第１１７５回　情報量

　皆さんはどのような人生を送りたいと考えていますか？

「大金持ちになって、たくさん贅沢をして暮らしたい」「誰か困っている人がいれば、その人を助けて、人の役に立つような生き方をしたい」「大好きな人の幸せを願い、その人のために生きていきたい」「権力を手にして、たくさんの人を支配して生きていきたい」

　人が望む生き方は、人それぞれで大きく異なります。ただ、自分が望む生き方をしようとするとき、気を付けなければいけないのは、“必要以上の情報を入手すること”です。今はメディアを通じて、たくさんの情報があふれています。インターネットが私たちの生活に当たり前に浸透したことによって、私たちは昔とは比較にならないほどの情報にさらされています。その中で必要以上の情報が入ると、それは有機的に使われずに、単に私たちを混乱させてしまいます。そして心には迷いが生じ、気持ちは散漫になります。その結果、自分が望む人生からは、かけ離れてしまうことが多いのです。情報は、必要な時に必要な量だけ入ることがベストです。

　私が若いころに予備校の講師をしていたころ、優秀な先生は、その日の授業のテーマについて、必要なポイントを分かりやすく解説して、それ以外の知識は教えませんでした。優秀でない先生は、その日に教えた公式だけでなく、その例外やさまざまな用法まで丁寧に教えていたのです。最も大切な“公式”だけでなく、そこから派生するさまざまな事例や例外まで教えられた生徒はだんだんと混乱していきます。そしてその日の授業のポイントである“公式”まで分からなくなってしまうのです。先生はその単元に関わるさまざまな知識を教えて、「これで完璧だ」と思っています。しかし、生徒は頭の中が混乱して、必要な知識さえもあやふやになってしまうのです。優秀な先生は、難しい問題を分かりやすくシンプルに教えることができます。優秀でない先生は、簡単な問題をとても難しく解説してしまいます。

　ですから私が皆さんからさまざまに質問を受けた時に、私が観えたことのすべてをお伝えすることはありません。回答の趣旨にしたがって、必要な部分だけを簡潔に伝えるようにしています。そうしないと、せっかく良くなるために伝えた方向性が間違って解釈されて、スムーズに状況が改善されなくなるからです。

　同じように私はテレビを見るときは、自分にとって必要なものだけをしっかりと取捨選択してチャンネルと合わせるようにしています。テレビでニュースを見れば、その９０％は心をネガティブにする情報になります。凄惨な事件により人が殺されたとか、事故で人が何人死んだとか、抵抗できない小さな子供が虐待されて亡くなったとか、政治家や役人が買収されたとか、上司や先生がわいせつ事件を起こしたとか、どれも心にいら立ちや怒りをもたらすものばかりです。ですから私はもう何年もできるだけテレビのニュースは見ないようにしています。そして必要な情報は、ネットや新聞から集めています。いつも心穏やかに暮らしたいと考えている私にとって、戦争や事件や事故などのネガティブな情報は、心を乱すだけで必要ないのです。自分が望む人生を生きて行こうとするときに、必要のない情報は、単に心に混乱と不安をもたらすだけです。それはもっとも大切な自分の意識を悪くします。意識の持ち方、気持ちの持ち方は、その人の行動を左右します。そして行動はその人の未来を作りだします。つまり、良い意識を持つことは、良い未来を生み出す上で、とても重要な役割を果たしています。ですから情報過多によって、自分の意識を悪くしないように注意しなければならないのです。

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