第１２５１回　不浄霊の動き方

　以前、「霊はどのようにして移動しているのでしょうか？」と訊かれたことがあります。昔は、「幽霊には足がついていない」と言われたときもありました。ですからその動き方に疑問を持ったのでしょう。結論から言えば、霊の移動の仕方に決まりはありません。その霊の抱えている事情やその時の状況によって、さまざまな形で霊は移動します。その動き方についてはこのブログでもその都度、紹介してきました。ですから過去にお伝えした話を振り返りながら動き方の事例を挙げていきましょう。

　そもそも霊は肉体を持ちません。体が物理的に移動するわけではありませんから、“瞬間移動”が可能になるのです。以前、九州に住んでいる人が、身の回りで起こる“怪現象”に悩まされていました。その人と電話で話をしながら、私はその人の後ろで電話の会話に聞き耳を立てている不浄霊の気配を感じていました。話は今の状況の解決策へ進みました。そこで私が“除霊”や”浄霊“について説明しようとしたその時でした。東京の自宅で電話をしていた私は、急に”霊臭“がして後ろを振り返りました。するとすぐ真後でに九州で怪現象を起こしていた不浄霊がしゃがみこんで私を睨みつけていたのです。私はすぐに”三密加持（さんみつかじ：密教で手で印を結び、口でご真言を唱えて、心にご本尊を思い描く）を行い、この不浄霊を祓いました。つまり、このケースでは体は動かさないで“瞬間移動”してきたのです。

　他のパターンもあります。以前、このブログで神奈川県の“箱根の関所跡”から、旧東海道を通って東京都品川区南大井の“鈴ヶ森刑場跡”までの“約１００キロ”を歩いて移動している霊の話を書きました。人の歩く速度は性別や年齢によって大きな個人差がありますが、時速にすると概ね「約３キロ～４キロ」になります。私がその不浄霊を最初に見たのは小田原市内だと思います。国道１号線を横浜方面へ向かってゆっくりと歩いている古い時代の霊を見かけたのです。霊の服装や感じから江戸時代の不浄霊だと思います。何か考えごとでもでもしているように、うつむいてただ、足を進めていました。そして翌日、小田原市内から２５キロほど離れた国道１号線の茅ヶ崎市内で同じ不浄霊を見かけました。そしてさらにその次の日には茅ヶ崎市内から約２５キロ離れた横浜市内のJR横須賀線「保土ヶ谷駅」付近の国道１号線で、またこの不浄霊を見たのです。もし、この不浄霊が時速３キロで８時間歩き続けたとすると、１日で２４キロ進むことになりますから、この霊は小田原から毎日徒歩で東海道を歩いていたことになります。

　そして私は町中を歩いているときに、歩道を私へ向かって歩いている不浄霊と、すれ違いざまにぶつかったことが何度かあります。私には人間にしか見えなかった歩行者ですが、ぶつかった瞬間に私の体をすり抜けて、先へ進んで行きました。その状況を見て、今すれ違ったのが人ではなくて霊だと気づいたのです。このように町中を歩いている不浄霊は何体も見てきました。

　そしてもっとも不気味なケースは足を動かさないで移動して行く霊です。以前、北関東にある病院で除霊を頼まれました。私は、駅から迎えの車に乗ってその病院の正面に到着しました。この病院ではスタッフや入院患者から不浄霊の目撃談がいくつもありました。そのため町では“幽霊病院”のうわさが広がり、医師や看護師は夜勤を嫌がるようになり、経営者は悩んだ末に私の病院の除霊を頼んできたのです。私は病院に着くと、５階建ての建物を入り口から病棟を見上げました。すると最上階の左端の窓から、昔の看護婦の格好をした女性がこちらを睨んでいました。私も目を逸らさずにその女性を睨み続けました。やがてその女性は、急に不気味に口元でほほ笑んだあと、笑いながら隣の窓へ移動したのです。そして隣へ移動したスピードでさらにその右隣の窓へ移動して行きました。足も体も動かさないまま、ずっとこちらを見つめたまま壁をすり抜けて、病棟の右端まで移動していったのです。

　他にも以前、夜間に高速道路を走行中に、古戦場跡のある山間部に差し掛かったとき、何か霊の気配を感じて、一瞬運転席の横の窓へ視線を移しました。すると車の右側で血まみれになった落ち武者が私を睨み続けていたのです。驚いた私は早くこの場所を離れなければいけないと思い、さらにスピードを上げて夜の高速道路を疾走しました。スピードは100キロを越えてぐんぐん上がって行きました。しかし、落ち武者の不浄霊は憎しみに満ちた表情を何一つ変えることなく、車の隣を進んでいるのです。窓から落ち武者の下半身を確認しましたが、足も体も動いていません。その状態で時速100キロを超えて並走しているのです。

　このように霊は命を落とした理由やその時の状況に応じてさまざまな形で移動します。ただ、こちらを睨みつけたまま足を動かさずにスーッと動いていく姿は何度見てもゾッとします。

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