだろうか?でも芝生での火器の使用が禁止になったと聞いたのでもうやらないのかな。夏に芝生でジンギスカンって最高なのにな。機会があれば、お客さんとして北大祭に来たい。みなさんもぜひ「ひぐま亭」に!

 

 そろそろバスの乗車地点、札幌駅前に向かう。まだ少し時間があるので、紀伊國屋書店で文庫本を選ぶ。平積みになってた「思考の整理学」(外山滋比呂 著)を購入。最近はあまり読まない系の本だけれど、学生時代は選んでたな。学ぶことで新しい世界が開けると思っていたあの頃。今日は大学の時間に触れたせいか、つい手が伸びた。レジのお姉さんが笑顔で接客してくれてほっこりする。やっぱり、人の持つエネルギーってすごい。たまに気が通じ合う人がいるだけで、気持ちがぐんと上がるのだから。

 バス停で文庫本をパラパラ読みながら待つ。駅前通りの片隅にあるさりげないバス停で、合っているかちょっと不安だったけれど、ちゃんと来てくれたニュースター号。行きの夜行バスは混んでいたけれど、帰りはがらがら。釧路まで大型バスに6人という贅沢な環境。高速道路からふりかえると、札幌の街に沈む夕陽が美しかった。道中も満月に近いお月さまがずっとついてきていた。

 1泊2日の札幌滞在、暮らしている時とは違う景色だけれども、札幌は暮らしても訪れてもいい街だ。緑があふれ、人は親切だ。都会だけれど、おおらかで空がきれい。食べ物はおいしいし、交通の便もいい。友達がいて、泉がいて、母校がある。私が生まれた名古屋、子ども達が生まれた弟子屈、そして私が青春時代を過ごした札幌、私には3つのふる里がある。長らく札幌から離れていたけれど、次男が札幌の高校を選んだことで再び縁ができた。また来るね。

 ありがとう札幌。