第１１１４回　もう一人の私（４）

　「エーテル体が肉体を離れても普通はすぐに肉体に戻ります。それが地方都市など遠方まで出かけることはなくても、かなりの長時間肉体を離れてしまうと、エーテル体は肉体とは別人格を持った人間のように、勝手に振る舞うようになります。そしてあなたという肉体を持った人間と別人格のあなたができると、エーテル体は肉体（あなた）よりも優位性を持とうとして、肉体を攻撃してくることがあるのです。肉体を持ったあなたが家の中にいるのに、ゲームセンターへ行ったり、他校の女子とデートしたり、バイクで無免許運転をするのは、それによってあなたが周囲の人から責められることを想定した行動です。スポーツ用品店での万引きも同じです。取引先の課長と一緒にお寿司屋さんから出てきたのも、それによってあなたが面倒な用事を頼まれることを見越しています。つまりこれらの行動を見ると、あなたのエーテル体は、すでにあなた自身を攻撃しようとしています。これは悪くすると、自分の霊体が自分の肉体を殺そうとすることもあるのです。これが怖いのです」

「………」

相談者はしばらく押し黙った後、重い口を開きました。

「シュンさん、それでは私はいったいどうすればよいのでしょう。もし、次にエーテル体が私の体から離れた時に、私を襲ってきたとしたら、どのように対処したらよいのでしょうか。シュンさんに何かの施術を行ってもらうとか、何かのお守りを持てばそれで私は救われるのでしょうか」

相談者は恐怖に震えながら私に尋ねてきました。

「ただ、冷静に考えてください。確かに今の状況はとても危険です。しかし、あなたの目撃談が出てきたときのあなたの状態はいかがでしょうか。常に精神的な負担とか、プレッシャーとかストレスを背負わされているときではありませんか？そうでないときは、あなたのエーテル体は肉体を離れることなく、何年間も問題は起きていません。ですからこれからすぐにあなたの精神的な負担とかストレス・プレッシャーを抜いてください。精神的に過度な負担がかからない状態を作ってください。今、あなたは心療内科を受診しながら、無理をしながらギリギリの状態で仕事を続けています。そのこと自体がすでに自分自身を追い込んでいることになるのです。そこから自分自身をすぐに開放してあげなければ、本当に取り返しのつかないことになります。私の祈祷とかお守りではなく、あなた自身の思考や行動を変えることで、自分を解放しなければいけません」

私は相談者に強く話しました。

「具体的にまず、何をしたらよいでしょうか？」

　相談者は覗き込むように私の顔を見つめています。

「まずは今の苦しい環境をすぐに変えなければなりません。今、心療内科にかかっていることと、体調を崩していることはすぐに会社に話してください。そしてすぐに休息をとることです。そのことによって出世の階段が外されたとしても、自分の命には代えられません。今、あなたが心身を壊して、奥さんやお子さんを路頭に迷わせても良いのでしょうか。今あなたに起きていることは正常な状態ではありません。本当にそこまでの危機感を持って状況を改善してください。よく考えてください」

　相談者は大きくうなずきながら、お礼を言って帰っていきました。その後、相談者は会社の第一線を退いて閑職へ異動しました。それによって出世の道は断たれましたが、それからはもう一人の自分を見ることなく、不安のない落ち着いた暮らしを手にしたのです。

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