前回のブログでは“虫の知らせ”があることについて書きました。人は自分自身の死の予兆を感じ取ることもあれば、自分が死んだことを何かの形で周囲に伝えることもあります。確か小学校の2~3年生の頃だったと思います。夏休みが開けた時に、学校でちょっとした事件がありました。同じクラスの同級生に「雄二君」という友達がいました。今思い出しても活発なお子さんで、いつもみんなの輪の中心で走り回っているような子供でした。しかし、夏休みを前にした1学期に「雄二君」は親の仕事の関係で引っ越すことになりました。人気者の雄二君でしたから、クラスの中でも「お別れ会」を開いたことを覚えています。別れは子供にとっても辛いものですが、まだ、子供ですから夏休みに入れば、彼のことも忘れて、みんな元気に遊び回っていました。やがて楽しかった夏休みは終わり、2学期が始まりました。久しぶりにクラスメイトと再会すれば、話はもちろん夏休みの思い出話になります。そのときに私と仲の良い友人が口火を切りました。

「そういえばこの前、“市民プール”へ行った帰りに「雄二君」に会ったよ、オレが自転車に乗っていたら、“乗せて”って言ってきて、荷台に乗せたよ、「雄二君」の家まで、一緒に自転車で帰ったよ」

すると別の友達が尋ねました。

「いつのこと、「雄二君」家に帰ってきたのかなあ」

「10日くらい前かなあ、登校日の後だったからね」

すると同じような時期に「雄二君」に会ったという友達が何人か出てきました。中には“家の方へ歩いていくところを見た”など、姿を見ただけの子どももいました。しかし、今の友達のように一緒に遊んだとか、話した子供も何人もいました。

 私たちが教室で「雄二君」の話をしていると、教室に入ってきた先生の顔が一気に曇りました。そして私たちがいつまでも話を続けていると、先生は明らかに怒った口調で言ったのです。

「もう、そういう話はやめなさい。“雄二君”は天国へ行ったんだよ、夏休みに入ってすぐに、彼の住む町のプールへ向かう途中に、後ろから来たダンプカーに跳ねられたんだ。すぐに手術をして、しばらく入院していたけど、8月の上旬に死んだんだよ、先生もお葬式に行ってきたからね」

そういえば「雄二君」の話で盛り上がっていた時に、うつむいて悲しい顔をしていたクラスメイトも何人かいました。きっと「雄二君」と仲の良かった子供たちは、雄二君が亡くなったことを知っていたのでしょう。しかし、私たちは放課後にひそひそ話をしました。

「でもおかしいよ、夏休みの登校日が8月10日だったから、オレが“雄二君”に会ったのは、8月15日ぐらいなんだよ、先生は“雄二君”が8月上旬に死んだって言ってたし、もし、オレと会ったときにまだ生きていたとしても、入院していたはずだから一緒に自転車に乗れるわけはないもんな…」

「本当に自転車の荷台に座ったのか?」

私は友達の顔をいぶかし気に見上げました。

「当たり前だろ、嘘言っても仕方がないし、オレ以外にも“雄二君を見た”って話したってヤツはいっぱいいるじゃないか」

友達は疑われたことに怒っていました。

今にして思えば、死んで49日が経過していませんから「初盆」にはなりません。しかし、この時期は、亡くなった人が「家族に会いに来る」と言われている時期です。そして私のような体質の人間は、不浄霊の力が強く出て、実際に霊障がきつくなる時期でもあります。したがって死んでまだあの世へ上がっていない「雄二君」の魂が、クラスメイトにお別れを言いに来た可能性は十分にあるのです。(3)へ続く。

 


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