相談者によると、彼女が死んだ後から帰宅して自室に入ると、しばしば「アリュール」の匂いがすることがありました。この方は仕事を家に持ち込むことがあるため、マンションの中の”納戸“に当たる部屋に机と椅子と本棚などを入れて、書斎のように使っていました。この部屋にはパソコンを置いていたので、帰宅すればまずはこの部屋に入って、受信メールをチェックします。帰宅してリビングや洗面所に入っても、香水の匂いはしません。しかし、納戸に入ってパソコンを開き、しばらくするとどこからともなくアリュールの匂いがしてくるのです。しかし、不思議なことにこの匂いは相談者だけしか感じません。一度、奥さんに確かめたことがありますが、何も感じていませんでした。
霊は普通の人には見えません。しかし、死んで肉体を抜けた魂は、霊となってしばらくは現世にとどまります。そして生まれた場所から死んだ場所までを何度も辿りながら、自分の生きた時間を総括します。そして自分なりに人生の意味を理解して、いずれ納得してあの世へ上がって行きます。ただし、自殺をした人は、与えられた命を自ら放棄していますから、そのことを正当化することが出来ません。そのため死んでからあの世へ上がるまでに、長い時間が必要になります。
霊は自分が確かに存在していることを示すために、自分を見ることのできない人間にさまざまな形で主張してきます。自分に気づいてもらいたいのです。そのため物を倒したり、音を立てることがあります。電化製品を誤作動させて自分の存在をアピールしてきます。そして中には生きていた時に自分の近くに漂っていた匂いを出して、自分を気づかせようとしてきます。今回がまさにそのケースです。相談者によると、今までに自室の他にも、「会社の会議室」や「食事をしているレストラン」で、「運転している車の中」で、この香水の匂いがしてきました。特に奥さんと二人で、彼女とデートをした思い出の場所に出かけた時には、ずっとアリュールの匂いが立ち込めていて、まるで彼女とデートそしているような錯覚に陥りました。
彼女の霊がこれだけ多くやってくるということは、彼女は今でも相談者のことを強く思っているからです。ただ現れ方が“毎回、香水の匂いを漂わせる”ということは、そこに強い恨みや憎しみ、嫉妬心などはありません。もし、彼のことを強く憎んでいたとすれば、自分の存在を示すにしても、もっと強烈な形で出てきます。深夜にタンスを“ドカン”と倒すとか、寝ている間に首を絞めるとか、体に傷や痣を残すというやり方です。霊にも感情はありますから、強いネガティブな思いを抱えていれば、相手に恐怖や嫌な感情を持たせるように現れます。相談者は彼女が亡くなってから、アリュールの匂いは感じても、死んだ彼女の姿を見たり、体を傷つけられたことは一度もありません。
私は彼女の霊が今、相談者に対してどのような思いを持っているのか霊視をしてみました。すると彼女が相談者のことを深く愛していたことを強く感じました。そもそも二人が別れることになったきっかけは、“彼女の彼に対する焼きもち”が発端です。彼のことを深く愛していたから、彼が他の女性と仲良く話したり、同じ室内で作業をするだけでも、感情が波立ってしまったのです。それが仕事上の関係であっても、会社の同僚であっても、感情的に許せなかったのです。頭では分かっていても、本音は、彼には異性には誰一人口を利かないで欲しかったのです。しかし、自分のそんな思いが通じないことも彼女は分かっていました。もし、自分の本音を口にすれば、彼からは“重たい女”とか“ストーカー気質”と思われて、嫌われることは明らかです。また、自分を応援してくれる友人もいなくなるでしょう。だから彼女はクールを装いながら、彼と交際していました。しかし、実態は交際期間が延びるほどに苦しくて仕方がなかったのです。本当は今すぐにでも彼がプロポーズをしてきて結婚することが彼女の望みでした。しかし、当時の彼にその気持ちが無いことは感じていました。ですから自分の苦しさから逃れ、自分がストーカーになってしまう前に、彼の前から去ったのです。彼にはせめて自分のことを嫌いになってほしくなかったのです。それほど彼のことを愛していたのです。
ですから彼のことを忘れようとして付き合った男性とは、上手くいくはずはありません。相手の男性が望むように相手に合わせて交際しましたが、結局は相手に気持ちのないことを見透かされてしまったのです。そして彼の居場所を調べて気づかれないように何度も隠れて訪問しました。彼は好みのタイプの女性と結婚して幸せそうに暮らしていました。そして子供も生まれ、幸せな家庭を築いていたのです。今さら自分が入り込む余地などありません。これが未来に絶望して彼女が死を選んだ理由だったのです。
私から彼女の思いを聞いた相談者は彼女の死後、初めて彼女のお墓参りに行きました。そこで心から彼女の成仏を願って手を合わせました。それから相談者の近くでアリュールの匂いが漂うことは無くなりました。
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■書名
霊界が教えてくれる
この世で幸福になる方法
■著者：霊能者ＳＨＵＮ（シュン）
■四六判２４８頁
■定価1６５0円（本体1５００円＋税10％）
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章：地球の誕生と人類の出現
第一章：霊界の存在とその仕組み
第二章：人の縁の不思議
第三章：心霊スポットが危険な理由
第四章：霊障は理不尽なもの
第五章：先祖と私たち
第六章：この世の上手な過ごし方
