第１３７３回　霊とつながるということ（２）

　もうかなり前のことですが、交通事故の加害者から私に連絡が入りました。それは四国の片側二車線のバイパスで起きた事故でした。加害者の男性はまっすぐな直線の道で乗用車を運転していました。彼は運転しながら、自分の走行する車線の左側車線の斜め後ろにバイクが走っていることをミラーで確認していました。バイクも自分の車も見通しの良い直線道路ですから、競うようにかなりスピードを出していました。そして信号もない真っすぐな道で突然ハンドルを左に切りました。車はまるでわざとバイクにぶつけるように、バイクの目の前に入ったのです。バイクは急に目の前に現れた乗用車を避けることが出来ずに追突しました。ライダーは何十メートルも跳ね飛ばされて地面に激突しました。ライダーは即死しました。

　事故の原因は乗用車のスピード違反と無謀は運転とされました。当時はまだ「危険運転致死罪」はありませんでしたが、今でいう「過失運転致死罪」で、禁固２年の実刑判決を受けたのです。そして相談者は交通刑務所に収監され、２年の刑期を終えて釈放されました。つまり、刑事上の罪は償ったのですが、この事故が自分ではどうしても納得ができませんでした。この日は会社で嫌なことがあってイライラしながら家路を急いでいました。斜め後ろを付いてくるバイクが気になっていましたが、だからと言ってまっすぐな直線道路でハンドルを急に左に切った理由が自分でも分からないのです。事故当時このバイパス上には、自分の車と被害者のバイクしか走っていませんでした。事故の実況見分にも立ち会い、自分の車がバイクの目の前に割り込んだことは明らかでした。でも、その瞬間のことが依頼者の記憶から抜けていたのです。そこで自分の罪を軽くするためではなく、あのとき何が起きたのか本当のことを知りたくて私に霊視鑑定を依頼してきたのです。

　私は依頼を受けて相談者と一緒に事故現場まで足を運びました。田舎の山の中を通るバイパスで長い直線が続いています。一見すると事故が起こるような場所ではありません。私は事故現場に佇みながら、事故の時間に意識を集中していきました。すると目の前にハンドルを握る依頼者が浮かんできました。その車の斜め後ろにはバイクが付いています。その状況がしばらく続き、依頼者はかなり苛立っています。そして苛立ちがピークを迎えた瞬間、依頼者が握るハンドルの上に、小学校高学年の男の子が現れました。そしてその男の子は、ハンドルの上に乗って思いっきりそれを左へ回しました。車は急ハンドルを切って左車線に入りました。バイクは慌てて急ブレーキをかけますが、斜めに滑りながら車の左後ろに激突してライダーが宙に舞いました。私は事故現場を歩きながら、最初にバイクがぶつかった場所、バイクのミラーが飛んでバイクが横滑りした場所、ライダーが落ちてきた場所を依頼者に説明しました。そして私が話した内容は、すべて事故の実況見分調書に書かれた内容と一致したのです。

　「納得がいきました」

私の話を聞いた依頼者は、そう言うと事故現場に立ち止まったまま、体を震わせていました。今まで何人か霊能者に事故の状況を観てもらいましたが、実況見分調書と内容が一致した回答はありませんでした。（３）へ続く。

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