家出をして3日目、彼女はお金が減ってきましたから、家へ戻ることも考え始めました。ただ、母親に啖呵を切って家を出ましたから、今さら詫びを入れて家の門をくぐる気持ちにはなれませんでした。そして行く当てもなく繁華街を歩いていると、水商売のスカウトから声をかけられました。
「彼女、きれいだね。どこかのプロダクションとか入ってるの?入ってなければキャバクラで働いてみない?時給高いし、日払いもOK。エッチなお店じゃないし、家が遠ければ寮もあるから、お金もためられるよ」
髪の毛を茶色に染めたスカウトマンは、薄笑いを浮かべながらなれなれしい口調で話しかけてきました。彼女はスカウトマンに尋ねました。「時給はいくらもらえるんですか。そして寮には今すぐに入れるんですか」
彼女の反応にスカウトマンは本腰を入れて話しました。それは今までの経験から“これはいける!”と感じたからです。
「時給は3000円、寮は4人部屋ならすぐには入れるけど、個室は少し時間がかかるよ。どうしたの彼女、家出でもしてきたの?」
スカウトマンはこちらの腹を見透かしたようにそう言うと、彼女を近くのお店まで連れて行きました。お金が無くなってきて、泊るところもない彼女にとって、この話は“渡りに船”でした。20歳になってお酒も飲めます。彼女は勤め先のお店でスカウトから給料の仕組みや仕事内容、寮費の説明を受けると、半分は投げやりに「それじゃあ、今日からお願いしようかな」そう返事をしたのです。そして彼女にとって生まれて初めての仕事が始まりました。
彼女は今までにアルバイトもしたことはありませんでしたが、お店ではお客さんの隣に座って、お酒を作って、話し相手をするだけでしたから、何とか仕事は勤まりました。お酒の作り方やお店のルール、そして接客のポイントや酔っ払いやエッチな客への対応は、寮の先輩やお店で教わりました。彼女は決して話が上手いわけではなく接客も慣れていませんでしたが、20歳と若くていかにも女子大生といった感じが受けて、半月もすると指名客が付くようになったのです。そして働き始めて1か月後に、4人部屋の寮費の3万円を引いても約40万円の現金を手にしたのです。
初めてもらったお給料では、それまで借りていた洋服や化粧品をたくさん買いました。それでも手元にはまだ半分以上もお給料が残りました。さらに仕事と続けているうちにお客さんから高価なブランド品をプレゼントされたり、食事に誘われたりして、今まで経験したことも無い水商売の魅力を感じていったのです。彼女は本来は真面目な性格ですから、お店が休みの日曜日以外は毎日出勤して、お金をためていきました。そして寮に住んでから1年で、ためたお金で自分でマンションを借りてそこに住まうようになりました。
彼女は家族のことを考えない日はありませんでした。しかし、お店の信用が付いて給料は毎月100万円近くも稼ぐようになりました。そしてお客さんからも口説かれて楽しく暮らしていくうちに、徐々に夜の世界へハマって行ったのです。そしてお金に余裕が出来てくると、仕事の帰りにホストクラブへ寄ってストレスを発散するようになりました。ホストクラブでは若い男性たちが皆、彼女にひざまずきました。そして誰もが彼女の美しさや賢さを褒めたたえてくれました。それは子供のころからずっと自己否定されて生きてきた彼女に、言いようのない喜びと心地よさを与えてくれたのです。そして気が付けば、いつしかホストクラブに借金してまで遊びに行くようになってしまったのです。それはもう完全に“中毒状態”でした。麻薬中毒者が薬の気持ち良さに我を忘れて溺れていくように、人生で初めて自分を認めてくれたホストクラブは彼女にとって切り離すことのできない世界へなっていったのです。(4)へ続く
2022年9月1日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店(アマゾン・楽天など)で、シュンさんの本が発売(商業出版)になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。
■書名
霊界が教えてくれる
この世で幸福になる方法
■著者:霊能者SHUN(シュン)
■四六判248頁
■定価1650円(本体1500円+税10%)
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章:地球の誕生と人類の出現
第一章:霊界の存在とその仕組み
第二章:人の縁の不思議
第三章:心霊スポットが危険な理由
第四章:霊障は理不尽なもの
第五章:先祖と私たち
第六章:この世の上手な過ごし方


