以前、霊障で悩んでいる方から相談を受けました。その人の家は木造2階建ての一軒家です。その人は、夜は1階の寝室で寝ています。しかし、深夜になると2階の廊下を歩く足音が聞こえてくるのです。それも“ミシッ、ミシッ”という小さな音ではなくて、“ドン、ドン、ドンドンドン”という大きな足音なのです。さらにひどい時は、まるで子供たちが走り回っているようなうるささで、足音は1階に響きます。私はこの相談を受けた後、家の中をお祓いして、きれいな状態にした後で“結界”を張りました。その後は、ひどい時には深夜1時間以上も続いていた霊障は、長くても5分ぐらいに収まりました。一晩中、怪現象が起きない夜もあります。それでも1週間以上、静かな夜が朝まで続くことはありませんでした。

 “結界”というと、何か不浄霊に対抗するバリアを張って、不浄霊を完全にブロックしているイメージを持たれるかもしれません。しかし、実態はそうではありません。不浄霊が棲みついているような非常に悪い土地や大きな霊道がかかっている土地では、結界を張っても不浄霊はその中に侵入してきます。ただ、結界の中は、不浄霊からすると、とても苦しくて不快な空間になっています。ですからそこに長くとどまることはできません。弱いものであれば侵入できませんし、強いものでもほとんどのものは短時間で退散します。また、結界の中では不浄霊が盛んに動き回ることはできません。ですからほとんどの場合、人に憑依することもできません。それが結界なのです。ですから相談者の方が言うように、家の中を祓って結界を張ったとしても、短時間、霊障が続くことは十分にあり得ることなのです。

 この状況に相談者は、恐怖よりも苛立っていました。連日にわたって霊障が続くと、人は恐怖にも慣れていくからです。そしてついに、深夜に足音で起こされてしまったときに、天井へ向かって、

「うるさい!何時だと思ってんだ!」

と怒鳴りつけてしまいました。その瞬間、その声に呼応するように、“ドカン”という大きな音が2階の廊下から響き渡りました。それは2階にいる不浄霊が、この言葉に逆切れして思いっきり廊下でジャンプして出した音でした。相談者は初めてのことに怖くなり、布団の中にもぐりました。しかし、この大きな音のあとは、2階は急に静まり返しました。そして朝まで静かな時間が流れたのです。このことに気を良くした相談者は、2階の物音がうるさい時には、大声を張り上げて

「うるさい!いい加減にしろ!」

と怒鳴りつけることにしたのです。すると今度は“廊下でジャンプ”以外にも、2階の壁を蹴るような物音だったり、1階の階段を降りてくる音だったり、今までと違った状況が起こり始めました。そして一つ言えることは、今までは2階の廊下という、1階の寝室からは離れた場所で響いていた音が、1階へ続く階段になり、1階の廊下になり、少しずつ1階の寝室に近づいてきたのです。それでも相談者は、深夜に起こされるとその苛立ちから、思わず不浄霊に文句を言っていました。

「早くこの家から出ていけ!バカ野郎!お前たちは、死んで体が無いくせに、調子に乗るな!」

そう罵ったのです。

 すると今度は、1階の寝室のドアを叩く音、蹴る音が爆音で響きました。さらに“ギャー”という悲鳴のような叫び声や、“ウワー”という怒鳴り声など、明らかに人の声が聞こえてくるようになったのです。ここまできて、相談者はさすがに恐くなりました。このまま進むと、次は寝室内で自分に直接危害が及ぶようになるのではないか。そして結界を張っているのに、どうしてここまで状況がひどくなっているのか。それが気になってまた私に相談してきたのです。(2)へ続く

 


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