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2007年10月号 小説 未来予想図 ~志羽竜一と昔の私~

この秋話題の映画「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」。この映画に先立ち、小説も発売されていることをご存知ですか?映画で脚本を担当した小説家の志羽竜一さんがさらにオリジナルストーリーを加えて出来た小説です。なんと、この志羽竜一さん、小学校からの同級生なんですよ!というわけで今月号は志羽くんの登場です。
♪きっと~、何年経っても~
こうして~変わ~らぬ気持~ちで~
過ごし~てゆけるのね~ あな~た~とだから

本当に名曲ですよね。ドリカムの「未来予想図Ⅱ」。
私と同世代の方なら、カラオケで熱唱したり、熱唱する人を見た経験が必ずあるのでは。私も大好きな曲で、彼がこの映画の脚本を担当すると聞いて待ち遠しく思っていたのですが、本まで出版すると聞いて本当に嬉しく感じました。

以下、小説家・志羽竜一くんが寄稿してくれました。(本の紹介をしてくれるのかと思ったら私のことがばらされていました・・・。)

昨日、小学校の同窓会に出てみたら、体育館のある一角に人が集まっていて、
なんだなんだとノコノコ近づいていくと、
どこぞのセレブが昔と変わらない求心力のあるオーラで人垣をつくっているのだと気づきました。

Marsa's web をご覧のみなさま、はじめまして志羽竜一(シバリョウイチ)です。
青木真麻さんとは小学校からの同級生でありながら、
人生のかなり早い段階でドロップアウト、
いまや物書き稼業に身を落とした彼女の悪友です。

今回彼女のwebにご挨拶させていただけるとのことで、
せっかくなので僕が知っている友人・青木真麻についてご紹介させていただきたいと思います。

同じ環境で16年間も教育を受けてきたとはいえ、
かの一貫教育の力も一歩及ばず、
他の同級生たちと比べまっとうな社会人の道から大幅に逸脱してしまった自分ですが、
そんな僕に対して小学生の頃と変わらないひとなつっこい笑顔で接してくれるのが彼女です。

小学生の頃からどこかすこし大人びていた彼女は、
クラスに一人、というか、学年に一人、どころか、
学校に一人というレベルのマドンナでした。

6年間彼女と同じクラスだった僕にとってももちろん彼女は憧れの存在で、
席替えの際、その学期中僕の席に彼女が座ることになることを先生が告げた時には、
ほとんど茫然自失、声を失ってしばらく立ち上がれなかったくらいの衝撃を受けました。
(4年生の2学期です先生ありがとう)。

クラスのほぼ全員が彼女のことが好きという環境下、
彼女を(隣の席に)独り占めできる自分の幸運が空恐ろしくさえなりました。
遅刻ひとつしないくせに、その学期はほぼ上の空で、
6年間の成績でもっともひどい成績を取ってしまったことをここに告白します。

それだけ彼女に憧れてはいるものの、
小心者の自分には告白するなんていう勇気はもてるはずもなく、
たしかロクに話しかけることもできなかったと思います。

でも、世の中には何があるかわからない。

ただ、一学期の間だけ隣に座っただけだけど、
ロクに喋れもしなかったけれど、
消しゴムの貸し借りは何度かあったし、
僕が教科書を忘れた時には彼女は嫌な顔ひとつせずに貸してもくれました。

「隣に座っている、出席だけはいい男の子」

に、もしかしたら彼女が好意を抱くことはないだろうか。
というか、
もうすでに好意を持ちはじめてることはないだろうか。
もっと言えば、
オレのこと好きなんじゃねーか。(教科書も見せてくれるしね)

世界の終わりのような二学期終業式を向かえ、年末年始をはさんではじまる三学期。

やがて、くすくすと内緒話をはじめる女の子たち、
そわそわ浮き足立つ男の子たち、
僕らのクラスに訪れるバレンタインデー。

4年生の3学期は席が離れてしまったけれど、
そこは去年の後半ずっと一緒に座っていた僕たち私たち。
ほら、
失ってからはじめてわかることがあるわけだし、
あぁ、あの借りた消しゴムは消しやすかったな、とか
今学期は教科書をずっと一人ぼっちで見ているな、とか、
この胸のもやもやは何だろう、
これはあれか、あの大人たちが世界で一番素敵なものだといっている、
あの、例の、恋というやつなんじゃないか、とか、
考えてくれているんじゃないんだろうか。

などと子供ながらに想像力を膨らませ、
2月14日に登校、
呼吸を止めて机を開いた小学生の自分がいました。

果たして、そこには、彼女からのチョコが。
あった。
あったよ、お母さん、真麻からのチョコが。

「義理チョコ」

と丁寧な字で書かれたスプレーチョコが。

僕はそれ以降の人生においても、
あれくらいフルスイングで正直な義理チョコを目にしたことがありません。

おそらく、嘘の嫌いな彼女のこと、
まっすぐな気持ちで、誤解の与えることのない、
気持ちよいチョコレートをくれようとしてくれたのだと思います。
まだ自分の魅力に気づいていない10歳の女の子が渡してくれた、
いま思えばものすごくキュートなチョコレートでした。

その夜に、
僕はチョコレートがそんなにも甘くてほろ苦いお菓子だとはじめて知りました。

時は流れて、
いまや何でも言いあえる仲ですが、
彼女の剛速ストレートは小学生の頃からの彼女の持ち味です。

とまあ、
こんなことを書いてしまうのも許してくれるくらい、
彼女は魅力的な人間で、それは人工的に作られた魅力ではなく、
6歳で出会った時には彼女がすでに持ちえていた天性の魅力だと思います。

この場を借りて、これからも宜しく。

最後になりましたが、
このたび拙著の小説「未来予想図」がメディアファクトリー社から9月21日に発売されました。
10月の6日には映画「未来予想図」が松竹系で公開となります。
青木真麻さんの身上である剛速ストレートな恋愛物語です。
こちらもよろしくお願いいたします。

http://www.mediafactory.co.jp/c000051/archives/017/005/17511.html

志羽竜一

本は、全国の書店と一部のセブンイレブンに並んでいます。どうぞ皆さん手にしてくださいね。ちなみに、彼は大学卒業後、銀行に就職していましたが小説家に転向。11回三田文學新人賞を受賞しています。きっとこれからも素敵な恋愛小説を書いてくれると思うのでぜひ注目してください!

もし本を読んだら、ぜひ感想等聞かせてください!
それにしても、何かコメントちょうだいよ~と言ったらすぐにこんな長文を送ってきてくれた志羽くん、さすがです。私、ちょっと誉められすぎ!?何も出てきませんよ。
でも、懐かしい、「義理チョコ」。
その真相はいつかまたご紹介します。