尊富士は優勝を決めた前日の土曜日から、優勝に王手がかかっていました。13日目が終わった時点で優勝争いは尊富士が12勝1敗で独走して、以下は4敗力士の3人が後を追っていました。ですから14日目の相撲で尊富士が勝つことが出来れば、13勝を挙げて尊富士の優勝が決まります。しかし、この大一番の対戦相手は元大関の「朝乃山」です。元大関というのは実力が衰えて大関を陥落したのではなく、コロナの感染対策が実施されていた2021年5月場所中に、スポーツ紙記者と一緒に都内のキャバクラへ通っていたことが週刊誌で報道されて、6場所(1年間)の出場停止という処分を受けていたのです。相撲の世界では相撲で勝ち星を挙げられなければ地位はどんどん下がっていきます。6場所の出場停止ということは6場所すべてで1勝も挙げられなかったと判断されます。そのため朝乃山の地位は、大関から三段目まで落ちていたのです。処分が解けてそこから這い上がってきた朝乃山は、この時点で西前頭筆頭まで地位を戻していました。尊富士から見れば”格上“の相手になります。相撲が始まると、予想通りお互いに力を出した激しい相撲になりました。ただ、最後は得意の形に持ち込んで朝乃山が「寄り切り」で尊富士をやぶって勝利したのです。

 場内にいた観衆は、目の前で歴史が変わった瞬間を見られずに、誰もがため息をつきました。しかし、敗れてしゃがみこんだ尊富士はそこから立ち上がることが出来ずに、ため息は悲鳴に変わりました。この一番で尊富士に何かが起きたことは明らかです。何とか立ち上がって挨拶を済ませた尊富士は支度部屋へ戻るために花道に下りました。しかし、右足を床に付けることが出来ずに、付き人が肩を貸します。それでも歩くことができないで、すぐに車椅子が用意されました。そして車椅子に乗って退場することになったのです。この中継を見ていた誰もが、翌日の千秋楽に尊富士が出場することは不可能だと思いました。朝乃山戦で怪我をしたことは歴然でしたから、優勝も110年ぶりの記録もすべてが幻に終わってしまうと思ったのです。会場を後にして病院で検査をすると、右足首の靭帯が損傷していました。部屋に戻った尊富士も痛みが引かずに普通に歩くこともできません。「これではとても相撲どころではない」と本人がこの時の状態を振り返りました。そして親方へ「明日の相撲は取れないので、休場させてほしい」と言いに行ったのです。

 そのとき尊富士の元に部屋の横綱「照ノ富士」がやってきました。実は照ノ富士も大関時代に左ひざ半月板損傷の大怪我をして、序二段まで落ちたことがありました。そこから這い上がって横綱まで上り詰めていたのです。その横綱は、優勝を目前にして怪我をした尊富士に

「勝つか負けるかは問題じゃないんだ、休まずに相撲を取ることが大切なんだ。記録に残らなくても記憶に残る力士になれ。お前にはそれができる力がある」

 そういって励ましたのでした。その言葉を聞いて尊富士の心が動きました。そして奇跡が起こりました。「自分はまだできる」自然とそんな気持ちになった尊富士は、痛めた右足首をさすりました。すると嘘のように痛みが消えていたのです。自分でも「これはどうなっているか」と驚きました。そしてゆっくりと立ち上がると、自分の足で歩いて親方の元へ向かいました。そして親方に「足は動きます。どうか明日の相撲を取らせてください」と、言ったのです。

 千秋楽の大一番を前にして、誰もが尊富士の足を心配しました。「昨日、車椅子で退場した力士が、今日相撲を取ることができるのか」「まだ若いのだからここで無理をさせない方が良い」そんな声が聞かれる中、尊富士は怪我を感じさせない力強い相撲を取って、豪ノ山を押し倒しにやぶったのです。

“心頭滅却すれば火もまた涼し”という言葉があります。これは臨済宗の僧侶であった「快川紹喜(かいせんじょうき)」が、戦国時代に焼死する前に残した辞世の句とも言われています。「無念無想の境地に入れば、火でも涼しく感じる。つまり、いかなる苦痛も心の持ち方次第でしのぐことができる」という意味です。相撲でもそれを極める人たちになるとこの境地まで辿り着くことができるのでしょう。非常に珍しい話ですが、あり得ないことではないのです。

 

 

【2022年9月1日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店(アマゾン・楽天など)で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。

 

霊界が教えてくれるこの世で幸福になる方法


■書名

霊界が教えてくれる

この世で幸福になる方法

■著者:霊能者SHUN(シュン)

■四六判248頁

■定価1650円(本体1500円+税10%)

■ISBN978-4-341-08818-7

■発売 株式会社ごま書房新社

 

 目次

序章:地球の誕生と人類の出現

第一章:霊界の存在とその仕組み

第二章:人の縁の不思議

第三章:心霊スポットが危険な理由

第四章:霊障は理不尽なもの

第五章:先祖と私たち

第六章:この世の上手な過ごし方

 

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