第１３４１回　刺激かやすらぎか（２）

　私は静かに答えました。「彼はまだ、遊んでいるのが楽しいのです。年齢を重ねてもう少し広い視野で物事を観えるようになると、あなたが自分の人生にとってどれだけ大切な存在なのか理解するようになります。しかし、まだ遊びが楽しい彼からすると、仕事をするのも遊びの軍資金を得るためのものです。そして遊びが楽しい彼は“刺激の強い方へ流されますから、あなたの存在を認識していても、男同士で遊ぶその場の勢いで、今日初めて会った新鮮な女性の方へ流されています」

　彼女は納得が行かないように私に尋ねてきました。

「それは分かりますけど、ズルくないですか？自分だけ女の子と遊んで私には家のことや会社の手伝いをさせています。」

「だからあなたにはゴルフや仕事だと言って嘘をついているのでしょう」

　人は若いころには特に安定よりも刺激を求める傾向があります。そして刺激には急速に慣れていきます。そうなるとさらに強い刺激を求めるようになります。たとえばお酒を飲めなかった人が、二十歳になって初めてお酒を口にします。最初は恐る恐るビールやサワーを飲んでいます。しかし、それに慣れてくると、やがてワインやウイスキーを頼むようになり、さらに進むと、日本酒やウォッカ、テキーラをぐいぐい飲み干すようになっていきます。タバコも同じです。最初はニコチンの少ない軽いタバコとを吸っていた人が、やがて強いタバコを平気で吸うようになります。ギャンブルでも最初はドキドキしながら５千円を賭けていた人が、慣れてくると平気で５万円を賭けるようになります。人は一つの刺激に慣れるとその上を求めるようになります。それは女性に対しても同じです。せっかく素晴らしいパートナーと出会っているのに、次の刺激を求めて浮気をした結果、肝心のパートナーを失うことになる人がしばしばいます。

　「彼氏が目の前の刺激ではなく、本当に大切な人生のパートナーをきちんと選べるようになるにはまだ数年はかかるでしょう」

　「………」

私の言葉を聞いて相談者に黙りました。「人は、いろいろな人と出会いや別れを経験して、傷ついたり傷つけたりしながら、どういう相手と付き合うことが自分を幸せにするのかを理解していきます。そういう意味では二人が出会ったのは、少し早かったかもしれません」

　「………」

「彼から見た時に、５年も一緒に暮らしてきたあなたは、新鮮ではありません。ですからそういう刺激を彼に与えることはできません。しかし、あなたは仕事でも家でも彼の人生をサポートしてきました。彼から見ても、やすらぎや安心感を与えてくれる人は、刺激の強い女性には無い大切な存在になります。彼がもう少し深く人生を観れるようになれば、そのことに気が付くはずです。そして気が付いたときに彼は結婚する覚悟を決めるでしょう」

私はそう話しました。（３）へ続く。

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