真澄の空
9月中旬、仕事がぽっかり空いている週だった。しかも、お天気が良かった。
仕事の日は雨が多いのだけれど、晴れている時に限って仕事はない。
月曜日
昨年末に加入した「摩周・屈斜路パークボランティア」という環境省のお手伝いをする団体で、私はやってみたいことがあった。センサーカメラを用いて野生動物の調査だ。ヒグマをはじめ、この地域の野生動物の生息状況をモニタリングしたいと前々から望んでいた。その調査を摩周・屈斜路パークボランティア連絡会が主体となり、環境省、川湯ビジターセンター、弟子屈町、森林管理事務所などに協力してもらって、この夏からカメラを設置、調査を始めることができた。撮影期間は、9~10月。この日は、調査メンバーとカメラの設置に問題がないか見回った。直前の呼びかけだったが、Mさん、Aさんが参加してくれて、一緒に森へ。カメラに問題はなかったが、線路沿いの木が伐採されている箇所があり、森が明るくなっていた。今年はシカが多い。仔ジカもたくさん見かける。シカが多くて、植生への食圧が目に見えるほどだ。他の動物への影響も大きいことが予想される。このような印象が、センサーカメラ調査を長年継続することで、データとして残せたらいいと思う。11月にカメラを回収するのだが、何か映るか今から楽しみだ。クマが写ったらいいな~と思うけど、ほんとはクマはもっと山奥にいた方がいいような。でも、意外と人の近くで、そっと暮らしているのがクマなのかもしれない。
火曜日
今日も摩周・屈斜路パークボランティアの活動。アクティブレンジャーの行う和琴半島散策路の巡視とササ刈りのお手伝い。和琴半島は大好きな森で、散策路は私もよく歩かせてもらっている。ササが道を覆っている箇所があって、気になっていたので同行した。ササは春にも刈っていたそうで、刈る場所は少なかった。紅葉はまだだけれど、カツラの甘い香りがほんのりと森に漂っていた。2時間ほどで終了し、お土産物屋さんでいも団子をはっしーへのお土産に買った。私はこの日のランチは、お友達と美留和のカフェで会う約束をしていたので。そしたら、お土産物屋さんのおじさんが、「お代はいらない、食べなさい」って。馴染みのおじさんだけれど、その気持ちが涙出そうに有り難かった。友達は美留和小学校の給食試食会でご飯食べてから来ることになっていて、カフェでは1日限定10食の日替わりランチが最後の1食残ってい他ので、それを戴いた。おいし~い、幸せ。豪華じゃないけど、自家菜園の新鮮なお野菜、愛情のこもった手作りのお料理は心も体もぽかぽかする。友達との久しぶりのおしゃべりも楽しかった。お友達にお茶をご馳走する。私がいも団子屋さんから受け取ったギフトを次につなげられたようで、喜んでもらえて私もうれしかった。カフェに来る前には美留和の熊野神社に寄ったんだけど、そこでも美留和小学校の保護者など縁ある方に偶然あって、美留和で今度やるイベントのチラシをもらった。新しい豊かな暮らしを創造する流れがここ周辺に満ちているな~と感じました。先日は、美留和小学校でヒグマ教室を行った。毎年のようにやらせてもらっているので、子ども達もだんだんヒグマに詳しくなり、またヒグマへの畏敬の念も自然に湧いてきているように思う。悲惨なニュースだけでない、多様なクマの価値観に触れて子ども達なりのヒグマ観が育まれてゆく。ヒグマの話をできる機会を与えてもらえるのは、私にとっても生き甲斐であり、命敬う豊かな流れを生み出すことに貢献できたらいいなと、熊野神社に願った。
水曜日
今日は朝からきらきらとした太陽が輝いていた。予定のない日。久しぶりに一人で川へ行こうかな。風もなく、湖は鏡のように静かだ。カヌーを浮かべて、澄んだ水にパドルを差し入れる。自然の静けさを乱さないように、そっと静かに。水が少なめのこの頃、水流も穏やか。私がここに暮らしはじめてからずっと毎日、常に流れ続ける川。雨の日も晴れの日も寒い日も暑い日も。湖を水源とする釧路川源流の流れは、大雨の後も増水することなく、濁ることもほぼなく、同じように流れ続ける。この水は森が湛えている水、雨が降って、木の葉を濡らし、土に沁み込み、地下深く潜って、長い年月を過ごし、湖底から湧き出してくるのだろうか。自然の循環は神秘に満ち、恩恵には感謝しかない~と思う。朝起きて、こんな風に水と交流できる時間が幸せ。
木曜日
みどり橋までいい感じで下れたことに味をしめた私は、翌日、美留和橋まで下ろうと思った。けれど、自分では途中のS字カーブまでしか下ったことがないので、はっしーと1艇づつで下ろうと誘ってみた。美留和の瀬の手前までだったらいいという返事。美留和橋の手間に瀬があるのだけれど、自然の瀬ではなく、コンクリートの護岸が剥がれて川底に沈んでいる瀬らしい。水の少ない最近では、カヌーの底を擦るので手前で上がることが多い。川岸から車を停めているとこまで運ぶのが大変なのだが。今日はみどり橋からスタート。橋の下、水流が複雑で沈木もあって怖いと思っていたけれど、意外とスムーズにクリア。その先、倒木が連続するカーブがある。この前の4泊5日のキャンプツアーでお客さんが沈した場所。慎重に進む~。と意外とここもいけた。ソロで乗っていると、カヌーの操作は容易い。前にお客さんを乗せていると、難しくなる。ここを以前下ったのは、もう10年くらい前かも。お客さんを二人乗せて。私がお客さんを前に乗せて下るのは、みどり橋までで、その先はその時だけだ。その頃よく来ていた常連さんから頼まれて、成人男性二人を乗せて下ったのだけれど、どきどきでした~。しかも、先頭のお客さんが漕いでほしいのと反対側を漕ぐので、余計難しくて、枝をぎりぎり避けながら、なんとか辿り着いた感じ。真ん中に座っていたお客さんは、私が必死なのを知らずか「優雅だな~」といいカメラで写真撮っていました。ひっくり返らなくてよかった〜。そんな苦い思い出の区間だけれど、ここ何年か地道に練習しているせいか、昔より川も下りやすくなっているせいか、まあ一人で乗っているからだけれど、いい感じで下ることができました。今年はバックフェリーという技も使えるようになって、カーブでも焦らずゆっくり漕ぎ抜けられるようになりました。カヌーの後ろに当たる水流を感じながら下ります。カーブの時、カヌーの向きを進みたい方向と逆に向けて、水をカヌーの方に寄せるようにすると、カーブの内側へすっと寄ってくれます。カーブと同じ向きに向けて、前へ素早く漕ぎ進む漕ぎ方と比べ、スピードが出ないし、川の流れでアウトに押されることがないので、自分的には落ち着いてカーブを曲がれる。あとは、進んでゆくときも以前に比べ、水の流れが見えるようになった。水がきらきらしているところを常に気に留めておく感じ。水音に耳を澄ませ、視野を広く、水の流れを感じながら、時々手で川の水に触れ、五感を使って川を下る。この集中する時間が心地いい。ただ川を下るだけなら、カヤックとかパックラフトの方が簡単かもしれない。カヌーはちょっと難しいのだけれど、それだけ繊細に、感覚をフルに使って下る醍醐味があると思う。もちろん沈する可能性もあるのだけれど、初めての人にもこの体験を提供し続けている勇気あるはっしーはすごいと、私は密かにこっそり思っているのです。
金曜日
晴れの予報。ほんとは美留和橋の先、摩周大橋までカヌーで下ってみたけど、はっしーに「やめた方がいい」と言われたので、理由はわからないけれど、カヌーのことははっしーに素直に従う私。(お察しの通り、その他のことはあまり素直に聞かない。)せっかくいいお天気。友達が斜里岳に登るって言ってたので、一緒に行こうかな~と迷ったのですが、斜里岳は中級者向けの山で私の体力の80%以上を使わないと登れない。下山した後の疲労度合いを思うと、ためらってしまう。もう若くないので、無理ができないのだ。日曜日には、アトサヌプリトレッキングツアーのガイドの仕事も入っていたので、体調を整えておかなくてはならない。KCT(屈斜路カルデラトレイル)の藻琴山~美幌峠を歩いてみようと思い立つ。KCT歩きたいと言っていたYさんをお誘いする。そしたら、たまたま遊びに来ていたRさんも一緒に行けると言う。3人で藻琴山へ。銀嶺荘からのスタート。銀嶺水が湧き出す素敵な山小屋。ここから藻琴山山頂までは30分くらいで登れてしまう。超お手軽コース。銀嶺荘までが林道がちょっと長いので、こちらのルートを利用する人は少ないのだが。山頂からの眺望も素晴らしい。秋晴れの澄んだ空。流れる白い雲。眼下には屈斜路湖とそれを取り囲むカルデラの峰。振り返れば海と知床連山。斜里岳の勇姿。友人は斜里岳登っているかな?斜里岳方面に「ヤッホー」と呼びかける。山頂でセイコーマートの大福を食べて、Sさんの淹れて来てくれたチャイを飲んで、少し下山。KCTとの分岐まで戻り、トレイル歩き。ぐんぐんと下ってゆく。このまま14kmほど歩くと美幌峠に着くのだが、今回Rさんがちょっと前に足を痛めて長距離の歩行が不安ということで、KCTは少し行って引き返すことにしていた。あまり下ると戻る時登らないといけなくなるので、早めに引き返す。そして、銀嶺荘へ到着。まだ昼前だったので、藻琴山の麓にある小清水キャンプ場へ。キャンプ場の一角でおにぎりを食べて、周辺の散策路を歩く。周りは立派なエゾマツ、枯れた木や苔むした木、蔓の絡まった木など、針葉樹と広葉樹の混在する極相の森だ。海外暮らしの経験が豊富なYさん、Rさんは、「デンバーにいるみたい」「ワシントン州にも似てる」「ロッキー山脈の辺はこんな感じ」などと話していて、私も数少ない行ったことのある外国 イエローストーン国立公園の森の雰囲気だな、アカリスがいそう~と思った。森に浸り、気の合う友人との自然の中で感動を共有できる時間を過ごすことができた。身近にこんなに豊かな森が川が湖もあって、素敵な友人がそばにいて、日々恩恵を享受できている。神様、今日もありがとう。
下山してお友達と別れてから、お菓子屋さん風月堂に立ち寄る。お菓子を選んでいると、来店して来たのはうちの子達が小学生だった時お世話になっていた学校事務員のMさん。今は川湯中学校で事務員をしているそう。そしてお店に座っていた方が「もしかして橋田さん?」と声をかけてくれて、その方は長男が2歳くらいの時、子育てサポートでお世話になったことのある懐かしい方でした。随分長い間お会いしていなかったのですが、私のことも長男のこともよく覚えてくれていて、お元気そうな姿にお会いできてお話できてとても幸運でした。風月堂の奥様とも世間話をして、いつもがんばってるねと励ましてくれる川湯のお母さんのような存在です。
今日のような青空の気持ち良い日を「真澄の空」と表現するそうです。私の名前は真澄ですが、「真澄の空」という言葉は、高田郁さんの小説「みをつくし料理帖」で初めて知りました。私のお父さん、お母さんはどうして私に真澄って名前つけたのかな?今度、聞いてみよう。真澄の空が広がるこの日、太陽の光がいつもより澄んでいて、時空間がいつもとちょっと変わっている、異次元の空間が紛れ込んできたような感じ。Yさん、Rさんが暮らしていた外国の森がふと藻琴山山麓に流れ込んできて、海外の空気感を体感することができた。一昔前の時間が不意に風月堂に流れ込んできて懐かしい人達と再会することができた。奇跡の流れ。ほんとに稀に真澄の空の日、特別な時空間へと迷い込む瞬間があるのだ。
土曜日
このブログを記す。このように文字で表現する時間も、私にとっては癒しとなっている。
今日からシルバーウィーク。明日から仕事が続きます。
トレッキングガイド、湿原ツアー、源流ツアー、娘が帰省、2泊3日キャンプツアー、娘帰寮、4泊5日キャンプツアー、そして10月は筑波へ旅行。ここ6日間、お日様を浴びてたくさん充電できました。心も豊かになって、愛が満ち満ちている感じ。全てに感謝。ありがとう。ギフトが巡り巡る世の中でありますように。私が受け取ったたくさんの愛を、たくさんの人へ手渡せていけたらいいな~。喜びの連鎖が続いていきますように。