第１３２８回　一瞬の油断

　私は仕事柄、除霊をしばしば頼まれます。不浄霊（＝成仏できていない霊）から憑依される感覚は、されたことのない人には分からないと思います。しかし、私のように霊的な間口が広くて、何度も憑依された経験を持つ人からすると、憑いた瞬間に「今、憑かれた」とか、ふとした瞬間に「やっぱり何か載っている」と、自分でも自覚ができるようになります。そして憑依された霊の祓い方ですが、それは霊能者によって大きく異なるようです。私の除霊のやり方は、若いころに年長の僧侶のところへ通って、時間をかけながら習得しました。霊的な感覚は生れながらに持っていましたが、除霊や浄霊の方法は若いころに学習して身に付けました。

　私の方法は、憑依された人に憑いている不浄霊を、憑依された人から抜くわけではありません。載っている不浄霊を私が吸い込んで、瞬時に私の頭から抜きます。そのためもし自分が不浄霊に憑依されてしまうと、それを自分で祓うことはできません。ですから私が憑依されたときは、友人の住職のところへ行って、そこで抜いてもらっています。

　私の方法は一瞬でも私が不浄霊を吸い込みますからリスクを伴います。吸い込んだ不浄霊を瞬時に頭から出さないと、その不浄霊に私が憑依されてしまうからです。実際、そういった失敗は過去に何度もあります。一番ひどかったのはこのサイトを立ち上げた２００３年だったと思います。ホームページを公開してまだ半年ぐらいだった時に、除霊中に私が吸い込んだ不浄霊がどうやっても抜けなくなってしまい、心身がやられてそれから約半年何もできなくなってしまったのです。そのため立ち上げたばかりのホームページでその事情を説明して、仕事は約半年間お休みしました。今思い出しても非常に嫌な思い出です。ただ、それからは除霊に際して、非常に慎重に取り組むようになって、ここまでひどい霊障は一度も受けていません。

　ただ、つい先ごろの遠隔除霊で、久しぶりに吐きそうになるような霊障を経験しました。除霊をしているときは、口ではマントラを唱えていますが、頭の中では常に不浄霊をつながっていて相手の状態を感じ取っています。除霊中、私は不浄霊に「今、憑いている人から離れて、早くあの世へ上がる道へ進みなさい」と諭していきます。輪廻転生のサイクルに乗って、来世で幸せに生きるために、早くあの世へ上がるように話していくのです。そしてそれと同時に不浄霊が嫌がる（効果的な）マントラは何か、頭の片隅で考えながら、次にどのお経を唱えるのかを探っています。そして私の思考が、お経を選ぶことに偏って、不浄霊から離れた瞬間に、私はその不浄霊を吸い込んでしまったのです。それは江戸時代の無宿人（当時の戸籍台帳である“宗門人別改帳から名前を外された者。住所不定の者）で、乞食のような身なりの浮浪者でした。汚れた着物を着た悪臭の漂う乞食のような不浄霊を吸い込んだ瞬間に、その不浄霊は私の喉に張り付いて離れなくなったのです。何度も大きく息を吸い込んだり吐いたりして、この不浄霊を出したかったのですが、この不浄霊は両手両足で私の喉で必死で踏ん張りながら、離れようとしないのです。悪臭のする汚れた浮浪者が自分の喉に張り付いている状況を想像してみてください。何度も吐きそうになり、息が出来なくて死ぬかと思いました。除霊を受けていた方も、もちろん私の異変には気づいていました。最終的にはこの不浄霊が私の体から抜けなくなる前に追い出すことが出来て抜いて事なきを得ました。ただ一瞬、私の意識が不浄霊から離れて、お経の選択へ動いた瞬間に、この危ない状態に追い込まれてしまったのです。私は決して油断をしたつもりはないのですが、不浄霊と対峙するときは、本当に一瞬でも気を抜くことはできないと改めて実感しました。

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