カヌーガイド ハッシー

 

 

 今日もブログを訪れてくれてありがとうございます。

 今日は、Nanookのカヌーガイド ハッシー(夫)の仕事っぷりについて書きたいと思います。
 

 

 釧路川はカヌーイストの聖地として有名です。

私は学生時代札幌にいたのですが、弟子屈(テシカガ)という地名も釧路川という川も知りませんでした。

弟子屈町へ来て知り合った友人にはカヌーを趣味にしていたり、カヌーガイドをしている人が割と普通にいて、私も休日にカヌーに乗せてもらったり、工房でカヌーを作ったりもしたので、思い返せば結構カヌーにハマっていたようです。

カヌーが好きというよりは、カヌーをやっている人達っておもしろい人が多いな!って思っていました。

そんな友達の友達という感じでカヌーガイドのハッシーとも知り合い、後に結婚、仕事としてカヌーガイド業を営むようになりました。

 

 

 Nanookはカヌーガイドがハッシー一人の小さなガイド会社です。

私はカヌーツアー のサポート役、車の送迎やランチやキャンプ料理などを担当しています。ちょっとだけネイチャーツアーをすることもあります。

釧路川にはガイド業者さんが、源流域で10社ほど、湿原域にも10社ほどあるかと思います。源流の業者さんは、個人でやっているところが多くガイド1〜2名体制のこじんまりとした感じ。湿原域はガイドさんが3〜5名、カヌーも大型だったりして、釧路湿原の知名度の高さ故に源流より多くの人が訪れています。

そんなカヌーの盛んな釧路川でもNanookは異色なガイド会社です。

自分で漕ぐカヌーツアーに特化しているからです。

他のほとんどのカヌーツアー は、ガイドさんが漕ぐカヌーにお客さんが一緒に乗って川を下ります。

Nanookでは、お客さんだけでカヌーに乗り、ガイドは別艇で先導しながら川を下ります。

このようなツアーを主軸にしているカヌーガイドは源流ではNanookだけ、湿原ではRさんとNanookだけです。

ハッシー曰く、「最初にガイド修行したところが別艇だったから、それが染み込んでる」そうです。
 

 

 ハッシーの師匠は、Voice of Wind の木名瀬さんです。

Voice of Wind は木名瀬さんご夫婦が営む3泊〜4泊のキャンプツーリングを主に行うガイド会社でした。

28年前、都会から移り住んだハッシーが木名瀬さんと出会い、翌年からVoice of Windの仕事を手伝いながらカヌーツアーのいろはを学びました。

7年間の修行はハッシーにとっては新しい学びがいっぱい、レベルの高さについてくのに必死、カヌーの漕ぎ方、アウトドア料理の作り方、お客さんとの交流の仕方、焚き火の起こし方など微細なところまで習得する日々だったようです。

芸大出身で元来はあまりアウトドア派でない、そしてそんなに器用ではないハッシー、日常生活もキャンプと同様な環境(電気を使わないバスの家での生活、これについては改めてお話しします。)で過ごすというかなりな覚悟でカヌーガイドという仕事を身につけて行ったようです。

厳しかった分、骨身に染み込んで、そのスタイルを今も継承し続けています。

当の木名瀬さんは今は釧路川を離れ、愛媛県今治の「しまなみ野外学校」で木名瀬メソッドを展開中です。

木名瀬さんとの出会いのおかげで今のハッシーと生業があります。


 

 釧路川の源流は手つかずの原生的な自然が残る川です。

屈斜路湖から流れ出す澄んだ水、蛇行する川、両岸は木々に囲まれ、川幅が狭いので木の枝の下を潜りながらカヌーは進みます。

岸辺の木は明るい川面に向かって枝を伸ばすので、木はだんだん傾いてきて、風や雨の後は倒れて川をふさいだりすることもあります。

そんな時は、カヌーが通れるように少し木を切ることもありますが、できるだけ手を加えず自然の姿を残そうと皆で話し合いながら利用しています。

 

 

 Nanookの釧路川源流カヌーツアー は、初心者向けにまず座学から。川の流れとカヌーの操船方法を図解します。それから湖でまっすぐ漕ぎ、右回転、左回転、更に平行移動などもカヌーに乗って練習します。パドル操作自体はそんなに難しくはないのですが、カヌーの動きをスキーと同様体で覚えて行きます。二人で漕ぐので、二人の意思疎通が大切です。そして、いよいよ川へ。水が冷たい季節はウェットスーツ、またはドライスーツを着用し、沈(転覆)しても大丈夫な装備で挑みます。

 

 源流の川下りは、沈する艇もたまにあります。水面まで倒れこんで来ている木をカヌーが避けられず、枝に引っかかってバランスを崩して沈することが多いようです。

湖では上手だったけど川へ行ったらパドルが止まってしまったり、湖ではペアで息があってたけど川へ行ったら息が合わなくなってしまったり。

理由は様々ですが、源流は結構手強いです。

川をカヌーで下る、その時力は必要なく、流れを見ることが一番大切。

流れとカヌーの向きとパドルの動きで、無理なくすんなり行きたい方へ進んでいける。

それまで力づくて生きてきたような私にとっては、流れをよく見て受け入れことで楽に自然に生きていけるんだというということを教えてくれたのがカヌーでした。

 

 

 ガイド的には、ハラハラの連続。沈する想定で川へ行ってますが、水の冷たい季節はできるだけ沈はさせたくありません。

また、沈しても浅瀬があってすぐ足がつく場所なら危険はないのですが、流されてその先の沈木(水の中に沈んでいる木)に引っかかってしまう恐れもあります。

まずは安全なコースへと参加者の艇を導いていく。

危険箇所をクリアしてもまたすぐ次に備える。源流は気を抜けません。

例えると、氷の張った湖の上で一緒にスケートしていて、ガイドには氷の厚いところと薄いところが見えています。

薄氷の上に行ってしまうと危険なので、できるだけ氷の厚いところに来てほしいのですが、スケートが初めての方は思うように進めません。

声で指示したり、時には自分の艇を使って進むコースを誘導します。

参加者さんには氷の状態が見えないので、ガイドだけ内心冷や汗をかいている感じ。

 

 

 沈したらまずカヌーから落ちた人の安全確保。

足がつけば、そこで待機してもらいます。

水の中にいる時はロープを投げて受け取ってもらい、掴んでいるロープを引っ張って浅瀬や岸まで来てもらいます。

次にカヌーの回収。

すぐに引き上げられられることもあれば、水中の倒木に張り付いてなかなかあげれないこともあります。

そんな時は、ロープや滑車を駆使して、引っ張りあげます。

人とカヌーが無事安全な場所まで戻っても、ゴール地点はまだ先。

またカヌーに乗り込んでその先に進みます。

幸い今まで沈は多くあれど、無事リカバリーしてくれているので、割と沈してもなんとかなるのかもしれませんが、そこは油断できず、常に最悪も想定しつつ毎回真剣勝負のハッシーなのです。

 

 

 ある意味命がけのカヌーツアー 。

無事漕ぎきった時の爽快感は最高です。

ツアー終了後は、最初来た時の堅い表情とは変わって、すっきりと自信に満ちた心からの笑顔にみんななっています。

しかしながら、「景色見ている余裕がなかった。」「最後の方にやっと余裕が出て来て楽しめました。」という声も。

不安がある方には練習が終わった時点で「川も自分達で行きますか?」と確認しています。

「行きます!」というやる気のある方にはできるだけ自分達で漕いでもらいます。

ガイドと同乗を選ぶ方もいます。

それはそれで安心してゆっくり川の景色を楽しめますし、カヌーに乗って感じる釧路川の流れも本当に素晴らしいです。

沈を経験した人ほどまた来年リベンジに来てくれたりもします。

リピーターの方はどんどん上手くなって、前回よりも先へと川を下ってゆく楽しみを味わっています。

あらゆる角度から味わい深い釧路川です。

 

 

 釧路川の下流は日本で一番広い湿原、釧路湿原へと続きます。

釧路湿原は川幅が広いので、沈の可能性は源流に比べ低いです。

基本的には沈しない想定で川下りをしますが、でもリスクはゼロではないので、ガイドの気持ちはいつも沈に備えて緊張感を持ってツアーをしています。

湿原では野生動物との出会いが魅力です。

タンチョウ、オジロワシ、たくさんのエゾシカ、キツネ、カワセミ、、、、

自然の音しかしない空間の広がり、日本に残されている数少ない自然の雄大さを体感できる場所です。

人里から離れている分、川の途中でのアクシデントは源流よりリスクが高いと言えます。

 

 

 この文章では書ききれないこと、それ以外の目に見えないたくさんの心配りやリスク回避の技など満載でガイドのハッシーはツアーをしていると思います。

あくまでも私目線なので、ハッシーは違った見解になるかもしれません。

このような裏側は参加した方には見せないので、私しか見ていない面になります。

体力面での大変さもありますが、それ以上に精神的な大変さが大きいお仕事だと思っています。

ハッシーはこの仕事を愛していて、いつも楽しんでやっています。

カヌーが好き、釧路川が好き、参加者さんと感動を共有できるのが好きなのでしょう。

一年中やってたら持たないですが、夏を乗り切って冬のんびりできるので、かれこれ18年間やり続けてこれています。


 

川の神様のおかげ、周りのカヌーガイドさんや地域の方々のおかげ、参加者の皆さんのおかげ、ありがとうございます。

 

 

      

     パドルを手に カヌーにのりこみ 川に漕ぎ出す。

 

         自分の力で 川を下ると 

 

            自然は 今までとはまったく 別の表情を 見せてくれる

 

        感覚を とぎ澄ませて 自然との出会いに 出かけよう。

 

                          

                                                                                 リバーガイドカンパニーNanook