第１２５７回　呪い代行業（２）

　私が観たところ、相談者に悪念がまとわりついているのは明らかでした。このブログでは霊＝霊体について何度もお伝えしてきました。しかし、霊＝霊体が人の心身に悪影響を及ぼすように、念＝生霊も悪い影響を出すのです。念が悪影響を出すとすれば、21日間も人の不幸を祈り続けている“強い思い”が、もし上手く飛んで行った場合、何の影響ももたらさずにどこかへ消えてしまうことはないのです。

　呪詛の方法に精通した神職や僧侶、或いは霊能者が呪詛をするとき、依頼人の持っている強い負のパワー（憎しみ・嫉妬・恨みなど）を受け止めて、それを増幅して呪う相手へ飛ばします。前にもお話ししましたが、生霊を飛ばすときには、矛盾した2つの条件が必要です。その1つは強い負のパワーを持っていることです。これは人を呪う人は誰でも持っているので問題はありません。ただ、生霊を飛ばすときのもう１つの条件は、同時に脳の波長（脳波）がα波であることが必要なのです。α波は、睡眠に入る時や落ち着いているとき、リラックスしているときに主体となる脳波です。人を強く恨んだり憎んでいながら、同時に脳波を睡眠に入る前のような穏やかの状態にすることは普通の人にはできません。それは座禅とか、内観などで、意識的にリラックスした状態に入れる訓練を積んだ人にしかできません。ですからもし、呪い代行業者が有効に呪詛を行っているのなら、依頼者の負のパワーを受けて、それをさらに増幅した上で、相手へ飛ばさなければなりません。普通は依頼者が飛ばすことはできないので、依頼者に代わって飛ばす役割を果たしているのです。このプロセスが丑の刻参りの装束や儀式よりも重要なのです。

　私は今までに、呪詛を受けている人から頼まれて、“呪詛返し”をして、状況を改善したことが何度もあります。その中には呪う相手の家に結界を張って逃れられないようにして、集中的に呪詛の念を飛ばしている強力なものもありました。このケースでは結界を張られたその家の横に車を止めました。そして車の中を“魔法陣”のような安全地帯にして、その中から呪詛返しを行っていました。そのとき車のエンジンがあり得ない形で壊れてしまったのです。それはエンジンの中心にあるピストンの部分が破壊されていたのです。石よりもはるかに剛性の強いエンジン本体が、壊れることはあり得ないことでした。それだけ強く呪詛の念は飛んでいたのです。そして3倍にも4倍にも膨らんで飛んで来ていた強い恨みの念は、呪詛返しによってその念の発信者の元へ、さらに3倍にも4倍にも増幅されて突き刺さりました。このとき念の発信者がその後どうなったのかは、ここではお伝え出来ません。

　それでは今回、呪い代行業者へ呪詛を依頼した人が、自分や周囲で不幸が続いているのはどうしてでしょうか。それは呪った相手の上司の状態を見れば明らかです。この業者がもし、きちんと呪詛を行っていたとすれば、上司に不幸が降りかからなければなりません。それが実際には上司は健康で普通に仕事を続けています。ということは代行業者が飛ばした念は、上司ではないところへ飛んでいたことになります。代行業者が念の向かう先をどれだけのデータで確認したのかは不明ですが、しっかりと飛ばす相手を認識して、そこへ念を向けなければ、呪詛の念は飛んでいく方向を誤ります。この作業は何度も経験を積まなければ簡単にはできません。そして方向を見失ったとき、往々にして呪詛の念は発信者の元へ戻ってしまのです。今回の場合、代行業者が呪う相手へしっかりと方向を定めきれなかったとすれば、呪いの思いを抱いた大元の“依頼者”へ増幅された呪詛の念は戻ります。まさに“人を呪わば穴二つ”になってしまっていたのです。こうなると相談者に向けられた呪詛の念は、呪詛返しでも返せません。それは呪詛返しをしてもそれは相談者へ返るだけだからです。その場合は相談者の家に強い結界を張って飛んでくる呪詛の念をブロックしながら、時間をかけてこの念を消していくしかないのです。そしてこの増幅された念が消えるまでの間、相談者にはずっと不幸な出来事が降りかかることになります。ですから人を呪うときには、その念が自分に降りかかるリスクも覚悟しなければならないのです。

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