第１５５０回　しっぺ返し（１）

　今日まで因縁に関わる長い祈祷や健康問題でも祈祷を頼まれていました。私は病気快癒や健康問題で祈祷を頼まれたときは、今までは「薬師如来」と「観音菩薩」に祈願していました。今回はそれに加えて「大国主命」と「少名彦命」にも祈願しましたが、手ごたえは非常に良かったです。神様は「戦の神様」「恋愛の神様」など、それぞれ専門分野があります。さらにはすべてに対応できるオールマイティーな神様もいます。皆さんも神様に祈願するときには、ちゃんと由来を調べて、その神様に合った祈願をするようにしてください。たとえば戦の神様の神社に恋人同士で出かけて、「二人が将来幸せな家庭を築けますように」と願っても、喧嘩が始まるのは見えています。恋愛の祈願なら恋愛の神様にお願いした方が良いのは当たり前です。

　今回は祈祷が続いている中で、いくつか“緊急の除霊”を頼まれました。霊に憑依されたことで、急に体調を崩したり、痛みや不安が広がって外へ出られなくなるようなケースが時々あります。強く霊障が出ているようなケースでは、”古いもの・強いもの・悪いもの“が憑依していることが多いので、その影響が強く出てしまいます。除霊では私はそういった不浄霊と戦いながら剥がしていきますが、その作業が終わった後で、私に”しっぺ返し“が返ってくることがたまにあります。

　今回はもう２０年ぐらい前から、家族ぐるみで相談している方から除霊の依頼が入りました。もう、社会人になっているお嬢さんの除霊をしてほしいというのです。私はそのお嬢さんが小学生のころから知っています。ですから私にしてみれば、”親戚の子ども“のように大切なお子さんです。そしてこのお嬢さんは何度か不浄霊とつながってしまったことで、今では”霊的な間口“が広くなっています。そのためしばしば霊や念の影響を受けてその都度、対応しています。今回はお父さんからの除霊の依頼でしたが、きっとご家族も心配するような厳しい状況になっていたのでしょう。

　私は本人からの電話を受けてすぐに遠隔除霊に入りました。今までに何回も遠隔除霊はしてきたので、いつものように静かにスタートしました。今回の不浄霊の影響はフィジカルやメンタルにも出ていましましたので、その方面に有効なマントラを用意していました。そして霊に対抗するマントラをいつものように入れていったのですが、１０分もしないうちに、電話の向こうからはお嬢さんの泣き声が聞こえてきました。

“まずいな”

　その瞬間、私は一気に緊張しました。泣いているのは除霊をしている本人ではなく、憑依している不浄霊の泣き声なのです。この不浄霊が自分が死んだいきさつを悲しみ、死んでもなお苦しんでいる今を悲しみ、そして上手く憑依したお嬢さんから祓われようとしている現状を悲しんで泣き叫んでいるのです。ですからこの状況は本人にも止められません。自分の身体なのに自分の意思で動かすことが出来なくなっています。それだけガッチリと憑依されているのです。こういったケースでは、霊的な波長が近いことに加えて、年齢・性別・容姿・悩みの状況などが憑依した不浄霊と一致していることが多くあります。そうなるとガッチリ憑依されて、簡単には離れなくなるのです。私は自分のパワーを全開にして、全力で不浄霊と戦いました。この瞬間、マントラは用意していたものではなく、強力に霊に対抗できる強いお経へ切り替えました。

「おのれのいる場所へ帰れ！」「速やかに退散しろ！」「この娘からすぐに離れろ！」

私の大声が部屋の中にこだまするたびに、お嬢さんからは「嫌だ！」「嫌だ！」「嫌だ！」という怒鳴り声が返ってきます。これは本人の言葉ではなく、憑いている不浄霊の断末魔の叫びです。

　本人も苦しみながら必死で戦っています。私もここで負けるわけにはいかないのです。そんな状態がしばらく続いた後、急に電話の向こうが静かになりました。話し声はおろか、物音ひとつしなくなりました。もちろん霊の息遣いさえ聞こえなくなったのです。（２）へ続く。

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