第１３６５回　祈祷

　最近、かなり重病の方のご家族から「病気快癒の祈祷」を頼まれることが多くあります。“皆さんの未来が良くなるように”或いは“願いが叶うように”祈祷したり、パワーを送ることは以前から行っていました。たとえば野球の試合では野手の前へ飛んだ打球が、5センチ左右へ飛んでいれば、ヒットになりますし、その逆はアウトになります。同じようにサッカーでもバスケットボールでも、ゴールが決まるのかどうかは、5センチボールがずれたことで変わってしまいます。入学試験の問題では、たまたま自分が得意の単元から多く出題されれば点数は上がりますが、苦手な単元から出題されれば点数は取れません。入社試験の面接でも、面接を担当した社員が自分に波長の近い人であれば、こちらの考えを好意的に受け取ってプラス評価してくれます。逆に波長の合わない人が面接官になれば、自分の真意をストレートに感じ取れずにディフォルメして、マイナス評価が下されます。ピアニストやバイオリニストが本番で最高の演奏ができるのか、不満足な結果に終わってしまうのか、それは数字では表せない指先の微妙な感覚で決まります。このようにスポーツの試合でも、芸術の世界でも、入試や入社試験でも、良い結果が出るのか悪い結界になるのかは、多くの場合、微妙なところで決まっています。ですからその微妙な部分が、自分にとって有利に傾くように私に“力を貸してほしい”と頼んでくる人が多いのです。

　私はそれに対して、全力でパワーを送って気持ちを安定させたり、自信を持たせたりします。時にはシュートの瞬間に大きな力が発揮できるように得点のイメージを送ります。試験でもスポーツでも演奏でも、その場所とその状況をリアルにイメージして、その空間に自分が入り込んだつもりで力を送っていきます。そして上手くいっている状況を何度も繰り返して頭の中に描き続けていきます。そうすることで未来がそのように動いてくれることがあるのです。

　病気快癒の祈祷でも以前はそのように自分のイメージとパワーを使って思い描いた未来を実現するように努めていました。言い方を変えると“潜在意識”を活用して、良い未来を作って行ったのです。ただ、最近では別の方法を使っています。あるとき、いつものように病院の近くに止めた車の中から、入院している患者さんへパワーを送っていました。そのとき目の前に“薬師如来像”が浮かんだのです。薬師如来は病気治癒や健康長寿など医薬を司る仏様です。難しい病気になって、病院の治療もなかなか効果が出ずに何日間も苦しんでいる患者さんがいます。その人の病気治癒を念じていた時に薬師如来像が浮かんだことは、私にとって大きな力になりました。そしてそのあと患者さんは、医師も驚くような回復をして見事に病気快癒されたのです。そのことは私にとっても大きな“契機”になりました。自分の力を信じて潜在意識を活用することはとても“理にかなった”祈祷の方法です。しかし、神仏の力は私たち人間のレベルをはるかに超越するものですから、仏様にお願いして病気快癒を願うことも有効であることに気づいたのです。

　私はすぐに薬師如来像と観世音菩薩像を購入して、その姿を頭に焼き付けました。観世音菩薩は、病気平癒をはじめ、苦難除去、厄除けなど幅広い御利益のある仏様です。そして病気快癒を願う時は、心に刻み込んだお二人の仏様に、対象となる方の氏名と生年月日を告げて、一日も早く病気が完治するように、そしてこの人に笑顔が戻るように、その場面をイメージしながら祈祷をしています。今、最も長い祈祷は約4か月間毎日続けています。今日も築地の国立病院まで行ってきました。他にも未だ、病気快癒に至っていない人については、時間がある時にはできる限り祈っています。祈祷の効果はすぐに劇的に出ることもあれば、時間がかかることもあります。ただ、ご本人やご家族の不安や苦しみを考えると、時間があれば自然と手を合わせたくなります。そして一刻も早く完治されることを祈らずにはいられません。

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