第１２３９回　因果応報（２）

　お店の中には死角が何か所かありますので、そこにミラーを付けたり、監視カメラを設置しました。この店には単価で１万円を越える高価なアイテムもたくさん置いてあります。それらの商品を１つ盗まれてしまえば、その日の利益が飛んでしまうこともあります。このお店では商品の“万引き”が横行していたのです。

　そこで監視カメラを増やして、レジの近くで複数のカメラを同時にチェックできる体制にしました。しかし、厄介なのはグループで万引きに及ぶケースです。数人でやってきて、監視カメラに映らないように人の壁を作り、その影で盗みます。お客さんに商品の説明をしている間に他の仲間が盗むこともあります。そして盗んだ商品はすぐに仲間に渡して持ち逃げします。そうなると捕まえても、盗んだ商品は見つかりません。警察にも相談しましたが、お店の雰囲気を考えれば、警官に店内を巡回させるわけにもいきません。この人は頭を抱えました。しかし、これらのことはすべて自分が小学生の頃に駄菓子屋でやっていたことと同じなのです。子供の頃にそうやって人の良い老夫婦のお店をつぶしているのです。この人はまさに今、その報いを受けていると思いました。

　さらにこの人を悩ませたのは、レジのお金がしばしばその日の売り上げと合わなくなることです。忙しい時間帯はお客さんとの接客でレジを離れることもしばしばあります。その時はアルバイトに雇った知り合いが一人でレジに立ちます。この人はアルバイトを何度か追求しましたが、現場を抑えたわけではありませんから、言い逃れをされて逃げられます。この人は知り合いに裏切られたことにとても傷つきました。しかし、中学生のころに友達を脅してお金を巻き上げたり、いろいろなものを持って来させたのはこの人でした。その中には小学校まで仲良くしていた友達もいました。今まで仲良くしていた友達から、殴られたり、脅されたりした人はいったいどう思うでしょうか。きっとひどく傷ついたし、裏切られたと思ったと思います。それは今、この人が知り合いに感じていることと同じでした。

　この人はある日、軽ワゴン車を運転して、問屋さんを回り商品を仕入れました。帰りが遅くなったので、車はコインパーキングに止めて近くの飲食店で夕食をとりました。そのときついビールを飲んでしまったため、車はパーキングに一晩止めて翌日に取りに行くことにしました。しかし翌日、車を止めたコインパーキングに来ると、車のボディーは凹まされて窓は割られて、ドアが開いていました。驚いて車内を確認すると、仕入れた商品の半分以上は持ち去られていました。車内に商品を載せたまま、誰でも入れるコインパーキングに一晩車を止めておくのは、この人の完全な油断でした。しかし、夜間に止まっている車を壊して車内のものを盗んだことは、暴走族をやっていたころにこの人自身が何度もやっていたことでした。車の修理代と商品の損失はこの人のやる気を完全に失わせました。若いころに人の道を外したものの、素晴らしい保護司と出会い更生して10年以上をかけて経験を積んで、初めて持った自分のお店でした。この間に贅沢もせずにコツコツお金をためて、借金もしてやっと辿り着いた幸せの形でした。そしてお客さんも付いて本来なら絶好のスタートを切ってモチベーションを上げているはずでした。しかし現実には、商品は万引きされて、アルバイトにはレジのお金を盗まれ、大切な車を壊されて仕入れた商品は盗まれました。しかもこれらはすべて、自分が若いころにやった悪行がそのままの形で自分に返ってきたものです。

～これじゃあ、これからオレは何をやっても、上手くいかないってことじゃないか～

この人は心の中で叫びました。そして夢だった自分のお店は、半年も経たないうちに閉めたのです。（３）へ続く。

※現在、YouTubeチャンネルの更新が止まっています。まだ、猛暑が続いているため、なかなか”パワースポット巡り”に出かける気持ちになれません。9月も半ばを過ぎましたが、まだ関東でも残暑が続いています。もう少し涼しくなりましたら再開いたします。もうしばらくお時間をいただきますようお願い申し上げます。

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