第１３０６回　怪現象（２）

　怪現象と言えば、私が中学生の頃に有名な事件がありました。それは音声による怪現象でしたが、私は問題になったラジオ放送を当時、直接聞いています。以前このブログで触れたかもしれませんが、もう一度、詳細をお話しいたします。私が中学生の頃は、“音楽”と言えば、フォークソングが全盛時代でした。「吉田拓郎さん」「井上陽水さん」「チューリップ」など、数多くのシンガー・ソングライターやフォークバンドが活躍していました。その中でも「南こうせつさん」「伊勢正三さん」「山田パンダさん」の「かぐや姫」の人気は絶大でした。かぐや姫は「神田川」「22才の別れ」「なごり雪」「妹」など、後に名曲と言われる数多くのヒット曲を出していました。そんな「かぐや姫」もやがて解散するときがきます。1975年4月12日に東京神田共立講堂で「かぐや姫」の解散コンサートが行われたのです。

そしてこの時のコンサートの模様を収録した音源は、この年の4月にスタートしたばかりのラジオ番組“南こうせつのオールナイトニッポン”で公開されました。1970年代は、若者の多くが深夜にオンエアされた「オールナイトニッポン」を聴いていました。この大人気のラジオ番組の中で、人気絶頂だった「かぐや姫」の解散コンサートの様子が公開されたのですから、数多くの若者がこの日の番組に聞き入っていました。　しかしこの注目の番組の中で、コンサートの様子が流されている中に、入るはずのない奇妙な言葉が混ざり込んでいたのです。それは誰にでもはっきりと聞き取れる声で、

「私にも聞かせて…」

女性のか弱い声で、こう悲し気に話していたのです。

　この放送の直後からニッポン放送には「あの声は何だったのか」という問い合わせや投書が殺到しました。この時、このコンサートの様子を収音したマイクは、会場中央の天井に近い高い位置に設置されていました。ですから観衆のざわざわした音声は収音されていましたが、一人のメッセージをマイクが鮮明に拾い上げることは考えられません。そしてこの出来事はちょっとした事件になって、何でこんな声が混ざり込んだのかさまざまな推測がなされました。

　その中で最も有力とされた意見があります。実はこのコンサートが行われる前に、この番組に1通の手紙が送られていました。それは「かぐや姫」の熱烈なファンだという女性からのものです。その中でその女性は「私はかぐや姫の熱烈なファンです。解散コンサートには何としても行きたいのですが、不治の病にかかっているので、コンサートが行われるころにはきっと死んでいるでしょう」という悲しいメッセージでした。それを読んだ「南こうせつさん」は「何を弱気なことを言っているだ！」と強くエールを送っていたのです。そしてコンサートの直前に、この女性の友人から番組にまた手紙が送られてきました。そこには「残念ながら彼女は亡くなりました。でもコンサートには彼女の写真を持っていきます」と書かれていました。この手紙を読んだ「南こうせつさん」は番組の中で号泣していたのです。

　その他にもこの放送を聞いた女性から「この声は私の友人の声に似ている」という連絡もありました。ただし、その友人はコンサート会場へ向かう途中に交通事故に遭って亡くなってしまったというのです。どちらの話も、ものすごく行きたかったコンサートに行くことのできなかった無念の思いが、肉体が亡くなった後も、魂となって会場まで行かせたことを物語っています。人の魂や強い思い（念・生霊）の影響を日々感じている私からすれば、決してあり得ない話ではないのです。ちなみに「私にも聞かせて…」というこのフレーズは、逆回転させると「私もそこへ行きたかった」と聞こえるというのです。

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