以前、大きなビルの警備をしている警備会社の社員から、「そのビルを見てほしい」と頼まれたことがあります。話によると、そのビルには数人の警備員が配属されています。そして日中はもちろんですが、夜間もローテーションを組んで、２４時間体制で必ず誰かが警備室には常駐しています。この人数でビル全体をチェックすることは不可能ですから、ビルの各階・各所には監視カメラが設置されています。そしてオフィス外の共用スペースは、常にカメラで監視しています。カメラに映された映像は、警備室に１０数台設置されたモニターでチェックします。コントロールパネルのスイッチを切り替えることで、ビル全体の何十台という監視カメラ映像を確認することが出来るのです。警備員はビルのエントランスや人の多いエレベーターホールに立って警備をします。それ以外には一日に何回か決められた時間に、決められたルートを通ってビルを巡回します。他には警備室のモニターを見ながら、ビル全体を監視しています。
しかし、９階のエレベーターホールから廊下へ向けた監視カメラと、１４階の廊下の一角を映し出す監視カメラがしばしば誤作動するというのです。それは深夜に突然、蒸気でも吹きかけられたように画面が曇って映像が見えなくなったり、地震でもないのにそのカメラ映像だけが揺れたりします。さらに設置されたカメラの向きが動かされて、天井や床しか見えなくなっていることもあります。そう言った出来事は、決まって夜間に起こります。しかし、ビルのエントランスの映像を確認しても、夜間に誰かがビルに入った形跡はありません。また、オフィスの出入り口もカメラでチェックしていますが、オフィスから人が出てきた痕跡もないのです。そしてこのビルの天井は床から２・６ｍの高さにありますから、脚立でも持ってこなければ、監視カメラを動かすことはできません。さらに異変が起きているのは、ビル内に設置された何十台の監視カメラの中のこの２台のカメラだけです。どちらのカメラも今までに２回、新しいものに交換しました。するとしばらくは誤作動は無くなり正常な映像が映し出されます。しかし、１か月も経たないうちに、また不思議な現象が始まるのです。そこで上司と話した上で、私に相談してきたのです。
私はビルに入る前に、いつものようにビルの周囲を見て回りました。しかし、このビルの敷地にも周囲の土地にも霊的な問題はありません。そしてビル内に入り、各階やトイレ、廊下、非常階段、地下駐車場から警備室までを徹底してチェックしました。その結果、霊の痕跡を感じるのは、やはり問題の監視カメラが設置された９階と１４階の一角になります。私は相談者に尋ねました。
「確かに異変が起きている監視カメラの設置場所には不浄霊の痕跡を感じます。何かの理由で度々この場所を訪れている霊がいます。監視カメラの映像ですが、何か人のようなものが映し出されたことはありませんでしたか？もし、映像が残っていれば見せてもらえないでしょうか。状況を正確に把握しないと、有効な対策を取ることもできませんから」
私がそう言うと、相談者は、白い靄がかかっている９階の映像と、一瞬、画面が真っ黒になった１４階の映像を見せてくれました。私はこの映像を見てはっきりと分かりました。９階のカメラに映った”白い靄“は白のビジネススーツを着た女性の後ろ姿です。画面が一瞬、真っ黒くなった１４階の映像は、男性の頭の部分が映っています。どちらもカメラに非常に接近して写り込んだために、ピントが合わずに靄のように見えたのです。しかし、これらは明らかに霊体です。そして何度も同じ場所に訪れているということは、この場所に強い思いを残して亡くなっている霊だということです。私はこれらの映像を見て、写り込んだ霊体の性別・年齢や体の大きさを相談者に伝えました。そして９階と１４階に入る会社に該当するような社員がいなかったか確認してもらいました。
相談者はその後、２つの会社に行って監視カメラに写り込んだ異変について話しました。するとどちらの会社でも、話を最後まで聞き終わる前に、心当たりがあることを先方から伝えてきました。周囲を見ると、入居している会社のオフィスには“盛り塩”が置かれていました。警備室ではチェックできませんでしたが、監視カメラの怪現象は、オフィス内ではさらに強く出ていたのです。ただ、外部に口外する話ではありませんから、黙っていたのです。会社の話によると、９階の女性も１４階の男性も、熱心に仕事に取り組んでいた社員でした。二人ともが時期を前後して、事故で不慮の死を遂げていたのです。仕事にやりがいを感じていた二人は、亡くなった後も会社から離れたくなくて、たびたびオフィスを訪れていたのでしょう。その後、私は２つの会社へ行って、社長や会社幹部も参列して二人の魂を供養しました。社長や重役にそこまで対応してもらったことで、二人の魂は納得してあの世へ上がって行きました。それから監視カメラの怪現象は一切起こらなくなったのです。
