第１２７１回　浮気と不倫（２）

　私は前回述べたように、浮気や不倫に対しては画一的に「それは“悪”だからやめなさい」とは回答しません。その人たちの行動がこれからどのような未来をもたらすのかをしっかりと確認して私が感じた未来をお伝えします。相談者はその未来が暖かくて幸せなものだと感じれば、このまま進むことを選ぶでしょう。修羅場や怒りや悲しみしか感じられない未来なら、おのずと軌道修正するでしょう。私は自分の感じた未来をお伝えしますが、どちらの方向へ進むのか、それを選ぶのは皆さん自身です。ですからアドバイスはしてもそれを強制することはありません。

　実際に数々の「浮気」や「不倫」の相談の中には、浮気相手や不倫相手と進む未来の中に、“幸せ”を感じたことが何度もあります。それは当事者の二人が幸せになるだけでなく、不倫や浮気をされた人もこれをきっかけに別れたことで幸せを獲得したケースです。そもそも配偶者や恋人がお互いにとって幸せに生きるパートナーではなかったのです。浮気や不倫をされれば誰でも腹が立ちます。悲しみや怒りに打ちひしがれてひどく傷つきます。しかし、そのことがこれから幸せに生きていく未来を選択する“大きなきっかけ”になっていることもあります。そもそも配偶者や恋人を選んだ時点でお互いにボタンを掛け違えているのです。ですから浮気や不倫をきっかけにして、軌道修正した方がお互いに幸せになるのです。そのときに意地を張ったり、相手に執着して、軌道修正のきっかけを失うことが私から見るともったいないのです。こういったケースは数は少ないものの確かにあるのです。

　他には夫が不倫をして妻に離婚を求めてきたケースでも、その代償としてすべての財産を妻に差し出した人もいます。それは離婚訴訟で財産分与に慰謝料を加えた金額より、はるかに高額です。夫は不倫によって傷つけた妻に対して”すってんてん”になって責任をとったのです。そして恋愛を選びました。今も夫は恋愛相手と幸せに暮らしています。そして不倫をされた妻は、離婚の賠償として受け取ったお金で夢だった自分のお店を開き、新しい恋人もできて幸せに暮らしています。結果的にその時は深く傷つき悲しみましたが、不倫をきっかけに当事者全員が幸せへ向けて軌道修正できたのです。

　あとは良く言えば”情に厚く“悪く言えば”優柔不断“で流されやすい女性がいました。この女性には夫と子供がいましたが、夫は20年間勤めた会社が倒産してから定職に就かずにパチンコ屋へ入り浸るようになりました。そのため生活は妻が昼間のパートと夜のスナック勤めで支えていました。夫は妻が子供の塾代として用意したお金を持ち出して、パチンコで溶かしてしまいます。そんな夫に妻の気持ちは冷めていましたが、自分がいなくなった後の夫の生活を心配して、離婚を切り出すことができませんでした。そんなとき夫はパチンコ屋で知り合った主婦と浮気をして、浮気相手の主婦の夫が家に怒鳴り込んできたのです。そして法外な浮気の慰謝料を要求してきたのです。夫は自分にはお金がありませんから、このお金を妻に払わせようとしました。そして浮気相手の夫に借用書を書くように妻に迫ったのです。そしてここまで依存してくる夫に、妻はようやく見切りをつけて離婚をすることができました。離婚に際しては財産分与も慰謝料もありません。それでも毎月の妻の収入からお金を持ち出していた夫と別れることができて、今までよりも楽に子供と暮らしていくことができました。

　このように「浮気」や「不倫」を画一的に「悪」と断罪するのではなく、それをきっかけにして幸せになるケースもあります。ただし、それは少ないケースで、多くの場合は「浮気」や「不倫」によって幸せだった人生のレールから転落してしまうことの方が多いのです。（３）へ続く。

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