第１４３２回　つながる瞬間（３）

　それは人の死に際して、或いは霊体（幽霊）と“目が合った瞬間”です。こういったケースは過去に何度もありました。以前、海辺で「ライフガード」をしている人から連絡が入りました。ある日、海水浴場の遊泳エリアを泳いでいた人が、その沖へ出て行きました。その日の沖合は波が高くて危険なため、注意して監視していたところ、案の定、波にのまれて溺れだしました。すぐにレスキューボードを出して救助へ向かい、ボードへ載せて溺れた男性を浜に引き上げました。するとそれまで意識のあった男性は、安心したのか救助された後に意識を失いました。そのときその男性は、何かを伝えようと必死で目を見開いて、このライフガードを見つめました。しかし、口は動きましたが何も言葉を発することなく、ライフガードを見つめたまま意識を失ったのです。すぐに浜辺で人工呼吸が始まり、救急車も到着しました。溺れた男性は直ちに病院へ運ばれましたが、肺に海水が入っていて肺炎を起こしてそのまま亡くなってしまったのです。

　それからすぐにライフガードには異変が続きました。まず、男性が亡くなった夜に、金縛りに遭って死んだ男性が夢に出てきました。そして口惜しそうにこちらを睨んだまま、口を動かしているのです。声にならない言葉を発しながら、こちらを見続けていた男性の目が、ライフガードの脳裏に焼き付きました。それから毎晩溺れた男性が夢枕に立って金縛りが続いたのです。そして堪えられなくなって人づてに私のことを聞いて連絡してきたのです。私から見ると、明らかに亡くなった男性がライフガードに憑いていました。年齢が近く見た目も似ているライフガードに救いを求めて憑依したのです。困ったことに二人の霊的波長もとても近かったのです。

　他にも同様のケースはあります。以前、電車の運転手が、人が電車に飛び込んで自殺をするときに、電車にぶつかる瞬間に「しばしば目が合うことがある」と話していました。人によっては死の瞬間に笑って電車に飛び込んだ人もいるそうです。そんな自殺者と目が合ってしまうと、その顔や表情は確実に脳裏に刻み込まれます。そしてもし、その自殺者と霊的な波長が近ければ、まず確実に憑依されることになります。目が合った瞬間に入り込んでしまうのです。

　また別の形で目が合って憑依されることもあります。今の話は溺れて死んだ人も自殺した人も目が合った瞬間は生きていました。死を目前にして目が合ったことで憑依を受けたのです。しかし以前、このブログで紹介したように、すでに死んでいる“霊”と目が合った瞬間に憑依されたケースもあります。その女性はマンションの高層階に住んでいました。深夜に家の外で”ドカン“と言う大きな物音が毎晩のように聞こえるのです。「誰かが屋上から物を投げているのか…」それにしては深夜に物を捨てるのもおかしいと思い、その時間に窓の外を見張っていました。すると白い服を着た女性が頭から真っ逆さまになって地面へ向かって落下して行きました。そして地面に接地した瞬間に大きな物音と共に周囲に血が飛び散りました。首から上は鮮血の中でミンチのようにぐしゃぐしゃに崩れていました。白い服と真っ赤な鮮血が強烈なコントラストを作り出していました。

　このときこの女性は思わず目そむけました。そしてすぐにベッドへ潜り込みました。そしてこのことは“悪い夢でも見たと思って”忘れようと努めました。しかし、深夜に響く室外での爆音は、その後も続いたのです。そのためこのことをマンションの管理人に何気なく話しましたが、深夜の”ドカン“と言う騒音の苦情はどの部屋の住人からも入っていませんでした。この音を聞いていたのはこの女性だけだったのです。（３）へ続く。

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