私はお母さんの回答を聞きながら、目の前にある貝殻からさまざまなイメージが頭の中に広がっていきました。まず、最初に頭に浮かんだのは、海岸の砂が爆弾が破裂したことで、あちこちで噴水のように高く舞い上がっている光景です。そして空中には砂と共に時折、関節があり得ない方向へねじ曲がった人間も跳ね上げられています。その人間はヘルメットをかぶり、軍服を着ています。空中から海岸に落下した人間は誰一人、ピクリとも動きません。そして沖合へ目をやると、黒い点のように見える数多くの軍艦が煙突から煙を上げながら、餌に群がる虫のように密集しています。そして軍艦の砲門が真っ赤な炎を噴き上げると、しばらくして“ドカン”という轟音と共に地面が大きく揺れるのです。これはまさに戦争の光景です。そして今、自分の目の前に飛び込んできた動かなくなった死体は、目を見開いたままこちらを見つめています。その顔は明らかに日本人です。死んだ兵隊の軍服は、胸のあたりに漢字で書かれた名札のようなものが縫い付けられていました。
付近を見回すと、味方の軍人はどんどん死体となって近くに転がっていきます。そしてしばしば、爆弾が破裂した轟音と共に真っ赤な血に染まった肉体の一部が宙を舞っています。そして沖合には無数の敵艦が雨のように大砲を撃ち続けています。生きている戦友もこの絶望的な状況に声もなく、うつろな目をして海岸を逃げ回っています。この地獄絵図のような勝ち目のない戦いは、太平洋戦争で日本軍が南方の島々で玉砕（全滅）してきた様子をリアルに物語っていました。
～何で日本の田舎町の海岸にあった貝殻からこの光景が浮かんできたのか～
その答えは明確です。私の頭に浮かんだ光景は、この貝殻が見ていた景色だったからです。この貝殻には太平洋の島で、絶望的な状況の中で戦い続けて玉砕した数多くの日本兵の思いが詰まっています。その思いは故郷の景色や家族を思う郷愁や、ここで命を絶たなければならない無念さや悔しさに満ちています。そんな強いネガティブが詰まった貝殻は、雨のように降り注がれた艦砲射撃の力で、粉々になって海岸から海へ飛ばされました。そしてそこから潮の流れに乗って遠く日本の海岸まで流れ着いたのです。何千キロも離れた太平洋の島から、迷うことなく日本の海岸に流れ着いたのは、この貝殻に込められた日本兵の思いが向かわせたのかもしれません。
私は貝殻の詰まったガラス瓶を手に取って、お母さんに伝えました。
「この貝殻には強い念の力が込められています。念は不浄霊と同じように、目には見えなくても重さがあります。この貝殻によってもたらされた苦しみや悲しみが息子さんに載っています。この貝殻はできるだけ早く、拾ってきた海へ戻してください」
私の言葉にお母さんは驚いて絶句しました。そして思い立ったように私に質問してきました。
「隣町の海岸で拾った貝殻にいったいどんな悪念が込められているのでしょうか？」
私は自分の頭に浮かんだことをお母さんに話しました。そして、人の思い（＝念）にも死霊と同じように重さがあることを伝えました。その重い念を常に背負い込んでしまっているために、息子さんはいつも疲れ切って眠らなければいられなくなっていたのです。
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■書名
霊界が教えてくれる
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■著者：霊能者ＳＨＵＮ（シュン）
■四六判２４８頁
■定価1６５0円（本体1５００円＋税10％）
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章：地球の誕生と人類の出現
第一章：霊界の存在とその仕組み
第二章：人の縁の不思議
第三章：心霊スポットが危険な理由
第四章：霊障は理不尽なもの
第五章：先祖と私たち
第六章：この世の上手な過ごし方
