第１２９８回　忘れられない彼女（１）

人には誰でも「忘れることのできない人」や「忘れることのできない思い出があります」それがとても幸せな思い出であれば、何ら問題はありません。思い出すたびに元気になったり、笑顔になれる思い出であれば、むしろ大切に胸の中にしまっておけば良いのです。しかし、ともすれば「苦しい思い出」や「悔しい思い出」、「悲しい思い出」や「不愉快な思い出」の方が、何年・何十年と時間が経過しても、記憶にこびりつくものです。

　先日も、２０年以上も前に別れた彼女のことを忘れられないという男性から相談を受けました。この男性はその彼女と１年ぐらい交際した後に、半年間一緒に暮らしました。男性はその彼女との結婚を夢見て、一生懸命に働いてお金をためていました。男性はお互いに若くてお金は無くても幸せに暮らしていたつもりでいたのです。しかし、ある日突然、彼女から一方的にフラれてしまいました。男性がいつものように会社から帰ると、家に彼女の姿はなく、彼女の荷物も無くなっていました。ただ、リビングのテーブルの上に「さよなら、今までいろいろありがとう」と書置きが置いてあり、それから携帯電話へ何度電話してもつながらなくなりました。男性に別れの理由はまったく思い当たりません。自分では彼女との交際は順調に進んでいると思っていたのです。そこで男性は、別れの理由をどうしても知りたくて、彼女の勤め先の会社の前で待ち伏せをしたり、実家を訪ねたりしました。すると彼女の勤め先の男性社員や実家のお父さんが出てきました。そして彼に「彼女が嫌がっていること」を伝えて、「ストーカーじゃないか、二度と彼女に近づくな、警察へ連絡するぞ」と息巻いていったのです。

　この男性は、どうして突然、こんなことになったのか全く理解できませんでした。しかし、そのとき彼女の父親が言っていた「ストーカー規制法で、２年以下の懲役、または２００万円以下の罰金」と言う言葉が、頭の中を回っていました。何としても彼女に話をして、別れた理由だけでも聞きたいのです。しかし、また彼女を待ち伏せすれば、父親の剣幕からして、すぐにも警察へ被害届を出しそうだったからです。それでもし“懲役２年”になれば、自分の将来は終わりです。会社はクビになりますし、家族にも迷惑がかかります。彼女とこんな別れ方をすることに全く納得は行きません。それでも“警察”とか“懲役”と言う言葉は、気の弱いこの男性を縛り付けるには十分な脅しになりました。そして男性は悶々とした気持ちを抱えたまま、彼女のことを忘れようと努力してアプローチすることを諦めたのです。

　それから仕事に没頭したり、趣味に没頭しても、彼女を忘れることができなくて、その辛さから逃れる意味でも、親の勧める見合い相手と結婚することにしたのです。そうやって今の奥さんと結婚して１０年が経過しました。その間に子供が二人生まれ、家を建てて、家族４人で穏やかに暮らしていました。気が付けば彼女と別れて２０年が過ぎていましたが、今でも彼女を忘れることができずに私に相談してきたのです。

　「シュンさん、２０年前に、当時一緒に暮らしていた彼女と別れました。辛い別れでしたが、それを受け入れることしかできませんでした。そのあと、彼女を忘れるために、さまざまなことをしましたがダメでした。１０年前には他の女性と結婚までして家庭を設けましたが、それでも彼女のことが頭から離れません。いったい私はどうしたら良いのでしょうか。今は毎日のように、彼女のことを考えながら、探偵に依頼してせめて彼女の居場所や今の生活を調査したいと思っています。彼女の家族からは、２０年前に“これ以上、彼女に付きまとうようなら、ストーカーとして警察へ被害届を出す”と言われています。それでも彼女のことが気になって仕方がありません。心の中では、もし彼女の今の状況を調べて、まだ独身だったり、苦しい生活をしていたなら、私が彼女に力を貸して、生活を立て直して幸せになってもらいたいと考えてしまうのです。それはいけないことなのでしょうか」

　男性はそう言うと、すがるような眼差しで私を見つめたのです。（２）へ続く。

【２０２２年９月１日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店（アマゾン・楽天など）で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。