第１２８４回　不浄霊との闘い（２）

それではどのようにして不浄霊を祓っていくのでしょうか。生に執着したり恨みや憎しみの権化となって100年以上も現世にとどまっている不浄霊はそう簡単には憑いている人から離れません。ですからこちらもその状況により、手を変え品を変えて不浄霊を追い込んで行きます。そして時間がかかっても最後には必ず祓わなければなりません。除霊や浄霊は一度始めると、途中で中止することはできません。途中でやめてしまうと、憑依していた不浄霊はさらに嵩（かさ）にかかって攻めてきます。ですから憑いていた人の状態はさらに悪くなり、除霊をしていた霊能者も強く霊障を受けて苦しむことになります。ですから私も霊に対抗する手段は、いくつもやり方を用意して除霊に臨んでいます。まずはその不浄霊に有効と思われる「A」の方法で除霊を始めます。この段階で8割以上は上手くいくのですが、もし「A」の方法で効き目がないなら「B」、そして「C」と、時間がかかっても最後には必ず祓えるだけの手の内を用意しておかなければなりません。

　まずは不浄霊に対抗するための最大の武器であるマントラをチョイスします。それはまさに自分の感覚で、憑依されている人や憑依している不浄霊に有効と思われるものを選びます。ただ、この作業がかなり難解です。お釈迦様（仏陀）の説かれた教えをまとめたお経は、一説には8万4千種類あるとも言われています。他にも有効と思われるマントラを選んで、1回の除霊では数個から１０数個をぶつけていきます。私の場合は毎回除霊で唱えるマントラの半分は、どの不浄霊に対しても有効なマントラですので、除霊のたびに毎回唱えます。あとの半分は状況次第で変えていくのですが、どのマントラが有効なのかどうかはまさに自分の感覚だけを頼りに選んでいきます。これは薬剤師が処方箋なしに、患者の症状だけを診て有効な薬を選ぶような作業です。さすがに40年も霊能者を続けてきましたので、今はほぼ間違えることはありませんが、若いころはどんなお経をぶつけても効果が感じられずに、何日間も除霊を続けたこともありました。さらには「三鈷杵」や「五鈷杵」「鈴」などの法具が不浄霊に有効だと感じれば、それも使います。私は僧侶ではありませんから、特に儀式のスタイルは重視しません。自分の経験から有効だと感じたものを次々にぶつけて不浄霊と戦うのです。ただ経験則から固めて行った除霊や浄霊のスタイルも後からそれらの儀式を調べると、有効な形は結果的に理にかなっていることがほとんどです。

また、憑依される人を不浄霊から守る方法もいろいろあります。「魔鏡」という特殊な鏡を使う時は、憑依しようとしてくる不浄霊を鏡を利用して跳ね返します。跳ね返すという感覚は「霊符」も同じです。霊符はお札のようなものですので、そこに書かれた文字や図柄で近づいてくる不浄霊を怖がらせてその空間に入れないようにします。「結界」を張る時は、入り込もうとする不浄霊を跳ね返すとともに、結界の中を不浄霊にとって苦しい空間にして、入り込んだとしてもすぐに退散させるようにします。「写経」も結界と同じように、その近くは不浄霊にとってとても居心地が悪いので、写経を掲げている室内に不浄霊は容易には入り込みません。「人型人形」は不浄霊を跳ね返すというよりも、ターゲットになっている人の身代わりにして本人を守ります。持ち主の霊的な波長に石の波動の合ったパワーストーンは、その力で不浄霊を弾くこともありますし、不浄霊の性質によっては石の中に不浄霊を取り込んで消化していくこともあります。

このようにして霊的な間口の広い私が、自分自身を守るために重ねた数々の試行錯誤の中で、効果のあった方法を使って不浄霊に対抗しています。私は物心付いたときから不浄霊の影響は数えきれないほど受けてきましたが、どうしてこのような状態になったのか、どう対処したらよいのか、それを教えてくれる人は誰もいませんでした。本屋で霊に関する本を買っても、それは「四谷怪談」と同じジャンルに扱われていた時代です。「スピリチュアル」という言葉自体が世間に知られていませんでした。ですから自分で試行錯誤を繰り返す中で、霊障に対抗する方法を自分で見出していかなければ、普通に社会生活を送ることはできなかったのです。ですから長い時間をかけて見つけた効果のあったいくつかの方法が今、私と同じように不浄霊に苦しめられている人たちの役に立てていることはうれしい限りです。ただ、この試行錯誤に終わりはありません。今よりももっと早く、もっと有効な方法を見つけることは、私自身にも霊障で苦しんでいる皆さんにも朗報になるはずです。ですから私はこれからも有効な方法を追求し続けていきたいと思っています。

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