ネネとの別れは突然やってきました。ネネが死んだのは私が33歳のときです。ちょうどその2年前くらいから私は実家に戻っていました。その頃の実家では父親はすでに他界して、母親が自分の妹二人を呼んで、私の兄を入れて5人で暮らしていました。亡くなる前の日までネネはいつものように家の中を動き回っていました。その日は日曜日で私は朝から車で出かけて、1日中ドライブを楽しんで夜11時半に帰宅しました。しかし、ネネの寝床のある部屋へ行くと、ネネはぐったりと横たわっていました。名前を呼んでも口をわずかに動かすだけで声が出せません。家族に尋ねると、「夕方の6時ぐらいに急に倒れて、ぐったりとしてしまった」と言うのです。私は「どうしてそのときすぐに動物病院へ電話をしなかったのか」と、母親と叔母二人と口論になりました。私はすぐに家の電話をかけまくり、今から診察してくれる動物病院が無いか必死で探しました。しかし、今から30年も昔で深夜に診察してくれる動物病院など一軒もありません。仕方なく、翌朝一番早く診てくれる病院へ連れていくことにして、私はネネの名前を呼び続けて体をずっとさすりました。そして15分ぐらいすると、ネネの目から一筋の涙がこぼれました。そして声の出ない口を少し動かして私に何かを伝えると、そのまま息を引き取ったのです。夕方6時に倒れたネネは、この家に自分を連れてきた私が帰るのを待つように、6時間も頑張って最後に私に顔を見せて挨拶をして旅立ったのです。人間でも動物でもいろいろな思いを持って生きています。そしてその思いはちゃんと相手へ伝わるものなのです。私はネネが最後に私へ伝えた思いをしっかりと受け取りました。そして家の中や庭を走り回った元気な姿で空へ駆け上がって行ったと感じました。
“猫の死”と言うことで言えば、「猫は死ぬときに姿を消す」と言われています。実際、私が親の目を盗んで野良猫に庭で餌をやっていた時期に、このことは何度も経験しています。私が餌を与えていた猫は“飼い猫”ではありません。ですから毎日、庭に現れるわけではないのですが、だいたい3日に1回は庭にやってきていたのです。私は庭で猫を確認すると、すぐに家の冷蔵庫へ走りました。そして魚を中心に猫が喜びそうな食べ物を見つけると、それを少し頂戴して庭で猫へ与えました。そして猫は食べ終わると、実家の敷地を出てどこかへ出かけていきます。私が留守で庭に来ても餌にありつけないときにも、しばらくすると家の敷地を出ていきます。そうやって何匹もの野良猫が私から餌を与えられて生きていました。庭に現れる猫は、いつも同じ猫で、1匹か2匹です。私は餌を与えながらいつも猫に話しかけていました。
「君たちに餌を上げるのは良いけど、君たちの子どもや友達をここへ連れてきてはいけないよ、数が増えてしまうと、餌も大量に用意しなければいけないし、近所の人にも目立ってしまうからね。そうなればもう餌はあげられなくなるから、それは守ってね」
猫は私が言い聞かしたことを最後まで守りました。ですから私が実家で暮らしていた時、庭に現れる猫に何年間も餌を与え続けることが出来たのです。そして庭に来ていた猫たちは、何年かすると自分の死期を察したように庭に現れなくなります。そして1匹来なくなると、代わりに1匹、別の野良猫が庭に現れるようになりました。それをずっと繰り返していました。
「猫が死ぬ前に姿を消すのは、猫の防衛本能ではないか」と言われています。年を取って体が弱くなると、外敵に狙われやすくなり、命を落とす危険度がまします。ですから暗がりや狭い空間など外敵から身を守れる場所へ移動するのではないかという考え方です。ただ一方で私が庭で餌を与えていた野良猫は、死期を悟ったときに「死んだ姿を私に見せたくなかったのではないか」と考えています。猫はプライドの高い動物です。ですから自分の亡骸(なきがら)を私の前に晒すことを良しとしなかったように思えてなりません。
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■書名
霊界が教えてくれる
この世で幸福になる方法
■著者:霊能者SHUN(シュン)
■四六判248頁
■定価1650円(本体1500円+税10%)
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章:地球の誕生と人類の出現
第一章:霊界の存在とその仕組み
第二章:人の縁の不思議
第三章:心霊スポットが危険な理由
第四章:霊障は理不尽なもの
第五章:先祖と私たち
第六章:この世の上手な過ごし方