第１２８０回　いろいろな人（１）

　毎日、たくさんの人たちと話をする機会の多い私は、皆さんとお話しする中で私の方が良い気付きをもらったり、勉強になることも多々あります。以前、出張鑑定でうかがった解体屋さんは、社員が１０人ほどの小さな会社でした。会社の敷地内にはトラックや重機が並んでいて、若い職人がせわしなく動き回っていました。社長は解体屋さんの親方ですから、「ダボシャツ」に「ニッカポッカ」、そして「雪駄」を履いたいかにも“職人のスタイル”で社長室から出てきました。そして髪の毛を立てて髭を生やしていましたから、率直に言ってかなり”ガラが悪い“のです。私は社長に招かれて社長室へ入りました。

　部屋に入ると若い職人がすぐにお茶を入れて丁寧に私の前に置きました。その置き方は訓練されていて、映画で見る“ヤクザの事務所”のようでした。社長はダミ声で威圧感たっぷりに私に話しかけてきました。この事務所の雰囲気や社長の風体は十分に相手に圧力をかけるものですが、私はこの人の目を見た瞬間に、彼が見た目とは逆に、誠実で温かい心の持ち主であることがすぐに分かりました。ですから社長のこのスタイルについても

～きっと雇っている若い職人たちや同業者の手前、親方の役割を演じているのだろう～

と察しがつきました。

　社長からは自社がこれから進む方向性について相談を受けました。社長は今のままでは売り上げは頭打ちなので、何か新しいビジネス展開を模索していました。私は今、この会社にある経営資源を活用しながら少ないコストで始められる仕事を社長に提示していきました。特にこの会社が今まで培ってきた信用を生かして、本業と相乗効果が期待できる仕事の話で社長と盛り上がりました。あっという間に２時間の出張鑑定が終わりました。社長も今日の話には手ごたえを感じたようで笑顔がにじみ出ていました。そして私がソファから立ち上がり、帰ろうとしたときに社長から突然切り出されました。

「シュンさんはどんな夢を持って今の仕事をしているのですか？今のシュンさんの目標は何なんでしょうか？」

「………」

私は予期しない質問に一瞬口ごもりましたが、反射的にすぐに回答しました。

「何でしょうか。毎日、１日１日を生きることに精一杯で長期的な目標やビジョンを考える余裕がありません。………ただ、霊界やスピリチュアルの世界はとても深淵でゴールが見えません。どこまで進んでもまた次の疑問が浮かび上がります。もう、何十年もこの世界と関わって生きてきましたから、命があるうちにゴールまで辿り着けなくても、もう少し違う景色を見れるまでこの世界を追求してみたいとは考えています」

　そんなことを答えました。それと同時に私は同じ質問を社長にぶつけてみました。私が生きている世界とはかけ離れた世界を見ているこの人はいったい何を目標としているのだろうか。普段、他人に興味を持たない私が、この社長については何かが引っかかったのです。

「社長の夢や目標は何なのでしょうか？」

ただ、同じ言葉を口にしながら、私は心の中で思っていました。

～会社の規模か売上高か、或いは利益か従業員数か、まさか上場は考えていないと思うけど～

会社の経営者にこの質問をすれば、だいたいはこの辺りの回答になります。ですから私はこの社長も同じような答えが返ってくると思ったのです。しかし、社長の答えは、私の考えが及びもしないものだったのです。（２）へ続く。

【２０２２年９月１日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店（アマゾン・楽天など）で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。