第１３１４回　嫉妬心（１）

　自分の知り合い（親族・友人など）が幸せになることをあなたはどう思いますか？単刀直入にこう質問すれば、「それは良かったですね。おめでとうございます。こう言って祝福します」と答える人がほとんどです。それは他人の幸せを素直に喜べない人は“人として問題があること”をよく分かっているからです。しかし最近、私に寄せられた相談の中では、嫉妬心や妬みの感情から人間関係が破綻したケースがいくつもあります。

　サッカーの大好きな小学５年生の息子さんが、小学校のチームをやめて、プロ傘下のクラブチームに移籍することになりました。たとえばよく知られている「東京ヴェルディ」というプロのトップチームがあります。このチームの下には、高校生を対象とした「東京ヴェルディ・ユースチーム」が編成されて、その下には中学生を対象として「東京ヴェルディ・ジュニアユースチーム」があり、一番下には小学校３年生から６年生までを対象とした「東京ヴェルディ・ジュニアチーム」があります。そしてそれぞれのチームには監督・コーチ・トレーナーがいて、サッカーの技術や戦術から体調管理までを指導しています。

　ですからもし、「真剣にサッカーに取り組みたい」と考えるなら、小学校のサッカーチームに所属するよりは、プロ傘下のクラブチームに所属した方が本人が伸びる可能性も高くなります。その一番の違いは、指導者の能力の違いです。小学校のサッカーチームの監督は、学生時代にサッカーを少しかじったとか、下手をすればサッカー好きの近所のおじさんが勤めていることもあります。それに対して「ユースチーム」にしろ「ジュニアチーム」にしろ、監督やコーチは高いレベルでのサッカー経験者であることはもちろん、指導者としての勉強をして、指導方法にも精通したプロの指導者（有資格者）たちです。プロチームは別にしても、学生チームでは指導者の能力が結果に直結します。高校野球でチームを甲子園で活躍させた名監督が、３年後には別のチームの監督に招聘されて無名チームを甲子園出場まで導いたようなケースがしばしばあります。一方で名監督の元、甲子園で活躍したチームは、監督が変わるとすぐに成績も伸びなくなって地方予選で敗退してしまうのです。つまり、小学生から高校生までの学生チームでは指導者の力がチーム全体の総合力や選手個々の力に大きく影響するのです。

　子供が一生懸命サッカーに取り組む姿勢を見れば、親なら誰でも子供をもっと伸ばせる環境に行かせてやりたいと思います。しかし、クラブチームに入るのは、選抜試験の他に費用もかかります。子供がまだ小学生では、試合や練習では子供を送り迎えするための車や時間も必要になります。そういった状況が許されない親から見ると、クラブチームに子供を入れた家を見て、素直に祝福する気持ちにはなれなかったのでしょう。

～小学校のチームではうちの子どもの方が上手かったのに・うちの子はレギュラーだったけど、お宅の子どもはいつもベンチだったくせに・旦那がちょっと稼ぎが良いからって・うちには事前に一言も教えてくれないのに自分だけ抜け駆けをして～

　そんな不満が心の中にくすぶっていれば、やがてそれは態度に出てきます。そしてついにはその不満は口をついて出てくるようになります。その時点でもう、親同士の関係は破綻します。同様の形で人間関係が壊れるケースは、たくさんあります。自分の子ども同士が同級生で、小学校・中学校と地元の公立校へ進み、仲の良かった親同士がいます。しかし、高校受験では嫌でも合格した高校によってランク分けされてしまいます。そんなときに難関校へ合格した友人の子どもと、下位の高校しか合格できなかった自分の子どもを比較して、「もう、お宅とはお付き合いできないわね」そういってお付き合いをやめてしまう親がいるのです。社内で昇格した同期に対して、「すごいよな、お前も来月から課長かあ、これからは敬語で話さないといけないな」そう言って付き合いを敬遠してしまう人がいるのです。（２）へ続く。

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