以前、都内のある駅前にできた「居酒屋」の経営者から、

「新規オープンしたものの、お客さんは入らないし、従業員もやめてしまう人が多い、何とか助けてください」

と依頼を受けました。場所は住宅の多い都内の私鉄の駅前です。店舗は駅のロータリーに面したビルの2階にあって、1階にはドラッグストアが入っています。隣のビルには銀行があって、コンビニやパチンコ屋、美容院、クリーニング屋、本屋さんなど、どこの町にもある風景が広がっています。人通りも多く、目立つビルで、広さは86坪もあります。木材をふんだんに使った高級感のある店構えで、“産地直送の魚介類と、全国の地酒・地焼酎・地ビールの店”と書かれています。入り口を入ると着物を着た「女将さん」と「女性フロアマネージャー」が笑顔で迎えてくれます。そして店内には、和の雰囲気とは対照的なジャズのBGMが流れて、客席は少し余裕を持たせて並べてあります。しかも価格は、チェーン店の居酒屋よりもやや高い程度です。ここまで説明しただけで、お酒好きの人なら、“ちょっと覗いてみたくなるような気持ち”になるのではないでしょうか。とても良い雰囲気のお店です。

 しかし、私はこの店に入ったとたん、すぐに鳥肌が立って頭がクラクラしました。仕事ですので我慢して店内を一通り見回りましたが、この空間に長時間いることはとても不可能です。お店の中の“どこが悪い”と言うよりも、床・壁・天井・客席・トイレ・厨房のすべてから、一斉に襲い掛かられているようで、すぐにこのお店を出て、オーナーとは近くの喫茶店で話をしました。

 

 経営者は元々は新聞の専売所を経営していました。昔、新聞は“インテリが作ってヤクザが売る”と言われていました。今はインターネットが普及して、新聞の宅配契約を結ぶ人はかなり減ってしまいました。しかし、昔は多くの家では新聞を宅配で取っていました。そのため新聞の販売店は従業員数人で、月利1千万円と言われるほど大きな利益を上げていたのです。また、その陰では、強引に家へ上がり込んで契約を迫ったり、契約の取れる従業員を縛り付けるために、お金を高利で貸し付けて退社できないように脅したり、かなり不法な手段も遣っていました。この居酒屋のオーナーもそういった阿漕なことをして稼いだお金で、このお店をオープンしたのです。

 

 私は実際にこの居酒屋に入ってみて、とてもお酒や料理を楽しめる状態でないことをオーナーに話しました。オーナーは、

「いったいこの店の何が悪いのでしょうか?この辺りは、昔は田畑しかない田園地帯でした。特に古戦場とか災害があったとも聞いていません。殺人事件などもないと思います。そこまで悪い理由はなんなのでしょうか。それは改善できないのでしょうか」

 オーナーがそのように話す気持ちはよく分かります。私は出張鑑定で訪問する際は、家に入る前に必ず、訪問先の周囲を一回りして霊的な意味で何か問題が無いかどうかを確認します。そしてその結果を踏まえた上でうかがうのです。今回も私はこのお店の周囲を何周か歩きました。しかし、ここまでひどいものは何も感じませんでした。なぜこのお店は霊的にここまでひどいのでしょうか。私はこのお店ができる前は、この場所には何があったのかオーナーに尋ねました。オーナーによると以前はこの場所で“パスタ屋さん”が営業していました。しかし、ここを買い取ってから内装も外装もすべて新しく作り替えましたから、以前のお店に“霊はく”が溜まってたとしても、今も残っている感じはしませんでした。

 お店の内装も外観と同じように木材をふんだんに使って“和”の良い雰囲気を醸し出しています。オーナーは自慢げに、

「お店のあのカウンターは欅の1枚板で、あれだけで200万円かかっています」

そう話してきました。カウンター席は20人近くはゆったりと座れるスペースがあります。それだけの大きさの1枚板となると、きっと値段も張るのでしょう。私は、オーナーの話に気のない返事をしながら、原因を考えていました。しかし、オーナーの自慢話の中に霊的な問題の原因を見つけるヒントを感じたのです。(2)へ続く。

 


シュンさんのホームページ ここをクリック