鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」 -11ページ目

鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」

重度の身体障害がある鈴木正人(すすきまさひと)のブログ
1972年生まれ、三重県松阪市に暮らしています。
普段僕は車イスで生活をしています。
自分のこれまでの人生をまとめてみました。

僕が28才の頃、家の近所に明和ジャスコが出来た。このジャスコは大型のショッピングモールで、映画館も備えていた。僕は映画館で鑑賞することが趣味だったので、とても嬉しかった。それまでは松阪駅前のベルタウンや隣町の津市のジャスコまで行かないと映画館はなかった。なのでいつも父や母に連れて行ってもらっていた。以前から家の近くに映画館があったらいいなと言っていたことが現実になった。

 

それを知った母は、「あんた、一人で映画行けるやないの。これからは一人で行っておいな」というのだった。母のことだから、そう言ってくることは簡単に予想できた。母は僕に対して積極的に一人で外へ出ていくように言うのだ。これは社会で生きていくために必要ことで、親が生きている間に少しでも強くなって欲しいという願いからだと思う。

 

早速見たい映画はないかと調べるとスピルバーグ監督の「AI」が上映されていた。父に相談すると新しくできたジャスコの様子を見たいので、初回だけ一緒についてきてくれることになった。

 

明和ジャスコまでは徒歩で40分ほどの距離だ。父と相談し、車通りの少なく安全な機殿小学校の側を通るルートで向かうことになった。ちゃんと舗装された田んぼの側道なのでトラブルも無く予定通りジャスコに到着した。入店すると父は「俺はカインズホームに行ってくるわ。映画は一人で見てこい」と言ってその場を去っていった。元々せっかちな所があるので、人を待つことができなかったのだろう。父はアクション映画好きだったので、「ダイハード」だったら一緒に見てくれたかも知れない。

 

一人になった僕は2階にある映画館に向かうためエレベーターの前まで来た。しかし僕はエレベーターのボタンを押せないので、人が来るまで待つことにした。しばらくすると人が来たので一緒にエレベーターに乗り込んだ。2階のフロアーに着くとその人は僕が出るまでボタンを押して扉を開けてくれていた。僕の経験上、エレベーターで一緒になった人はみんなこうして親切にしてくれる(一度だけ取り残されたことはあるが)。エレベーターから降り、映画館のチケット売り場まで来た。しかしもちろん一人でチケットは買えない。こんな時、僕はいつも当たって砕けろの気持ちで挑む。取りあえずチケット売り場に並んでみた。すると僕の姿を見つけたスタッフの方が声をかけてくれた。「いらっしゃいませ。どの映画を見にこられたんですか?」と言い障害者用の窓口まで案内してくれた。僕は電光掲示板に目線を送り、「AIが見たい!」と訴えた。スタッフの方は僕の反応と上映時間をチェックしながら「この時間だと、AIですかね?」と察してくれた。思いがすんなりと通じたことがとても嬉しかった。支配人の方も出てきてくれて、「トイレの介助もしますので、気軽に言ってくださいね」と声をかけてくれた。そんな対応をしてくれたのは初めてだったのでとても有難かった。お言葉に甘えて上映前にトイレにも行かせてもらった。当時から109シネマは僕たち障害のある人に対してのケアがしっかりしていたと思う。館内までスタッフの方が付き添ってくれて車イス席へ案内してくれた。しかし案内されたのはスクリーンの真ん前で、映画は見上げるように見ることになった。車イス席の位置はもう少し配慮してもらえないかなと今でも思う。

 

映画を見終えて、僕はスターバックスコーヒーに向かった。スタバに行くのは初めてだったけどいつもの「何とかなるさ」の気持ちだ。カウンターに着くと店員さんが「いらっしゃいませ。ご注文は?」というので僕は「モカ!」と声に出して伝えた。しかし僕の言葉は聞き取りにくいので分かってもらえない。そこで、僕は車椅子の横ポケットにアンコウ、文字盤、説明書があることを、目線で必死に訴えた。すると店員さんがそれに気づいてくれて説明書を読みながらアンコウを頭にセットしてくれた。しかし文字盤の出し方が違った。顔に向けて垂直にして欲しいのに、地面と平行に出してきたのだ。この間違いはよくあることなので、仕方ないかと思い文字盤で「も」「か」と伝えた。「モカ」がなにかわからないけれど、メニューを見て一番短い名前だったので注文した。

「ホット?アイス?サイズは?ここで飲みますか?」などの注文は声と頷きで返してなんとかオーダーは出来た。しばらく待っていると「アイスカフェモカ、トールサイズ」が届いた。よくわからず注文したけれど、想像していた大きさのものが届いてホッとした。ここは日本なので、大きさぐらいは日本語にして欲しいと思った。席に案内されると店員さんは「お手伝いしましょうか?」と言ってくれた。僕は頷き店員さんの介助で美味しくコーヒーを楽しむことが出来た。

 

父はホームセンターに行ったまま、僕を迎えにくること無く帰ったようだ。帰路は僕一人だった。ちょっと冒険したかったので、行きの道とは違うルートで帰ってみた。特に問題もなく家に着くと、すでに帰っていた父は「おかえり」と普通に迎えた。僕はそこそこの達成感があったのだが。

 

それから僕は月に2回ぐらいは一人で映画を楽しめるようになった。

 

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