第１０７４回　記憶（４）

　相談者が行ったことのない場所をあたかも行ったことがあると感じているのには、いつくか理由があります。まずは自分が過去に見た景色が意識の深いところに残っています。それが“デジャブ（既視感）”となって、初体験の場所であるにも関わらず、過去に体験したように勘違いすることがあります。さらには“デジャブ”の逆の“ジャメヴュ（未視感）見慣れているはずの景色を初めて体験したように感じること”も起きています。そして一番の理由は、この方の霊的な間口の広さにあります。霊的な間口が広いことで、この方はときどき“予知夢”を見ることがあります。この“デジャヴ”や“ジャメヴュ“が予知夢に重なって出てくるため、その映像はより鮮明になって、自分が過去に見た景色のように感じてしまうのです。この方が実家の近くの山道をみんなで車で登っているときに、ホテルの古い看板の先に、確かに右へ入る狭い道があったのは、デジャヴではなくて予知夢で見たからです。予知夢の中で山道で見た看板の先に右に入る狭い道を見ていた時に、その先にどこかで見た遊園地の景色が重なり合ってしまったのです。それを何度も繰り返し体験したことで、山頂へ向かう山道～ホテルの古い看板～その先を右へ曲がる狭い道～釣りをして遊んだ遊園地というストーリーが出来上がっていったのです。つまり、この方は”パラレルワールド“を何度も訪れていたわけではありません。

私も同じような経験は昔からあります。今月も“浄霊”や“特別な施術”があって、霊の世界をたびたび訪れています。明るく納得して生きた人生ではなく、欲望にかまけたり、恨みや憎しみに取り巻かれて死んだ方の留まる世界は、寒々とした薄暗い世界です。浄霊中に深夜、窓の外から見える世界は、漆黒の闇の世界で灯り一つ見えません。休憩時間に外の空気が吸いたくて、真っ暗な庭の中を歩いていると、まだ暗い霊界の中にいるように思えてきます。今自分が霊界から現実の世界に戻っている実感が持てなくなります。そんな時は、自分の氏名や生年月日、現住所、スマホの番号を自分に尋ねて今の自分の居場所を確認します。そうしないと今、自分の居る場所が現世なのか過去世なのか来世なのか、霊界なのかパラレルワールド（並行世界）なのか分からなくなります。

　最近はほとんど無くなりましたが、１０年ぐらい前までは意識がしばしば飛んで、気が付くと知らない場所にいることがありました。その居場所は今の自分にまったく関係のない場所ではありません。行方不明者の捜索で、最近になってその人の霊的波長を頼りに探し歩いた場所であったり、除霊で祓った霊が憑依した人から離れて留まっている場所であったり、町中で私を頼って偶然寄ってきた不浄霊のご遺体の埋まっている場所であったりします。自分に意識に強く刻み込んだ不浄霊の波長や、長時間追いかけ続けた波長は、自分では忘れていても、私の意識下に長く刻み込まれています。それは私が意識的にピックアップしなくても、何かのタイミングが合ったときに、勝手に意識の上に上がってきて、私がそこに引き寄せられてしまうことがあるのです。ですから私が知らない場所で気が付いたとき、初めてきた場所であっても“デジャブ”のように懐かしく感じることもあります。そして後から、“どうしてこの場所に来たのか”その理由を紐解いていくと、必ずその場所に来た明確な理由が見つかるのです。私が無意識のうちに訪れた場所が、何のご縁も理由もないまっさらな場所であることはありません。人間の記憶は曖昧でも、霊の世界や意識の世界には、きちんとした秩序やロジックがあって成り立っているのです。

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