第１２０７回　危ない物・人（２）

　私は彼女が信じている関西の霊能者が如何に悪徳な商売をしているのかを丁寧に説明しました。このインチキ霊能者の話の内容が、私から見ると多くの点で間違っているのです。さらにサラ金を紹介してお金を借りさせることも、風俗店を紹介してそこで働かせることも、明確な“違法行為”です。彼女は私の言葉に「はい」と返事をして、その都度うなずいています。しかし、私の言葉が彼女の心に響いていないことは明らかでした。そこで私は強い手段に出ることにしました。私は彼女に話しました。

「この家にある関西の霊能者の力があるというアイテムですが、これらはすべてインチキで何の力もありません。さらに言えば、これらのアイテムには、このインチキ霊能者がお金を儲けたくて仕方がない“欲望”や、そのためには人を騙しても構わないという“邪念・悪念”に満ちています。こういったものがこの家の中にあること自体があなたの人生を悪くしています。あなたが処分できないなら私が処分しましょうか？」

彼女は私の言葉を聞いくと目をむいて叫びました。

「ダメです。そんなことをしたらシュンさんの命が無くなりますよ、この先生はさまざまな術を仕える“術師”なんです。先生の力のこもっているものを粗末に扱うことは、その人に天罰が下ることになります。シュンさん、そんなことをしたら大変なことになりますよ」

彼女が大声でそう怒鳴っている中で、私は彼女が５０万円で買ったこの霊能者が書いたというお札を手に取って、目の前でビリビリに破きました。

「ダメ～！やめて～！」

彼女はそう叫ぶと私が破いたお札を私から奪い取ろうとしてつかみかかってきました。私は彼女を払い除けて、この子供の落書きのようなお札をさらに細かく破きました。彼女はこの様子を見て大声を上げて泣き出しました。私は破いたお札を拾い集めてポケットにしまいました。

「………」

それから何分か時間が流れました。私もこの女性も一言も話しませんでした。私は彼女が落ち着いたころに静かに話しました。

「もし、あなたが信じていることが本当なら、このお札をビリビリに破いた私には恐ろしい天罰が下るのでしょう。私はここまで車を運転してきました。きっと帰りには事故を起こして、命を落とすかもしれません。大先生の念のこもったお札を破かれたあなたにも天罰が下ることでしょう。急に体調を悪くするか、何かのアクシデントに遭遇して入院してしまうかもしれません」

「………」

「それはもちろん、あなたの信じる“大先生”が本物の霊能者であった場合です。私はこの霊能者が作ったという高額のアイテムを直接手に握りましたから、これらの実体はよく分かっています。これらは一言で言えば、“ゴミ”です。正確に言うと“ゴミ以下”です。ゴミを拝んでも、何の得にもなりませんが、このアイテムは欲望と邪念に満ちていますから、何の得にならないばかりか害悪になります。だから“ゴミ以下”なのです」

「………」

彼女は不安な表情のまま黙っています。

「それでは来週の同じ時間に私はまたやってきます。これからの１週間、私もあなたも何事もなく、いつものように過ごしているはずです。それはこれらのアイテムには何の効力もないからです。ですから私は来週また、無事に会えると思っています。その間にもし、何か起きたときは何時でも構いませんからすぐに私に連絡してください。その場で対処できますから。それまでの間、こちらからはその霊能者に絶対に連絡を入れないでください」

私はそう念を押して、彼女の家を出ました。（３）へ続く。

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