第１３０８回　迷い道

　今はとても便利な時代になりました。もうかなり以前から車には“カーナビ”が搭載されるようになりました。カーナビは地図の代わりに音声と画像で目的地までの行く先を案内してくれます。できたころは、カーナビの言う通りに走っていると、山林や海の中へ行かされるされることもありました。画面上ではあるはずのない道が目の前に現れることもありました。また、誤作動も多かったため、カーナビがあっても紙の地図は必需品でした。しかし、今は精度が上がり、ナビ搭載の車に地図を積んでいる人はほとんどいなくなりました。（私は霊障によってカーナビが誤作動されることがしばしばあるので車には紙の地図もいれています）

　同じようにスマホのナビゲーションも精度が上がっています。昨年も仕事で京都へ出かけた時に、JR「太秦駅」から、京福鉄道北野線の「撮影所前」駅まで歩くときに、わずか４～５分の距離で迷いそうになりました。それから住宅地の中で仕事先の目的地を探しましたが、結果的にはスマホの経路検索によって、現地まで辿り着くことができました。私が今、改めてナビの機能に感謝しているのは、以前なら１時間以上も迷うことが、ナビゲーションシステムのおかげでほとんど無くなったからです。

　以前は出張鑑定で知らない家や場所へ向かう時に、しばしば“対象となる不浄霊”の妨害に遭って、相手の方と会うことができなくなりました。当時はカーナビはしばしば誤作動するので電車で出かけました。駅を降りてから行く道は、家を出る前に調べてきています。調べた経路は画像を撮って携帯電話に保存していました。その画像を見ながら歩いているのに、目的地に全然着けないのです。そのたびに事務所に電話をしてスタッフに行き方を調べてもらったり、相手の方の携帯電話へ連絡を入れて道を教えてもらったりしました。ひどい時には、派出所を尋ねて警官に道を教えてもらいましたが、結果的には真逆の方向へ案内されました。そうやって３０分以上も行く先を探していると、だんだん心が折れていきます。探しているだけで気持ちは焦りますし、かなり疲れてしまうからです。それが不浄霊の“思うつぼだ”と分かっていても、お会いする前にもうぐったりしていますから、その日の出張鑑定は延期することになります。そんなことを最大８回繰り返した方もいました。

　こんな状況の中で何とか目的地に着くことができました。そのことに私も相談者も一安心はするのですが、そこからが苦労したこともありました。以前、うかがったお宅は、駅からはほぼ一直線で、曲がるところは２か所しかありません。その日は道路が込みそうなので電車で最寄り駅まで行って、そこから１０分ほどの距離を歩いて向かいました。行きは何ら問題なくスムーズにその家まで辿り着けました。無事に出張鑑定が終わって安心して駅へ向かって歩きましたが、４０分経っても駅が見えてこないのです。そこで周囲の街並みを確認すると、どうみても行きに見えた景色とは変わっているのです。「こんなお店あっただろうか…」「こんな道を渡っただろうか…」その連続で、私は完全に都会で迷子になりました。

　また、そんなときに限って道を歩いている人に出会いません。夜８時を回って住宅街のお店はすべて閉まっています。どうしたものかと考えていた時に、ちょうど反対車線を走るタクシーを発見しました。私は走ってタクシーを追いかけて、信号で止まったタクシーに乗ることができました。時計を見ると家を出てからすでに１時間半も経っていました。ちなみに道を迷っているときに目にした景色は、昔から夢の中にたびたび現れる薄気味の悪い風景です。きっと私と何か関係のある場所なのだと思います。今はどこかへ出かけるときは、行先の地名を入れれば行き方を教えてくれます。最近は道に迷うことは少なくなりました。

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