「シュンさん、オレはね、オレの後を継いでくれる従業員が育ったら、会社を辞めて海外へ行きたいんだよ」
社長は少し照れくさそうにそう自分の夢を話しました。私はこの言葉を聞いて、社長はハワイや暖かい南の島へ移住して、老後はきれいな景色を見ながら、“楽隠居したいのだ”と想像しました。その日のために今、頑張って働いてるのだと思ったのです。
「そうですか、いったいどこの国へ行きたいのですか?ハワイですか?それともヨーロッパですか?」
「いや、カンボジアへ行きたいんだよ。そこでどうしてもやりたいことがあるんだ」
社長は恥ずかしそうに口元で笑いながら私にこう言ったのです。私は思いもよらない回答に慌てて聞き返しました。
「どうしてカンボジアなのでしょうか?そこで何をやりたいのですか?」
私の言葉に社長は一瞬真顔になって、ゆっくりと話し始めました。
「カンボジアには国中に地雷が埋められているんだよ、それも質(たち)が悪くて、人を殺すほどの威力はなくて、地雷を踏んだ片足が吹き飛ぶ程度の火薬が入っている。そうやって片足のない人を増やすことで、内戦に勝とうとした指導者がいたんだよ、ポル・ポトって悪い奴がね。そいつのおかげで今も毎年、2~300人以上の子どもたちが地雷を踏んで足を飛ばされているんだ。ひどい話じゃないか?おれは片足のない子供たちの映像を見た時に、本当に胸が苦しくなってさ。そんなことを続けて良いわけないじゃん。子供たちのためにオレたち大人が何とかしなきゃいけないと思ったんだよ」
「………」
私は予期しない回答に、思わず冷水を浴びせられた気持ちになりました。
~この社長がここまで考えているとは~
「シュンさん、オレは仕事柄、重機が使えるだろ、だから重機を持って行って、地雷をつぶしていけば、埋められた地雷を処理していけるんだよ。そうなればまた子供たちが元気に走り回れるだろ。そうしてやりたいんだよ、それって当たり前のことじゃないか」
現在は国中に埋められた地雷はほとんど処理されて、犠牲者が出ることは滅多に無くなりました。しかし、1975年にカンボジアにクメール・ルージュの独裁者「ポル・ポト政権」が成立してから、1979年にベトナムに侵攻された対ベトナム戦や内戦の中で、ポル・ポト派による虐殺が国中で行われたのです。
私は社長と膝詰めで話をしながら、見た目や常識にとらわれて社長の本質を見抜けなかった自分が恥ずかしくなりました。会社の経営者とは今までに何百人も話をしてきました。そして夢や目標を尋ねた時に、ほとんどの社長は「自社の規模や売り上げをどこまで大きくしたいのか」を熱く語るのです。そうでないケースでも「社員やその家族がみんな幸せになれる会社に」と、そこまでの視野で自分の夢を語りました。社長の夢で「子供たちを救うために海外へ行きたい」と答えた人など一人もいませんでした。この社長を見た時に、見た目と違って「優しい人」「誠実な人間」とは感じても、ここまで行動していこうという覚悟のある人間だとは見抜けなかったのです。(3)へ続く。
【2022年9月1日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店(アマゾン・楽天など)で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。
■書名
霊界が教えてくれる
この世で幸福になる方法
■著者:霊能者SHUN(シュン)
■四六判248頁
■定価1650円(本体1500円+税10%)
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章:地球の誕生と人類の出現
第一章:霊界の存在とその仕組み
第二章:人の縁の不思議
第三章:心霊スポットが危険な理由
第四章:霊障は理不尽なもの
第五章:先祖と私たち
第六章:この世の上手な過ごし方