第１２６６回　浄霊（２）

　現在実行している浄霊では約４００年前の戦の混乱の中で家宝の脇差を奪われた武士の霊が、それを探し求めて現世にとどまっています。その武士の霊は「この脇差を見つけなければご先祖様に顔向けできない」という強い義務感から、「何としてもそれを見つけ出すまではあの世へは上がらない」と覚悟を決めています。私は浄霊中にこの武士の霊とつながり、その場所を特定できています。しかし、脇差はこの約４００年の間に何度か売られて人の手に渡った後、先の戦争（太平洋戦争）で焼失してしまっています。ですから私はこの不浄霊に「もはやこの脇差を見つけ出すことは不可能で、この世には残っていない」と、諭していますがなかなか受け入れてくれません。これからまだ時間は必要ですが、この現実を受け入れない限り、この不浄霊はあの世へ上がることはできません。現時点ですでに霊体としての形が崩れかけていますが、まだ自分の意思は働いています。このまま現世にとどまって見つかるはずのないものを探し続けた場合、あと１００数十年もすると、霊体としての形は崩れ、もう意思の働かない“霊的なもの”（＝埃のようなもの）になってしまいます。そうなると、本来は輪廻転生によって半永久的に生き続けることのできる魂が、そのサイクルから外れて霧散してしまいます。あとはブラックホールのような永遠の闇＝無の世界へ帰するだけです。

　「探している」と言えば、以前行った浄霊では、行方不明になってしまった自分の子どもを１００年近くも探し求めて、現世にとどまっている母親の霊もいました。私がこの母親の不浄霊とつながったとき、最初に見えたのは５歳ぐらいの子供の手を引いてお祭りの人混みの中を浴衣姿で幸せそうに歩く母子の姿でした。神社の参道には露店が並び、たくさんの子供たちが嬉しそうにお店を覗き込んでいます。そして遠くにはお祭りのお囃子が聞こえています。親子はお面を売っている一軒の露店の前で立ち止まりました。子供は今でいう“ヒーロー”のお面を取って、母親にこれを買ってくれるようにせがんでいます。母親が笑顔で頷くと、子供は母親以上の笑顔で大喜びしています。母親は子供が手に取ったお面を持って、露天商にお金を支払っています。おつりがあったために、支払いには少し時間がかかりました。母親は支払いを済ませて、今買ったばかりのお面を子供に渡すために後ろを振り返りました。しかし、そこにいるはずの息子は忽然と姿を消していたのです。このとき私には、浴衣を着てひょっとこのお面で顔を隠した男が、飴玉を子供に与えて抱きかかえていく姿が見えました。母親は驚いて息子の名前を叫びながら人混みをかき分けて子供を探し始めました。しかし、どれだけ辺りを探しても子供の姿は見つかりません。母親は警察に連絡して警察も人を集めて捜索を開始しました。しかし、子供を見つけることはできず、“お祭りの日に神隠しあった”としてこの件は片づけられたのです。警察の捜索が終わったあとも、母親は来る日も来る日も子供を探して歩き続けました。そして雪の降る寒い夜に、母親は人気のいない神社の参道に倒れているのが発見されました。息子が消えた同じ場所で息を引き取ったのです。そして母親は肉体が無くなり、霊となってもあの世へ上がって成仏しようとはせずに、子供を探し続けているのです。このように恨みや憎しみが理由でなくても魂は現世にとどまることがあります。そして長く現世にとどまっている魂は、探しているものを見つけることがもう不可能になっても、探すことを容易にあきらめません。自分の魂に意思が宿っている限り、その目的を達成するために現世を離れないのです。

　肉体を失った魂＝霊が現世にとどまるのは、必ず何かの理由（目的）があります。ですから憑依して霊障を与えてくる不浄霊を最もクリアにあの世へ上げる方法は、彼らの願いをかなえてあげることです。恨んでいる家系があるならその一族の血が絶えれば本懐を遂げられます。探しているものがあるなら、それを見つけ出してあげれば望みは叶えられます。しかし、不浄霊が望む目的の中には、その願いをかなえることがすでに不可能なこともたくさんあるのです。そうなるとその状態で不浄霊を挙げることは一筋縄ではいかなくなるのです。（３）へ続く。

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