第１４２７回　今の自分にできること

“今の自分にできることを誠実に実行する”

これは私が毎日自分に言い聞かせていることです。私には毎日たくさんの相談や除霊、そしてさまざまな問題を解決するための”祈祷”の依頼などが寄せられています。皆さん、真剣に悩んでいるから相談してきますし、苦しい状況にあれば“一刻も早く解決したい”と思います。ですから私もできるだけ早く対応したいと思っているのですが、依頼が重複すれば回答するまでお待たせしてしまうこともあります。そして「早く返事をいただきたい」とか「まだお時間かかりますでしょうか」と言われれば、私の気持ちも焦ってきます。だからこそ、この言葉を自分に言い聞かせているのです。

　どれだけ焦っても頑張っても自分一人にできることには限度があります。その中で気持ちだけ焦っても、良いパフォーマンスは見せられませんし。却って集中力を失って、答えが浮かんでこなくなることもあります。私にできることは背伸びをしても増えません。元々1日にこなせる仕事量は限られているのですから、その中で精一杯の対応をすることしか人間はできないのです。そして、できないことまで頑張ってやろうとしても、結果としてできないわけですから、できない自分を意識して、落ち込んだり、凹んだりすることになります。それは自分の意識を悪くします。ですから「できないことはやろうとせずに、できること（だけを）誠実に実行していけばよい」と思っています。調子が良い時も悪い時も、体調が良い時も悪い時も、気分が良い時も何かにイライラしているときも、（その時の状態の）”今の自分”にできることをしっかりと実行するのです。その繰り返しが、結果として人生を形作っていきます。

　なぜ、こんなことを書いたのか。実は古くから知り合いの心療内科の医師が、雑誌のコラムで「大谷翔平君」の活躍について書いていました。その医師は、大谷君の素晴らしさについて、「実力以上でも以下でもなく、今の自分の力を冷静に分析することができています。今の自分の実力で、どんなパフォーマンスができるのか、ちゃんと把握しています。その中で最大限の努力をして、最高のパフォーマンスを見せています。まさにプロの仕事をしています」と述べていました。大谷君の今年の活躍の中でも話題になった“５０－５０”について言えば、これは100年を越えるアメリカメジャーリーグの歴史の中で誰も達成できなかった記録です。“５０－５０”とは、50本以上のホームランと50以上の盗塁をした選手のことです。これを1シーズンで成し遂げた人はいません。ホームランを打つ選手は、パワーがある人が多く、足の速い人はあまりいないのです。逆に盗塁を数多くできる選手は、スピードはありますがパワーは無い人が多いので、ホームランを大量に打つことはできません。このパワーとスピードを兼ね備えた選手が、この“５０－５０”達成できるのです。大谷君は今シーズン、54本のホームランと59回の盗塁を成功させたのです。しかも昨年までエンゼルスで6年を過ごした大谷君の打者としての最高記録は、打率3割4厘（2023年）、ホームラン46本（2021年）、盗塁26回（2021年）となっています。今シーズン打率も3割1分を打った大谷君はすべて今までの自己記録を更新しています。

　昨シーズンまで、投手と打者を掛け持ちしていた大谷君は肘を怪我したために、昨シーズンの途中からリハビリのために試合を休んでいました。今シーズンが開幕して、肘に負担のかかる投手を封印して打者に専念していたシーズンだったのです。今シーズン、投球のできなくなった大谷君は、今の自分が何をしたらチームに貢献できるのかをきっと考えたはずです。その結果、「走ることなら肘に負担をかけない」と考えて、開幕前から盗塁の練習に重点を置いていました。だから今まで1シーズンで26個の盗塁が最高だった選手が、いきなり59個の盗塁を成功させたのです。これは今お話ししたこととまったく同じ考え方です。どんな状況にあっても腐ったり、凹んだりするのではなく、その状況の中で今の自分に何ができるのかを考えて、そこにできる限りの努力を結集する。生産的、建設的に充実した人生を生きようと思う時、結局はこれに尽きるのだと思います。

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