第１３５６回　空き家

先日、ある地方の山間部にある空き家へ行ってきました。山間部と言っても電車の駅から、車で15分ほどの距離にあります。駅の周りには、まばらですが生活用品のお店が建てられて飲食店もあります。“山奥のポツンと一軒家”ではありませんから、ここに住んで生活することもできるでしょう。実際にこの家には約10年前までお婆さんが一人で住んでいました。元々は家族で住んでいた家ですが、子供は成長してこの家を離れました。ご主人が亡くなった後は、お婆さんが一人暮らしをしていましたが、お婆さんは10年前に体を悪くして施設へ入り、そこで亡くなりました。そのあと本来なら子供たちがこの家と土地は相続します。しかしこの家の場合、家を建てた時にお金を借りていたため、この家も土地も共有持ち分を持っている人がいます。そしてその人もすでに亡くなっています。お爺さんが亡くなったときにも相続では揉めましたが、それから程なくしてお婆さんが施設へ入ったために、家はそのまま放置されて子供が相続することもできずにずっと空き家のままになっているのです。

　この家の息子さんは、大人になるまではこの家で暮らしていました。子供からすれば自分が生まれ育って実家ですから、たまに家を訪れては窓を開けて喚起をしながら遺品の整理なども行っていたのです。ただ、息子さんは特にこの数年間、この家に来るたびに違和感を感じていました。閉めていた部屋のドアが突然開いたり、コンセントを抜いているテレビの画面が一瞬明るくなったり、廊下を歩く人の足音が聞こえたり、台所の食器が床に落ちて割れたり、この家に来れば必ず不思議な現象に遭遇していました。そして家に入るたびに、家の匂いとも違う何とも言えぬ悪臭が充満していました。そのためこの家に何か霊的な問題があるのかどうか。そして問題があるならそれを解決するために私にこの家へ来るようにを頼んできたのです。

　私はこの家が視界に入ったときから、霊の影響があることは感じていました。それはかなり数多くの不浄霊がこの家の中にも外にも渦巻いているのがハッキリと見えたからです。ただ家の周囲の土地にもこの家の敷地内にも地縛霊など悪霊がいる感じはしません。そこでこれだけ数多い不浄霊が取り巻いていますから、この家の人間や先祖に何か、相当強く人を恨んだり恨まれたりしている因縁があるのではないかと考えました。しかし今、目の前にいるこの家の息子さんから、それほど強い因縁は何も感じません。もし、ご先祖に問題があってその因縁を背負い込んでいる家系なら、息子さんにもその影響は出ているはずです。そこで息子さんに家族の状況をうかがいましたが、皆さん普通に幸せに暮らしています。親族の中に事故で早死にした人や自殺や事件で亡くなった人もいません。この家の家族・親族はいたって普通に暮らしているのです。この家の問題は数多い不浄霊によって引き起こされていますが、その原因に見当がつかなかったのです。

　原因が不明ではこの問題をきちんと解決することができません。そこでこの家の中を隅々まで確認しながら歩いてみました。元凶となっているもの（霊）がいれば感じられる強い恨みや憎しみの念も感じられません。ただ、感じるのは長い間、この家に住んでいた人たちが出していた霊ハク（悲しみや怒りなど、人のネガティブな思いの塊）の重さだけでした。

～霊ハクの力だけで、これだけ多くの不浄霊を呼び込むことができるのだろうか～

　人と人も霊と霊も霊的な波長が近いとお互いに引き付け合って相手を呼び込みます。心霊スポットは、そうやって不浄霊が溜まって形作られていったのです。空き家はいつも薄暗く、換気もされていないためジメジメしています。それはまさに不浄霊が好む環境です。そしてその重たい空気がこの家にはもう10年も滞留し続けています。そうなると始まりは普通の家族の住んでいた普通の家に残る“軽い霊ハク”だったとしても、それに引き寄せられてきた不浄霊が勝手に膨らんでこの心霊スポットのような空き家を作り出した可能性もあるのです。

　皆さんも、もし空き家を所有しているなら、頻繁に窓を開けて空気の入れ替えを行ってください。薄暗いジメジメした重たい空気を長期間にわたって滞留させると、気が付いたときに家の様子がガラッと変わってしまうこともあるからです。

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