第１４２２回　最期の迎え方

　先日、末期がんの患者さんを中心にたくさんの方の最期を看取ってきた医師が、“人の安らかな最期”について語っている本を出版しました。私もこの仕事を４０年以上やってきた中で、数多くの人の最期に接してきました。この医師の考え方を紹介しながら、“安らかな最期”について考えてみたいと思います。この先生が言うには、末期がんでもう回復の可能性が無くなっても、医者は患者さんや家族から「見捨てるのか」「あきらめろと言うのか」と、非難されかねないからなかなか本当のことを言わないと言います。本当のこととは、もう治療しても無理だという現実です。それでも「まだ、治療の余地があります」とか、「何とか別の方法を試してみましょう」と言って本人や家族を励ましてしまうというのです。そしてこういうことが患者や家族に大きな苦痛を与えて、苦しみの中で人生を終わらせることになると話しています。

　確かにがん患者が受ける治療は本人に大きな苦痛を与えます。私は自分の父親も他の身内もガンで亡くしています。私の父親は海軍兵学校を出た元海軍士官でとても強い人でしたが、１年以上にわたって入院しながらがん治療を続ける中で、「もう、殺してくれ」と言ったことがありました。当時は“緩和ケア”という考えは一般的ではなく、患者に苦痛を強いるものでも“出来る限り長く命をつなぐこと”が治療の目的になっていました。

　この先生は、死んで行くがん患者に必要な医療とは、“痛みをコントロールするための医療用麻薬の使用だ”と言い切っています。それはモルヒネが主ですが、他にも人工麻薬の「フェンタニル」や「オキシコドン」などもあります。それを飲み薬や持続注射、座薬や貼り薬という形で、患者さんの状態によって使い分けて使用します。“麻薬”というと、中毒や副作用を恐れる人もいますが、死んで行く人に中毒を心配するのはナンセンスですし、使用量を間違えなければ、副作用で命を縮めることもないと話しています。まれに「医療用麻薬を使ったら、すぐに死んだ」という人がいます。ただ、それはこの医師によると、麻薬の副作用で亡くなったのではなく、麻薬を忌避するあまり、亡くなるギリギリまで使わずにいたため、使ったらすぐに亡くなったように見えただけだと言います。この医師は、「麻薬は怖い」という思い込みで、「末期がんの痛みに苦しんでいる患者さんを我慢させるほど、愚かで残酷なことはない」と話しています。そして、もし自分ががんになって最期を迎えることになったら、「早々に医療用麻薬を開始してもらって、麻薬の効いた安楽な“朦朧状態”の中でこの世とお別れしたい」と語っています。

　私は今年に入り、乳がんのステージ４になった妻の病気快癒の祈祷を頼まれました。それは半年以上、毎日行う厳しいものでした。奥さんは当初は乳がんに加えてB型肝炎の検査でも陽性になり、乳がんはリンパ節にも転移していて治療へ入ることもできない絶望的な状況でした。祈祷を始めてからB型肝炎は“偽陽性”になりました。そして無事に抗がん剤治療を終えて、HER2という遺伝子治療も終えて、半年かけて癌細胞を縮小させて、手術で切除可能なところまで前進できました。これから予定通り、癌細胞の切除手術へ入ります。そして“必ず寛解して完全に治癒できる”　と私は確信しています。ガン治療について、この先生が言うように、回復の可能性が無く、ただ、痛みや苦痛だけを患者へ強いるものであれば、治療の名のもとにそれを行うことには賛成できません。しかし、回復する一縷の望みがあるなら、その可能性に賭けて命をつないで欲しいという本人や家族の気持ちはよく分かります。私の仕事は依頼者の気持ちを後押しすることですから、ご家族がどちらの未来を選択しても、その思いを後押しします。そのために神仏の力を借りて全力で祈祷を続けます。

【２０２２年９月１日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店（アマゾン・楽天など）で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。